ここ1ヶ月ほど、毎朝のようにお豆腐屋さんが近所に現れるようになりました。
毎朝、午前10時頃にやってくるのです。
このお豆腐屋さんが、実に・・
暗いんです。
何が暗いって・・
音程が暗いんです。
ご存じでない年代の方のために説明しますとお豆腐屋さんというのは古来、
「とうーふぅー」と聞こえるような気のするラッパを吹いて売りにきたものでした。
この「とぅーふぅー」なラッパがきこえると、
近所からわらわらと、ボールとかタッパとか持った奥様が出てきて
「おじさん木綿一丁!」とか「アタシは絹ごし二丁」とかいって
買ってゆくわけですね、ええ。
そんな光景ついぞ見たことありませんが・・・もう何年も。
ですからかなり画期的なことなのです。豆腐売り屋さんがクルマひいてやってくるっていうのは!
でですね、その問題のお豆腐屋さんのラッパ。
ちょっと違うんですよ。
ふつぅ、とぅーふぅーの「ふ」のところで一音(全音)上がるじゃないですか。
それがね、
半音しか上がらないんですよ。
で、結果、ものすごい切なさが漂ってきちゃってるんです。
さぁ、シャワーも浴びて、化粧もして、これからはりきって出勤だ!という時刻帯になると
この哀惜感漂う「トゥーフゥー」ラッパが近づいてくるのです。
焼き芋やの「いーもぉー♪いーしやぁーきぃもぉー♪」の最初の「も」も
1音上がるからこそ、なんというか、期待感というか、
誘われてる感じというか、お!そいえば腹へったな、みたいなワクワク感が
うずまいてくるのですよね、
でも、半音しかあがらないわ、しかも続きのメロディがないわ、だと・・・
なんかそこで気持ちが終わってしまうんです。
「とぉーふぅ・・・」
なんか豆腐屋さんのタメイキとか不安感とか、やるせなさとかが
全面に押しだされてきて、気になって気になって気になって・・・
そう、逆に気になっている、ともいえる!
一度は買ってみたい、と思っている自分も確かにいる。
いつも豆腐屋さんが最も至近距離に来るタイミングの時
だいたいワタシはシャワー上がってすっぱだか状態の時が90%なので、
すぐさま「木綿一丁!」と家を飛び出すことはできないんですよ。
でもさすがに今日とぉーふぅーが至近距離で鳴り響いた時には、
半身裸だったにもかかわらず、窓からのぞいてしまいました。
どんな姿の豆腐屋さんなのか!
自分の半裸を見られる危険も省みず、覗き見たその姿は!
あまりにも想像通り
でした。
そこには、70代に突入したと思われる、背中の小さなおじいさんが
生ラッパを吹きながら、ゆっくりゆっくり歩を進めている姿がありました。
小さなのぼりには品良く「豆腐・ゆば」の文字が。
あまりの哀愁に涙が出そうになりました。
明日も来るのでしょうか。
アタクシお豆腐だぁああああああいすきなんですけどね。
(買える日は来るのでしょうか!?)