細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

ぼくたちは大人になる

2009-04-12 20:45:39 | 読書メモ さ行
ぼくたちは大人になる    著者 佐川光晴

《内容》
高校三年生の達大は同級生の喫煙を学校に告発するが後悔し、死ぬことを覚悟で証拠となるタバコを飲み込む。この事件は達大の人生に大きな意味をもたらす。他者との交流を通じ、達大は「本当の大人」とは何なのか考え、将来への一歩を踏み出してゆく。18歳の「過ち」と「新たな出発」を真摯な眼差しで描いた成長小説。
          (紹介文より)


―――間違いは誰にでもある。そして自分が間違えたと気づいたら即座に謝ることだ。


―――それ以上はなにも言わず、チャイムが鳴って周囲の生徒たちが教室へ向かう中、片岡さんがぼくの隣へ並び、さあ参りましょうとでも言うように肘のあたりに手を添えてくれたときの感激は、からだの中の細胞が記憶していた。それなら一喜一憂する感情のすべてを彼女に伝えることはない


―――自分がどこに居て、誰とどんな関わりを持って生きているのかが不確かな状態に追い込まれたときに、宗助のような疑問にとらわれるわけだね。しかしその不安感がバネになって、新たな人間関係、新たな表現がめざされる。いや、めざさざるをえなくなると言うべきかな。


明日の話はしない

2009-04-12 12:45:43 | 読書メモ な行
明日の話はしない     著者 永嶋 恵美

《内容》
「第一話 小児病棟」のわたし…難病で何年も入退院を繰り返して人生を悲観する小学生。「第二話 一九九八年の思い出」のわたし…男に金を持ち逃げされ一文無しになったオカマのホームレス。「第三話 ルームメイト」のわたし…大学を中退してから職を転々とし、いまはスーパーのレジ打ちで糊口をしのぐ26歳の元OL。「最終話 供述調書」のわたし…郵便局を襲撃し、逮捕された実行犯。「明日の話はしないと、わたしたちは決めていた」で始まる三つの別々な話が、最終話で一つになるとき―
            (紹介文より)


―――正直に答えたほうが面倒がなくていい。ひとつ嘘をつくと、その嘘が別の嘘を呼ぶ。絶対的な真理ではないかもしれないけれども、少なくともわたしの二十六年の人生ではそうだった。