SF作家でも空想できなかった外出自粛令が世界に行き渡る世界はいろんな楽しい、だけでなく悲しい、または笑える物語を現実に紡ぎ出してくれそうである。事実は小説より奇なり、とはこういうことであった。小説家にとってはこれから起きることはネタの宝庫になるのだろうか。あるいは頭の中で一生懸命に捻っていたモチーフやコンテが現実より詰まらなくなって、営業妨害になるのだろうか。
新型コロナウイルス感染拡大が切羽詰まった国々では、日本のように自粛とか要請とか言ったレベルでなく、外出禁止同然の相互監視社会に移っているようで、違反者に罰金とか拘束、鞭打ちなどの処罰が加えられているから、トランプ米大統領がよく口にする魔女狩りの中世世界に戻ったとも言える。
窮屈なのでウイルスにはさっさと退散してもらいたい気分であるけれど、人間側には感染を避けるためにお互いの距離を置くソーシャル・ディスタンシングくらいしか有効な手立てを見出せていないのだから、地球を一渡りするまでは止む気配はない。
COVID-19のビフォー・アフターでは、卑近例でいえば挨拶の方法として握手、抱擁、キスを避け、肘タッチや合掌を取り入れるなど、人類の文明史的な変革が起きていくかもしれない。何せ従来だと、中高年の引きこもりなんかは社会の劣後者と見做されかねなかったけれど、今や奨励されるのだから、人間の生活意識も90度から180度まで逆転というか、改めていかなければならない。子供は家族の独占物でなく、社会の共有物として育てようという発想になるかもしれない。障害者や老人の介護や夫婦の関係が、より社会化されていくこともあり得る。カップルの概念が男女間のみでなくなってきたのだから、あと一歩前に進んでもおかしくない。
新型コロナウイルス以降の時代は、頭を柔軟にしておかなければ置き去りにされてしまう危険性がある。たった百年にも満たない人生でも、テレビなど無かった頃から、口で命じたらTVが映り出すように変化した。在る物が消え、無い物が生まれる世の中である。人知では推し測れない生々流転の流れ、法則に身を任すしかない。
ジューンブライドにはまだ間があっても、新生活をスタートするのにぴったりの春に、結婚式を挙げようと予定してるカップルも多いと想像できるけれど、イベント自粛のムードの中で、強行突破できるか迷うかもしれない。一生に一度の事だから不要不急でないと主張できそうだけれど、今どき一生に一度は当てはまらないと反論されたり、小池東京都知事が花見は来年でもできるので控えましょうと言うなら、結婚式も来年に延ばせるのではないかとなってしまう。ちなみに某社の調べでは、結婚月人気ランキングの1位は10月で、3月5位、4月8位、5月3位と、春の挙式もそれなりにはある。
プロ野球阪神の選手が感染したこともあってスポーツ面に目を向けると、もう中止になったのに、センバツの名勝負とか、プロ野球のレジェンド選手みたいなタイトルが並ぶ。そんな古臭いのはええでと思って、スポーツ速報をクリックすると、3月15日のプロ野球オープン戦と大相撲春場所千秋楽以降、更新されていない。数日前に頑張り過ぎて顰蹙を買ったK-1以外にホットなスポーツ試合がなく、生ものが無くなってしまっている。さぞスポーツ紙とか専門情報誌は困っているのだろうな。記者もフリーライターもテーマ探しに苦労しているに違いない。こんな異常乾燥警報の中なので、取材対象はそれ以上に気を付けなくてはならない。普段なら目をつむってもらえるゴシップでも、ドカーンと取り上げられてしまう、地雷の道を歩くようなものである。そこら中に文春砲が狙っているような緊迫状況は、読者としては楽しみだなあ。
楽しめない緊迫状況は、目に見えないウイルスに劣らない破壊力を持つ、イナゴの猛威である。アフリカをなめ尽くし、ユーラシア、アジアに進軍中と伝えられる。これを口にすると煽り情報拡散の罪で検挙されるかもしれないけれど、こんなものがユーラシアの穀倉地帯を食い荒らしたら、世界の食糧事情が激変してしまう。次は米大陸を襲うかもしれない。マスクやトイレットペーパーどころの騒ぎでなく、飢えとの戦いに突入すれば、1か月分くらい買いだめしても、食い繋ぐ以前に野盗に襲われる危険が身に迫るであろう。週末は外出せずに、この対処法をよく考案しようと思う。
ういるすに
次いで蝗の
待ち受くる
無間地獄や
出かけられけむ
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