遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

落日燃ゆ

2008-04-21 23:27:25 | 読書
城山三郎の小説です。先日、司馬遼太郎の幕末ものを読んだんで、今度は昭和の戦争史ものを読みました。東京裁判で唯一人、文官としてA級戦犯として絞首刑に処せられた人物広田弘毅の生涯です。戦争へと突き進む陸軍に翻弄されながらもあくまで外交交渉で問題を解決しようとしますが、戦争は止めることはできず敗戦に至ります。この小説の一番重要なところは後半の東京裁判。彼の他に責任を問われそうな人たちは自殺したり、死刑を逃れようと責任を押し付け合う駆け引きに明け暮れます。その中で広田は自ら弁護をせず、覚悟を決めていたそうです。一方、東京裁判が進行する間に新憲法が作られ、彼の外務省での後輩吉田茂が戦後日本を引っ張っていきます。吉田は戦中憲兵隊に拘留されていたために戦争責任を問われませんでした。昭和7年に犬養首相が暗殺された後、新しい内閣に外相として引っ張りだされたのが、引退するつもりだった広田でなく外相就任に色気満々だった吉田がなっていたら彼らの運命は全く変わっていたかもしれません。
東京裁判にかけられてから広田の覚悟を知っている妻静子は彼の覚悟が揺るがないよう自殺します。そのことを知らされた後も彼は絞首刑を受けるまで家族へ出す手紙は妻宛に送ります。自分の死刑執行までは妻も天に召されないという信念だったのでしょう。広田の死刑判決には東京裁判の主席検事でさえ「なんというバカげた判決か」と慨嘆したそうです。
広田の刑が執行された日、吉田は議会を解散し新憲法下最初の総選挙を行い勝利を収めます。

広田弘毅が福岡出身の唯一の総理大臣でした。福岡を地盤とする吉田茂の孫の麻生太郎がはたして2人目の福岡出身の宰相になるのでしょうか?
(敬称略)

写真は横浜の夕景。

本日のお酒:八海山 純米吟醸
コメント
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