遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

残念では済まない

2014-08-05 23:29:28 | 大学生活
朝、ひと仕事終えてiMacを叩き起こしてブラウザ立ち上げるとタイムラインがどえりゃあことになってた。

笹井氏死去に理研・野依理事長「世界の科学界にとって、かけがえない科学者を失った」(弁護士ドットコム) - goo ニュース
山中教授「大変残念」、若山教授も哀悼の言葉(読売新聞) - goo ニュース
優秀な人材…悔しい 理研・笹井氏自殺で京大関係者(京都新聞)
2006年、阪大微研病院の杉野氏による論文ねつ造事件に巻込まれ、一人の若い研究者が命を自ら絶った時の気持ちがまたよみがえってきました。彼はあのラボで最年少のスタッフだったと記憶しています。きっと教授によるねつ造をどうすることもできなかったんでしょう。彼には小さいお子さんが2人いらっしゃった。僕の何人かの知り合いもその事件に巻込まれ、人生を変えられてしまいました。今日、亡くなった彼の仲間が作った追悼文集を久しぶりに開いて読みました。この文集は研究室の僕の机の本棚の一番高いとこに置いてます。時々思い出して、院生にこれを見せます。ねつ造事件に巻込まれたらどうなるか、それを語るのが年長者の役目だと思うから。

彼が最後にならなかった・・・。残念でしょうがありません。
他にもねつ造を疑われたり、してしまったりして、自分の人生をダメにしたり、周囲の人に迷惑をかけてしまった人間を何人か知っています・・・弱い人達なんですよ。彼らに対しては憎むというより、哀れむ気持ちしかもてない。

STAP騒動が起きてほぼ半年・・・「精神的に耐えられない人が出るんじゃないだろうか」と思っていました。やはりそうでした。なんで、4月1日の「STAP問題」調査委員会の「最終報告」で処分を決めてしまわなかったのか。
もう今日は時間が十分経ったので、笹井氏自殺の報を引用するより、いろいろな方々のコメントがある記事を拾って起きました。理研関係者は、型通りで最小限のコメントです。印象的なのは、京都新聞による笹井氏を京大で指導した先生方のコメント。悔やんでも悔やみきれない無念さが伝わってきます。

(以下、京都新聞より引用)京大医学研究科出身の笹井氏の恩師にあたる中西重忠京大名誉教授は「言葉にならない。話したくないし、話すことでもない」と悲しんだ。大学院生の笹井氏を助手として指導した垣塚彰京大生命科学研究科教授は「当時の彼は、明るく元気で自信満々の学生だった。最近は中西先生とともに自殺を一番心配していた。彼はエリートで日の当たる場所をずっと歩いてきたので、今回のような逆境は初めての経験だったはずだ。自殺だけは何とか食い止めたかった」と悔やんだ。


この事件には、理研に限らず多くの日本生物学界トップクラスの研究者が関わってしまいました。もう「残念だ」では済まされません。すでに人命がひとつ失われているのですから。

最後に故人笹井氏の業績を紹介したNatureの記事を紹介しておきます。日本語です。
「出逢いの演出家」に徹して脳の発生を再現 (NATUREダイジェスト)

故人のご冥福を心からお祈りします。

本日のお酒:SUNTORY MALT'S SUMMER DRAFT + 立山 特別本醸造
コメント
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