室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

代々木上原行き

2008-05-16 13:45:04 | Weblog
代々木上原にあるムジカーサで、舘野泉さんプロデュース”坂の上のコンサート”があり、聴きに行った。

いつも以上に盛り沢山のプログラム。メイン・テーマは”セヴラックへのオマージュ” セヴラックは、ドビュッシーの時代のフランスの作曲家で、ラングドック地方の貴族の出身で、広いお城のような館で作曲し、友人達とサロン風の楽しみを享受する生活だったようだ。作品にも、そういったサロンでのお楽しみに書かれたような雰囲気のものが見られる一方、大地と密接な生活から生まれたと思われる、大自然、人生、哲学への深い想いを表した作品もある。

コンサートはいつものように舘野さんの短い解説から始まる。お顔の色つやが麗しく、足取りも軽く、3月にお目にかかった時より3歳は若返られたようだ。平原あゆみさんとの三手連弾でのセヴラックの”鉛の兵隊” アンデルセンの物語やカルメンのドン・ホセと似た物語のようだが、ハッピーエンドのかわいらしい、サロン風の作品。左手だけでなく、ところどころ、右手も弾いていらしたようだ・・。

続いてメインゲストの登場となる。先ずは、クバイネさんのお嬢さん、メゾ・ソプラノのマリーさんの歌で、セヴラックの歌曲。伴奏は末吉先生。末吉先生の音はあいかわらず芯があって、明るい輝きがあるなあ。マリー・クバイネさんは、知的な美人で、暖かく清らかな美声の持ち主だ。4つの歌曲を、それぞれの持ち味に合わせた表情も美しい”女優”だ。プログラム後半で歌われたファリャの”7つのスペインの歌”では、艶っぽい顔、悪戯っぽい顔も見せ、さすがにカルメンをレパートリーとしているだけのことはある、と思った。いつまでも聴いていて飽きない、嫌みのない美声だ。

それからバス・バリトンのジャン・ジャック・クバイネさん。前半ではイベールの”ドン・キホーテの4つの歌” 後半でセヴラックの歌曲を4曲歌われた。圧倒的な声量と存在感だ。お顔がそっくりな訳ではないが、一瞬の目を細めた表情の中に、加賀丈史を思わせる。背の高い立派な体格から連想させる部分もあるかもしれないが、いずれにしても立派な”俳優さん”だ。その声の響きは、バッグの陰に持つプログラムの紙を揺らした。

そして前半最後は、平原あゆみさんのピアノ独奏でセヴラックの組曲「ラングドック地方にて」の中の”春の墓地の一陽”が演奏された。あゆみさんは、よく歌わせ、とく響かせ、よく弾く素晴らしいテクニックの持ち主で、こういうシリアスな内容の演奏で本領を発揮する。チラシ、チケット、プログラム等の印刷のデザインも益々磨きがかかってきている。


後半は、舘野師弟の演奏で、末吉先生編曲なさったセヴラックの曲集の三手版を4曲。バイオリニストのヤンネ舘野さん独奏、平原あゆみさん伴奏のセヴラックのバイオリン曲を3曲演奏された。3曲目の”セレの思い出”は、3月に私もヤンネの伴奏をした曲だ。平原あゆみさんは、本当によく弾ける、と感心した。ヤンネの楽器はあいかわらずリッチな音がしている。二人とも、もう少しニコニコすればいいのに・・。まじめで純粋なんだなあ・・。

その後は、クバイネさんのセヴラックと、マリー・クバイネさんのファリャで、盛り沢山コンサートが終わると、9時半を過ぎていた。フランス人なんだから当たり前だけど、フランス語の発音が美しかった。セヴラックはラングドック弁がかなり混じるので、フランス語から離れる部分もあるのだが、ヴェルレーヌの詩は流石に標準語だから、私でも多少わかる、その”美しさ”を聴くことが出来て嬉しかった。

帰り道、神宮前=原宿での乗り換えの時に、どうも倖田來未のコンサート帰りらしい一団と一緒になった。何人もの女の子が”倖田來未”と書いてあるバッグを持っている。ん~、そういうのも青春の音楽として、良いかも分かんないけどさあー、世の中には、長年に渡って磨かれた精神力と技術と美学で表現される、純粋な音楽も存在するのよ、知らないでしょうけど・・。キミたちの媒体でもある、世間のブログに、そういうキミたちの知らない充実感の持てる世界がこの世に存在してるのよ、と言いたくなって、このブログを書きました、ってワケよ。わかる? わかんないだろーな~。って、これもかなり古いか・・。

グランド・ヴァカンス 其の11 シチリア土産

2008-05-16 12:16:57 | Weblog
4/18 カターニアのHotel Moderno
ゴミ箱、テレビのリモコンの電池、ドライヤー(フロントで借りられるが)バスタオル、余分なコンセントが無い、シンプルというよりは、やや淋しいホテルだったが、朝食もそれに相応しく、首尾一貫している。中身の入っていない丸いパン、パン・オ・ショコラ、袋入りのチョコケーキ、ビスケットなど・・キオスクメニュウだ。前の晩のディナーが豪華だったので、落ち込むことはないが、前日、前々日に比べると、心のこもったものは何も無い・・というだけだ。

ただ、ここのホテルのインターネットは日本語サイトが出たので、オジ様がYahoo を開けて、私のメールボックスに接続して下さった。

前日はそれが出来たのに、朝になったら何故か「パソコンが壊れたので、目の前のホテルで借りて下さい」と言われた。目の前のホテルは、同じ三つ星だが、かなりランクが違う雰囲気。さすがにお値段も90ユーロだから1.5倍は違う。でも、目の前同士のホテルでお客に便宜を図りっこするというのは、都会のようでいて、世知辛くない、麗しいことだと思った。

この2つのホテルの間の、都会の谷間のような路地も、よく見ると、魅力的な階段状の坂道になっている。空港に向かうタクシーが来るまで、まだ時間があるので、この階段道を上ってみる。てっぺんまで上ると、右側に素敵な彫刻を施したアーチ型の門がある。入ってみたら、学校のようだ。学生に尋ねたら「大学です。法律を勉強しています」と誇らしげな答えが返ってきた。自分の学校に誇りを持っている。彫刻付きの小さな噴水があったり、手入れされたきれいな植物があったり、中庭は大きくないが、環境はすばらしい。前日と違って目映い朝日が、誇らしい学校を、より眩しくみせた。

わずか30分ほどだったが、煌めく朝日の街を歩くと、昨日見た同じ街とは思えない程、綺麗に見えた。同じ街でも、旅人は天候によって、全く違う印象を持ってしまうものなんだな~、と改めて思った。

タクシーでカターニア空港へ向かう。高速道路のカーブをぐる~っと曲がると「あっ、エトナ山!」くっきりと天辺からすそ野まで形が良く見える。「写真!写真!」とカメラを出すと、運転手さんは「空港でもっと良く見えるから大丈夫」と言う。

しかし、空港に着く時間になると、少しの間に太陽の高さが上がって、少し霞んでしまった。それでも山全体の形はわかる。富士山にくらべると、同じ円錐形でもゆるやかで、胸を反らせているように見える。空港入り口でカメラを取り出していたのは、私たちだけでなく、ざっと30人は居たと思う。

空港内に入ると、そんな悠長なことをしている場合ではなかった事が分かった。ローマ行きカウンターにすでに大勢の人が並んでいた。私たちの後ろにも、あっと言う間に大勢の人が行列を作った。

スーツケースを預け、搭乗口ちかくの売店コーナーへ行った。
ここでシチリアともお別れだ。ローマではもう買えないかもしれないシチリアの物を買わなくては~

ここで買った”三つ足”はシチリアまとめの時にアップすることにして、写真は、それ以外のシチリア土産。右手前は、マルサーラの日のモツィア船着き場の塩田博物館で見つけた花柄の小皿(少し深さがあり小鉢かな・・?)6ユーロ。中央の大きめのお皿は、アグリジェントの旧市街のゲーテが宿泊したホテルの看板があった角の焼き物店で買ったマヨルカ焼き(カルタジローネと書いてあるがホンマか~?)15ユーロ。アグリジェントの神殿そばの考古学博物館で買った、いかにも博物館のレプリカのお皿と壺、10ユーロと16ユーロ。 それにカターニア空港で見つけた亀の”箸置き”・・な訳はないが、ちょうど良い大きさなので”箸置き”にしているが、1個9ユーロ。

荷物が少し重くなって来たかな?