室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

ハラショー!

2009-06-28 21:52:00 | Weblog
ボリショイ・オペラの《エフゲニー・オネーギン》を観ました。
チャイコフスキーの有名なオペラですが、私は初めて見ました。素晴らしかったです。

ストーリーは、若い頃に粋がっていた男(オネーギン)が、放浪の後に、以前振ってしまった女(タチアーナ)と再会し、公開して言い寄るけれど「いまさら・・」と、はねのけられて打ちひしがれる・・というシンプルなものです。

若かったタチアーナがやっとの思いで告白の手紙を書いたのに、その時は受け入れる事が出来ず、あとから既に人妻になってしまったのを見て後悔するとは、恋愛の情熱のタイミングの難しさを表しています。

それにしても、後年のタイアーナと再会した後のオネーギンの女々しさは堪え難いものがあり、後味が悪いというか、私の好みではありませんなー。

しかし、演出は素晴らしかったです!
オペラの演出は、近年、変に奇抜なものが多く、主人公がジーンズに革ジャン姿でバイクに乗って登場したり、“能”のように象徴的なオブジェだけを置くセッティングにしたり、苦労している割に“実験どまり”と思ってしまうのですが、このボリショイ・オペラは違いました!

幕が開くと、そこはロシアの地方の有力者の家の広いサロンで、正面と右側に大きな窓があり、その窓から入る光が、本物の太陽光のようで、舞台のバックヤードが外に続いているかのようなセットに驚かされます。真ん中に20人が取り囲める大きなテーブルが置かれ、招待客がお茶を入れて談笑しているシーンから始まるのです。

そのテーブルは、テーブルクロスが剥がされたり、斜めに動かされたりしながらもそのまま置かれ、オネーギンと親友の決闘もそのテーブルの前で展開し、放浪後のオネーギンの再登場も時代や場所の設定が別なのに上流社会の社交場としてのテーブルがそのまま利用されています。

まるで映画を見ているかのようなリアルなライティング、リアルな演技に驚かされました。歌手たちの声も良く通り、豊かな声量と表現力は「さすが《ボリショイ》!」と思いましたが、オケは超一流とまでは思いませんでした。オケは、見える範囲では若いプレイヤーが多い感じでした。

しかし、何と言っても、主役はチャイコフスキーの音楽です。
原作はプーシキンだけど、台本はチャイコフスキーが自ら作っているそうで、微に入り細に入り、非の打ち所のない丁寧さ、痒いところに手が届く感じの過不足ない美しさは他の作品と同じ。背景の音楽からアリアへの移行もなめらか。あちこちに「バレエ音楽を思い出す」「悲愴交響曲に似たフレーズ」「ピアノ協奏曲のモチーフ」が顔を出すので、一音ずつにチャイコフスキーの細胞を感じます。イタリア・オペラとは違う種類の美しさ。

ただ、最後のオネーギンが打ちひしがれた瞬間に終了するのは、「これで終わりなの?」とあっけない感じがします。確か《白鳥の湖》のエンディングも「あれ、これで終わり?」という感じがした記憶があります。これは、さんざん盛り上がった、見せ場も作った後だから、アッサリ終わらせる“手法”なんでしょうか・・?

《オネーギン》感想も思ったより長くなってしまったので、私もあっさり終わらせてみようかな・・。

おわり・・





ソーラー電池

2009-06-21 17:14:32 | Weblog
昨日の土曜日は、新宿三丁目の銅鑼のLIVEに《田部フレンズ》で出演。
5月の新宿JAZZフェスティバルで、まあまあイケた(ホンマか?)と気を良くしているリーダーの田部さん。せっかく練習した曲でなく、殆どやってない曲を、コード・ブックと違うキーでイキナリやるの、勘弁してくだせー!
みんな、ちゃんとチューニングして始めようゼー!

出番終わって、トン面。
“ゼヴラック協会”定例会へ飛んで行きました。遅刻だけど、ちょうど休憩樹間だったので、助かりました。

ドビュッシーの時代、南フランスのラングドック地方を意識して作曲していたセヴラック。
ピアノ・コンクールの課題曲になったり、音大の試験曲に選ばれたりすることのない、あまりメジャーと思われてこなかった作曲家ですが、舘野泉さんが学生時代から注目していらして、今から8年前、デビュ-40周年の年にCD《ひまわりの海》がリリースされました。

私もそのCDを聴いて、特に2枚目はとても爽やかな気分になるので、CDチェンジャーに常に入れています。

昨日は、前半の演奏は聴けなかったのですが、後半の末吉先生のレクチャー《歌劇・風車の心》と歌曲の演奏、それと舘野さんの演奏で林光さんの《花の図鑑・前奏曲集》を聴くことが出来ました。

末吉先生の《風車の心》についてのお話は、面白かったです。風車自体が出す音、正しい答えを出すと云われるフクロウの鳴き声、風車の周りの風の音・・。音のイメージが物語をふくらませています。

《花の図鑑》は、以前も聴いていますが、本当に図鑑で調べないと分からないような、“ヒメエゾコザクラ” “イヌタデ” “イヌフグリ” “サンザシ”などの花ばかり、イメージのよすがとなる短い詩と共にあり、無調の音楽でありながら、魅力的な作品です。尚かつ、林光さんらしい、戦争の爪痕を連想させる仕掛けも窺われる、小品集を装って、実は深い印象を残します。舘野さんは「弾きにくくてしょうがないけど、弾き甲斐がある?とおっしゃってました。

こんな充実感を味わいつつ、懇親会ではラングドック地方のワインがふんだんに振る舞われ、軽食と共に、ビール、他のワイン、差し入れの日本酒など、皆さんで舌鼓を打ちました。まあ、残念ながらお酒に弱っちい私はJaja de Jau というワインを少しと、日本酒を少し舐めさせて頂いた程度ですが、どちらも美味しかったです。


帰り道、まだ横浜のルミネが開いていたので寄って、予てから買ってみたかった携帯充電用ソーラー電池を買いました。
AU用、ドコモ&ソフトバンク用の2種類があって、写真はAU用。といっても、デザインはどちらも同じ。どちらも使えない機種があるので、店頭で機種を確かめてからの購入になります。

比較的“エコ意識”(エコ贔屓ではない)の強い方の私。早速使ってみるかなー、と思ったらこの天気。
どしゃ降りでんがなー。

ま、気を取り直して、明日使ってみまひょ。

あなたは何派?

2009-06-19 21:07:46 | Weblog
このところ、私のG4ちゃんは、ご機嫌がまあまあ良くて、なんとか意思の疎通を図っています。
今日は、なぜかメールを送信してくれなくて、受信に専念しているようではありますが、以前に比べれば、だいぶ親しくなっていると言えるでしょう。

昨日、今日と、デスクトップ上のアイコンを整理整頓し、要らないファイルを捨ててフットワークを軽くしたり。更には、壁紙を、代々のMAC につけて来たナスカのサルの絵にして、一段とマイMAC らしくなりました。

そしてもう一つ。スクリーンセイバー(自動スリープまでの時間、勝手に遊んでいる)を設定しました。それが、この写真の南の島風景です。

いくつかの候補の中から選んだ時に、久しぶりに「私は、やっぱり『水辺の風景』が好きだった」という事を思い出しました。

「あなたは何派?」・・良くある質問ですが、一概に答えられないものもあるけれど。

「海か、山か?」・・・だから、これは当然「海」

「MACか、ウィンドウズか?」・・・これも当然「MAC」

「ドコモか、AUか、ソフトバンクか?」・・・これは、ずっっっと代々AU。

「ベータか、VHSか?」・・・最早、こんな質問は大過去になってしまったけど、ぎりぎりまで「ベータ」でした。

「犬か、ネコか?」・・・今まで飼った経験からは「ネコ」です。犬は飛びついて顔を舐めに来るからねー。

答えによって、どういう体質か見えてくるかもしれないけど、どういう質問をするかでも見えてくるか・・。

「ステーキか、焼き肉か?」・・・そりゃあ、ステーキでしょう。

「ラガーか、スーパードライか?」・・・スーパードライは、即、頭痛くなります。

「ヨドバシか、ビックか?」・・・横浜店は、ビックは分散しているので、ヨドバシの方が便利。

「伊右衛門か、おーいお茶か?」・・・伊右衛門ですね。

「草食か、肉食か?」・・・私を肉食にさせてくれる人が好き。

なんか、えらくヒマ?







白熱・道産酒の会

2009-06-13 12:42:32 | Weblog
梅雨入り宣言がされて、その翌日から“梅雨のひぬま”が続いています。
私にとってはラッキーで、その木曜日、クラビノーバを積んで、北海道サポーターお酒好きの名士の会《道産酒の会》へ行きました。 写真は、飲めない私でも、お猪口一杯舐めたくなるような、北海道産の肴の数々。

このところ参加人数が少ないようですが、その分、端から端までどなたがいらっしゃるか見晴らしが良く、またスピーカーに皆さんが集中して耳を傾けていらっしゃるようです。

今回のゲスト・スピーカーは、会員の弁護士さんの小林永和さんで、『裁判員制度について』がテーマでした。

小林先生は裁判員制度に反対の意見を表明し反対バッジまで作り、それをシールにして配る立場。ところが、会員の中に裁判員制度を立ち上げるにあたり政府が作った司法制度改革審議会13名の内のお一人のMさんがいらして、この日も出席されており、直接対決となったのです。

小林先生の説→1)元々最高裁も裁判員制度は違憲の疑いがあると言っていた
2)司法のプロでも判断が難しい裁判の審議を3~4日で素人に出来ると思えない
3)アメリカでも死刑執行後に冤罪が判明した例が多々ある
4)刑罰が重い守秘義務。長時間拘束など、国民の負担が大きすぎる
5)約60名の超党派の国会議員が施行凍結に向けて動き出している

始まるにあたって、『大先輩にして恩師にあたるMさんへ矢を向ける事になって心苦しいが」と水原さんへの心遣いを忘れる事なく、お話の仕方も大変お上手で、説得力があり、場内大拍手。
続いて元検事の方が同調意見を述べられ「今日はシンポジウムの様相を呈して来た。こんな事は道産酒の会始まって以来の事』と皆さん口々におっしゃっていると、Mさんが手を挙げられて反論に登壇。

しかし、先ずは長期療養中の大先輩、安田先生と沖縄へいらした時の昔話から始まったので、一同「関係ないお話をしに出てらしたか?」と思う頃、「それで、どうでも良いような事をお話ししておりますが、先ほどの・・」と反論が始まりました。

M先生のお話→1)昭和54年の永山事件以来、何人殺したら死刑・・というような判例に縛られて、裁判官の判決と民意が一致しない例が多く見られるようになっている
2)国民の良識を信じて、判決に民意を取り入れてみようではないか
3)3年で見直しをすることになっている
4)やってみようではありませんか

こちらのお話も説得性があり、一同また拍手。
そこへ小林先生が「私の尊敬する恩師でもありますM先生がこういうお話されるのを初めて聴きました。でも1分だけ。若干、反論にもなりますが」と再び登場。民意を取り入れるのはおおいに結構だけれど、裁判官と同等の一票を持たせるのは、誤判、冤罪の可能性を広げるものだ、というご意見。

更に、法科出身の方々が意見を述べられ、おおいに盛り上がりました。


私が感心したのは、小林先生、Mさんの話術です。
冗談か法螺話をしゃべるような口調で、相手を傷つける事無く、自説を十分に説得力ある話として語れる小林先生。
一見無関係な話題に話を逸らせて、対決の緊張感を和らげてから反論を始め、ソフトな語り口から次第に熱弁へと移行させて聞き手をうならせるMさん。
どちらも、これぞ大人の鑑。直接対決を避けるあまり言いたい意見を言わないでおくか、言うだけ言って決裂するかという結果になる事が多い日本の社会において、このお二人は、話術の達人でもあり、エンタテナーでもありました。

オマケに大変な酒豪です。相当に飲みながら、これだけの頭脳を働かせていらしたのですから・・。




《ボレロ》生チェレスタ

2009-06-09 22:02:14 | Weblog
The ファンタジー オブ クラシックPart 3・リポート続き・・。

今まで、シンセザイザーでは数えきれないほど“チェレスタモドキ”の音を出して演奏して来ましたが、今回の《ボレロ》には、本物のチェレスタが用意されました。
学校(桐朋学園)の打楽器部屋にあったチェレスタをこっそり触って以来です。

この写真がチェレスタです。ドが5つ。4オクターヴです。下から2つ目のドが真ん中のドでした。学校にあったチェレスタはメーカーも覚えていませんが、外国製でした。それよりも、このヤマハ製は、鍵盤が安定しており、アクションはお布団のようにフワフワだけど、微妙なタッチの違いに応えてくれました。

演奏が始まって3分過ぎた頃に、なにしろたった17小節ですからね・・。あっという間です。
主音で始まるAメロ、セブンスの音で始まるBメロの2つが、AABB をワンセットに様々な楽器や、その組み合わせで4セット繰り返し、5回目はAB 1回ずつで、その間ひたすらクレッシェンドして、エンディングの大クライマックスに到達するのです。構成はシンプルなのですが、雰囲気はかなり官能的。

個々のソロの中では、ソプラノ・サックスのオネーチャン(申し訳ない、お名前がわからないので)のBメロが最も官能的だったように思います。その直後が、私の出番。フルート、ピッコロ、ホルンと一緒にAメロをやる訳ですが、フルート陣のハモリのせいで、トンチンカンな響きになるのが印象的な箇所。ド・ソロではないので分かりにくいのですが、そこにチェレスタが使われているのです。面白い響きです。あっという間です。

この日のゲネプロまでは、ゆったりしたテンポでやっていたのですが、本番では前向き傾向になっていました。
恐らく、舘野さんの演奏を聴いて、オケが引き締まった感じになったんじゃないかな、と思いました。

演奏が終わって、楽屋に戻って来た時の雰囲気で、その日の演奏の出来がわかるものです。
この日は、充実感からくる上気した熱気の中に笑顔が多く見られました。みんな、とっても正直です。

The ファンタジー オブ クラシックPart 3

2009-06-08 11:11:16 | Weblog
6月5日なかのゼロ・大ホールで、《東京室内管弦楽団・演奏会》が行われました。
梅雨の走りか、生憎の雨でしたが、インフル騒ぎも当初ほどは心配いらなくなって、沢山のお客様で客席は埋まりました。いらして下さった皆さま、ありがとうございました。

写真は、ゲネプロ(本番前リハーサル)でみんなが“運命”を弾いているところです。
中野ゼロは、響きのある・・つまり長めの残響のあるホールです。二階席では、まろやかに包まれる感じが心地よいです。二階席は、前の方の頭が邪魔になる事もないので、見晴らしが良く、私としてはお勧めです。

一階席は、舞台からの音が直に聞こえるので、確かに臨場感はより強いです。弦楽器一人一人の弓の摩擦音が聞こえてきます。

演奏者は、舞台上で自分たちが聴いている響きと、客席に聞こえる響きとに違いがあるかどうかが、とても気になるので、演奏出番がなくて客席で聴いている(降り番)メンバーに「どお?」と尋ねます。今回は、舘野泉さんがお弾きになる《左手のためのピアノ協奏曲》があるので、殊更、指揮者の橘さんに「バランス聴いてて下さいね。甚だしくピアノが聞こえない箇所があったら教えて下さい」と言われていました。

中間部のオケがメロディでピアノが細かいアルペジオの箇所が、ややピアノの粒がくぐもって聞こえていました。しかし、フォルティッシモで70人のオケが鳴っている時でも、充分にピアノが存在感で上まっていたので、舘野さんは流石だなーと思いました。

さて、本番。私は出番が最後の《ボレロ》だけですから前半は二階席の隅っこへ聴かせてもらいに行きました。客席はこれから始まる演奏への期待で埋まっています。皆さん、パンフレットの私が書いたプログラムノートを読んで下さっているかなー? 気になるところですが、それより、客席が暑くて、ウチワ代わりになっているようでした。

《ルスランとリュドミラ序曲》なかなか良いテンポで快調なスタートです。
《運命》ゲネプロの合間に橘さんに「都会的で現代的な運命のイメージなんでしょう?」「そうでもないんですけど・・」なんて会話をしていたのですが、本番では、よりずっしり、どっしりした《運命》が聞こえた印象でした。

後半は、舞台そでへ。舘野さんは、カッコイイ白のマオ・スーツ姿。
質問したい事があったけれど、本番前は控えます。マネージャーの伊東さんとじっと耳をそばだてる。

ゲネプロでやや聞こえにくかった細かいアルペジオのパッセージが表に聞こえていて、伊東さんと「聞こえてますね」「調律のお陰」と付きっきりでいらっしゃっる専属調律師の鶴田さんを褒め称える。

《左手~》がバッチリ済んで、舘野さんのアンコール。
「カッチーニかなー? やっぱりカッチーニだ!」その様子で、伊東さんが誰よりも一番の舘野ファンであることが、今回良くわかりました。

《カッチーニのアヴェ・マリア》最高でした。あそこの域にまで到達した音楽。人間の域を超えている、と思いました。舘野泉さん=特別な存在、です。

ステージからピアノを片づけている間に、少し舘野さんとお話できました。あれだけのテンションの高い《左手~》と、深い精神性の《カッチーニ》の直後でも、全く興奮した雰囲気はなく、普段と変わらない自然体です。「《左手~》は以前から弾いていらしたんですか?」「うううん、40年間やりたいって言い続けてたのに、一回も実現しなかった。だけど、右手が使えなくなってからは、イヤでねー」「そう、おっしゃってましたねー」


長くなったので、《ボレロ》はつづく・・。

前日リハ

2009-06-04 21:48:28 | Weblog
リハーサル2回目。

何しろ、出番が17小節なので、こんなにお気楽な演奏会はありません。

皆さんがリハーサルしているところを、お客さん状態でコッソリ写真など撮ってみちゃいました。

背中はもちろん、ピアノに向かっていらっしゃる舘野さん。
いつも常に変わらぬ自然体。非凡な集中力です。
デビュー40周年リサイタルの頃に、岸田今日子さんのナレーションとのコラボレーションで、ラヴェルの《夜のギャスパール》を弾いていらしたのを思い出しました。(もう8年も経つのか・・

《左手の為のピアノ協奏曲》は、《夜のギャスパール》を片手で弾くような技巧があちこちに出てきます。1楽章形式で18分、と決して長くはないけれど、精神的にスケールが大きい、カッコ良い曲です。

《運命》は、リハーサルを聴いていないのですが、とても楽しみです。

なかのゼロの東京室内管弦楽団演奏会。本番は、いよいよ明日です!

阿修羅展に行きました

2009-06-03 15:41:36 | Weblog
6月5日の中野ゼロ・大ホール《東京室内管弦楽団演奏会》よろしくお願いいたします。

いよいよ本番、近し!
2日は一回目のリハーサルがありました。大方の皆さんは、午前中からベートーヴェンの練習をやったわけですが、私は午後から。”左手のためのピアノ協奏曲”は舘野さんにご挨拶して、しばし見学。オケもやる気満々で、なかなかな音がしていました。

続けて”ボレロ”のリハーサル。ピアニッシモでドソロ! これはシビレるものなんです。「歌わせ方を揃えましょう」と指揮者の指示で、フルート、クラリネット、オーボエ・ダモール・・と繋げて行きます。ちょっと音程うわずってないかい?という楽器もありますが、指揮者もなかなか言えないもんなんですね。どんどんクレッシェンドが進むとクライマックスに向かってはバッチリです。本番が楽しみです。私のチェレスタは始まって3分過ぎの17小節間だけですから、お見逃しなく。

さて、リハーサルを終えて上野です。《阿修羅・展》
7日までで終わってしまいます。でも2日からは毎日夜8時まで・・と分かったので、家族3人分、ネットでチケットを購入。いざ、国立博物館へ!

入場までの行列待ち時間。携帯で情報を見ることが出来ます。お昼ころは120分でした。午後4時は80分と出ていましたが、実際には70分位だったかなー。

日傘の無料貸し出しや、お水を希望者は飲めるように用意されたり、「ご気分の悪い方はいらっしゃいませんか?」と声をかけながら廻っている係員がいたり、近頃は主宰者側の配慮が少し進化したんですね。

うねうねと蛇行する長い列にくっついて、西向きになると陽がまともに当たるのですが、5時を過ぎて楽になってきました。3分おきに、ざっと百人位ずつ入れているようでした。家族と話をしながらだったので、なんとか時間をやり過ごすことができました。さて、やっと入館。

先ずは、興福寺の中金堂跡から出土した細々とした”お宝”を拝見します。本当は、誰でも内心では一刻も早く阿修羅像を見たいのですが、長時間並んでやっと館内に入れたので、なんとなく「1点も漏らさず見せて頂きましょう」という気分にさせられているんですね。

小さい鏡や、お匙や、水晶念珠の珠、和同開珎などを丁寧に見てから、いよいよ阿修羅像を取り巻く立像たちの居並ぶお部屋へ。

釈迦の十大弟子の何体かと、八部衆の何体か。それぞれお顔の表情、衣など特徴があって、天平の時代の作者の入魂の作であり、彩色や金箔など、出来たての頃はさぞ目映い、正視できない程の有り難みだったことだろうなあ・・などと思いながら拝見して、いよいよメイン会場へ。

ゆるい上り坂の通路は、左右の壁に小さなモニターをいくつも嵌め込んであり、阿修羅像の首飾りや、衣の柄などをずらして映していて、いやが上にも「いよいよだ!」の期待と興奮を煽っています。

通路を登り切ると、バルコニーのように半階下が見下ろせるようになっていて、そこに阿修羅像が立っておられるのです。うまくバルコニーの壁にくっついて人に遮られることなく見下ろせました。

「ああ~、これが実物かー!」

細い腕が天を支える2本、手首を鎌のように曲げた中段の2本、それに胸元で合わせた2本ずつ。
細く華奢な、少年っぽい美しさの胴体。それより下は、周囲を取り囲むかぶりつきの人々に隠れて見えません。

ぐるっと、四重も五重も、場所によっては六重も人が取り巻いていて、係員が「左方向へ一歩ずつゆっくりと移動願います」と絶えず訴えているけれど、殆ど動かず、ずっと間近で眺めていようとしがみ付いています。

一方、バルコニーで見下ろす方も僅かしか動かず、なかなか正面から見ることが出来ない。上も下の階も、実物を見た人々の興奮の嵐で飽和状態。やっと動き出した巨大なうずしおを見て、自分もその中に入ろうかどうしようか、逡巡しながらしばし見下ろしていました。

「やはり一番近くで見なければ、来た意味が無い。」そう思って、渦の中を分け入って行きました。右側のお顔の付近から輪に入って、次第に左へ移動するうちに左後ろ付近で最前列に出られました。

全体に淡い金色に輝いて見えるのは、像に残っている金箔部分がライトに反射しているからだけでは無い、阿修羅像そのもののオーラなのでしょうね・・などと思って眺めていて、ついに正面にやって来ました。突然、胸に熱いものが込み上げて来ました。『逢えた』ように感じたのです。


今朝の新聞に「入場者80万人を越えて歴代3番目」と記事になる程の大人気、大混雑を家族で行って良い思い出になれば・・くらいのつもりで行ったのに、本気で“感動”してしまいました。

まだ見にいらしてない方。夜8時まで拝観できますから、6時半頃行くと並ばずに入れていいですよ。でも、5日の金曜日は、中野ゼロにいらして下さいね。