< 第2日目午前 五能線に乗る >
朝から雨。
五能線の起点駅である東能代駅へ、レンタカーを走らせた。
五能線に乗って、列車の窓いっぱいに真っ青な日本海を見ながら、
「…… 鞄を膝に 列車旅
女 みちのく 五能線
窓いっぱいに 日本海 」
と歌うつもりだったが …… 、雨の五能線もまた情感があるに違いないと、男鹿の雨の野を走りながら思った。
レンタカーを返却し、東能代駅の改札へ。
小さな駅だ。ホームに「五能線起点駅」の表示がある。
地方の小さな町や駅が、アイディアを出し、工夫して、一生懸命頑張っている姿はいい。自助自立と公益との両輪。これからの日本人の生き方である。
「しらかみ1号」がホームに入ってきた。
切符は、何と1号車の1番前の座席だ。
奈良県王寺駅の年配のもっさりした駅員さんは、いつもパソコンを見ながら、割引の切符や眺めの良い席の切符を探してくれる。自分のできる範囲で、黙々と頑張っている日本人の一人だ。
平日にもかかわらず、車両の座席は8割がた埋まっていた。中国からの旅行者もいる。今や、日本人もなかなか行かないような地方の隠れた観光名所でも、中国人、韓国人、台湾人が旅行している。
いよいよ五所川原まで、2時間50分の列車旅である。
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しばらく田野を走った列車は、やがて、海岸線に出た。
雨の五能線 …… 。ただ窓外の景色に見とれる。
窓に、雨粒が当たって、泡模様になるときもあるが、それでも、少しずつ小やみになって行っているようだ。
寂しい本州の最北端へ向けて、道路が走る。
わが座席の前は運転席だ。五能線も今や有名だから、「リゾート特急・しらかみ」を運転する機関士は誇らしいかもしれない。
田畑の向こうには、雨に煙る日本海 ……
五所川原近くで乗り込んできだ二人が、津軽三味線を何曲か演奏する。腹わたに沁みた。
広々とした田野は、津軽平野だろうか …… 雨脚も弱まり、まもなく、下車駅だ。
そして、退屈することもなく、2時間50分の汽車旅は終わり、五所川原駅に到着した。
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駅舎を出て、駅前の立佞武多 (ネブタ) 館で、シジミのラーメンを食べた。
腹ごしらえのあと、再度駅レンタカーを借りる。これから2泊3日、ずっとレンタカーの旅だ。
今日はこれから、津軽半島の西海岸沿いに龍飛岬へ向かい、龍飛岬をUターンしてすぐ、東海岸の小さな温泉民宿で1泊する予定である。