日本人の7割は自力で恋愛も結婚もできない…「カネも恋愛力もない独身男性」が日本の当たり前になった根本原因
プレジデントOnline より 231101 荒川 和久
⚫︎少子化の原因は絶対人口減だけではない
少子化問題というと、原因を子どもの数の減少だと勘違いしている人がいます。
実際は子どもの数ではなく、そもそも産む母親の数が減っている「少母化」であることは繰り返し当連載でもお伝えしてきました(〈政府の対策は「ひとりで5人産め」というようなもの…人口減少の本質は少子化ではなく「少母化」である〉参照)。
なぜ「少母化」になるかといえば、出産する対象年齢の女性の絶対人口が減っているからです。
出生の9割を占める20~39歳の女性の総人口は、国勢調査によれば、1995年の約1708万人に対して、2020年は約1317万人と24%も減少しています。
なぜ「少母化」になるかといえば、出産する対象年齢の女性の絶対人口が減っているからです。
出生の9割を占める20~39歳の女性の総人口は、国勢調査によれば、1995年の約1708万人に対して、2020年は約1317万人と24%も減少しています。
これは、1995年の当該年齢者がちょうど第2次ベビーブーム期に生まれた層であるのに対して、2020年の当該年齢者は1981~2000年生まれであり、すでに少子化が始まっている頃に生まれた層だからです。
本来であれば1990年代後半あたりに第3次ベビーブームが来るはずでしたが、それは来ませんでした。この「失われた第3次ベビーブーム」が発生した段階で、以降の少子化は決定づけられたのです。
しかし、絶対人口減だけが決定要因ではありません。ただでさえ減った人口に加えて、未婚率が上昇し、当該年齢の有配偶女性人口が減った。つまり、婚姻数が減ったからです。
以降、1995年と2022年の数字の比較で詳細に見てみましょう。
⚫︎原因は「若者の恋愛離れ」という大ウソ
年間出生数は約119万人から77万人に減りました。減少率は35%です。
本来であれば1990年代後半あたりに第3次ベビーブームが来るはずでしたが、それは来ませんでした。この「失われた第3次ベビーブーム」が発生した段階で、以降の少子化は決定づけられたのです。
しかし、絶対人口減だけが決定要因ではありません。ただでさえ減った人口に加えて、未婚率が上昇し、当該年齢の有配偶女性人口が減った。つまり、婚姻数が減ったからです。
以降、1995年と2022年の数字の比較で詳細に見てみましょう。
⚫︎原因は「若者の恋愛離れ」という大ウソ
年間出生数は約119万人から77万人に減りました。減少率は35%です。
一方婚姻数は、同79万組から50万組に減りました。減少率は36%です。
どちらも総人口よりも大きく減少していますが、注目したいのは、婚姻数が減った分だけ出生数が減っている点です。なんなら、婚姻数減少より出生数減少のほうがマシなくらいです。これは、結婚した夫婦の産む子どもの数は少なくとも1995年とほぼ変わらないことを意味しています。
「子育て支援は1人→2人にするものであり、0人→1人に増加させる少子化対策にはならない」と私が言っているのはそういう事実に基づいたものであり、だからこそ子育て支援偏重の政府の少子化対策は的外れと申しています。
しかし、こうした反論も寄せられます。
婚姻数が減っているのは、若者の価値観の問題であり、「草食化」や「恋愛離れ」によるものだというわけです。
「子育て支援は1人→2人にするものであり、0人→1人に増加させる少子化対策にはならない」と私が言っているのはそういう事実に基づいたものであり、だからこそ子育て支援偏重の政府の少子化対策は的外れと申しています。
しかし、こうした反論も寄せられます。
婚姻数が減っているのは、若者の価値観の問題であり、「草食化」や「恋愛離れ」によるものだというわけです。
少子化の話題でテレビが報道する際に、よく街頭インタビューで高齢者が「最近の若者は意気地がないからなあ。俺なんかが若いころはガツガツとアタックしたものだった」などという勇ましい声が流れるのですが、これもまたよくある老人のイメージだけの問題です。
⚫︎いつの時代も恋愛している若者は3割だけ
実際、出生動向基本調査によれば、18~34歳で恋人がいる割合は、1980年代から最新の2021年に至るまで、男女あわせてほぼ3割前後で推移しており、変わっていません。
⚫︎いつの時代も恋愛している若者は3割だけ
実際、出生動向基本調査によれば、18~34歳で恋人がいる割合は、1980年代から最新の2021年に至るまで、男女あわせてほぼ3割前後で推移しており、変わっていません。
2021年の男性の「恋人いる率」は21.1%ですが、恋愛至上主義時代などと浮かれていた1982年の同割合も21.9%です。
要するに、恋愛力のある若者というのはいつの時代もせいぜい3割程度のもので、これが私が言っている「恋愛強者3割の法則」なのです。
「結婚離れ」などともいわれますが、1980年代でさえ「結婚したい」と前向きな未婚者の割合は男4割、女5割で40年間ほとんどその割合に変化はありません。
かつて、内閣府が出した白書の中にあった「若者の4割がデート経験なし」というものが大きな話題になったことがありましたが、あれとて正しい事実を伝えているとは言えません。40年前の若者も同様に4割はデート経験がなかったわけで、何も変わっていないわけです。
つまり、婚姻減少は若者の価値観の問題ではないのです。
では、なぜ婚姻数が減ったのでしょうか。
まず、婚姻とは再婚も含みます。初婚と再婚とでその増減に差があるでしょうか。本稿においては、すべて1995年と2022年との間で比較することとします。
⚫︎大きく減ったのは「夫年上婚」と「職場結婚」
人口動態調査から、総婚姻数は同期間で28.7万組減少していますが、「再婚同士」または「夫婦いずれかが再婚」の場合の数は1.8万組減にとどまり、「夫婦ともに初婚」数が、26.9万組減なので、婚姻数が減ったのは初婚が減ったためと言えます。
要するに、恋愛力のある若者というのはいつの時代もせいぜい3割程度のもので、これが私が言っている「恋愛強者3割の法則」なのです。
「結婚離れ」などともいわれますが、1980年代でさえ「結婚したい」と前向きな未婚者の割合は男4割、女5割で40年間ほとんどその割合に変化はありません。
かつて、内閣府が出した白書の中にあった「若者の4割がデート経験なし」というものが大きな話題になったことがありましたが、あれとて正しい事実を伝えているとは言えません。40年前の若者も同様に4割はデート経験がなかったわけで、何も変わっていないわけです。
つまり、婚姻減少は若者の価値観の問題ではないのです。
では、なぜ婚姻数が減ったのでしょうか。
まず、婚姻とは再婚も含みます。初婚と再婚とでその増減に差があるでしょうか。本稿においては、すべて1995年と2022年との間で比較することとします。
⚫︎大きく減ったのは「夫年上婚」と「職場結婚」
人口動態調査から、総婚姻数は同期間で28.7万組減少していますが、「再婚同士」または「夫婦いずれかが再婚」の場合の数は1.8万組減にとどまり、「夫婦ともに初婚」数が、26.9万組減なので、婚姻数が減ったのは初婚が減ったためと言えます。
初婚同士の減少率は41%です。
次に、夫婦の年齢差から婚姻数の減少を紐解くと、ほぼ「夫年上婚」の減少であると結論づけられます。人口動態調査から初婚同士の夫婦の年齢差がわかります。全体的に数自体は減っていますが、元々比率が多かったのは「夫年上婚」の減少が大きく、それが同期間比65%も減少しています。
さらに、結婚した夫婦の出会いのきっかけから見ていきましょう。
これは出生動向基本調査よりその割合と実際の婚姻数とを掛け合わせることで推計することができます。出生動向基本調査は1995年には実施していませんので、1997年と2021年との期間比較を行います。
それによれば、「結婚に至る出会いのきっかけ」でもっとも減少したのは「職場結婚」です。初婚に占める構成比が33.5%から21.4%に減っています。
次に、夫婦の年齢差から婚姻数の減少を紐解くと、ほぼ「夫年上婚」の減少であると結論づけられます。人口動態調査から初婚同士の夫婦の年齢差がわかります。全体的に数自体は減っていますが、元々比率が多かったのは「夫年上婚」の減少が大きく、それが同期間比65%も減少しています。
さらに、結婚した夫婦の出会いのきっかけから見ていきましょう。
これは出生動向基本調査よりその割合と実際の婚姻数とを掛け合わせることで推計することができます。出生動向基本調査は1995年には実施していませんので、1997年と2021年との期間比較を行います。
それによれば、「結婚に至る出会いのきっかけ」でもっとも減少したのは「職場結婚」です。初婚に占める構成比が33.5%から21.4%に減っています。
数にして約13万件の減少です。同時に「お見合い結婚(伝統的なお見合いと結婚相談所による結婚)」の比率も下がっています。この「職場結婚」と「お見合い結婚」を合わせた減少数は約16万件です。
⚫︎昨今は「アプリ婚」も登場しているが…
両者は、いわば昭和の皆婚を実現した結婚の社会的お膳立てシステムといえるもので、特に「職場結婚」においては、上司のお節介が、その是非はともかく婚姻数に寄与したといえるでしょう。会社側も、男性社員のお嫁さん候補としての女性社員を採用し、「寿退社」という形で回転率をあげていたという事実もあります。
ところが、今や会社や上司が社員の結婚などに口を出すことは、セクハラやパワハラの対象ともなり、上司が部下に言うのはもちろん、若い社員同士でも恋愛のアプローチをすることがリスクとなる時代になってしまいました。こうしたお膳立て婚は減少率63%です。
昨今、マッチングアプリなどの婚活サービスで結婚する夫婦が増えているなどという報道もありますが、増えているとはいえ、全体に占める割合は2021年時点でいまだ13%に過ぎません。
⚫︎昨今は「アプリ婚」も登場しているが…
両者は、いわば昭和の皆婚を実現した結婚の社会的お膳立てシステムといえるもので、特に「職場結婚」においては、上司のお節介が、その是非はともかく婚姻数に寄与したといえるでしょう。会社側も、男性社員のお嫁さん候補としての女性社員を採用し、「寿退社」という形で回転率をあげていたという事実もあります。
ところが、今や会社や上司が社員の結婚などに口を出すことは、セクハラやパワハラの対象ともなり、上司が部下に言うのはもちろん、若い社員同士でも恋愛のアプローチをすることがリスクとなる時代になってしまいました。こうしたお膳立て婚は減少率63%です。
昨今、マッチングアプリなどの婚活サービスで結婚する夫婦が増えているなどという報道もありますが、増えているとはいえ、全体に占める割合は2021年時点でいまだ13%に過ぎません。
しかも、これらは一見デジタル時代の新たなお膳立てシステムのように思えますが、結局は「街のナンパのデジタル版」でしかなく、リアルでモテる恋愛強者男性にとって便利なツールと化しています。
むしろショーケースから商品を選択するかのごとく条件検索をされるがゆえに、選ばれる者と選ばれない者との格差がより強烈に顕在化しています。
⚫︎自力で結婚する層は40年前から減っていない
マッチングアプリはお膳立てが必要な恋愛弱者層を救うわけではなく、そもそもお膳立てなど必要のない恋愛強者たちがより多くの恋愛相手を見つけるためのシステムであり、根本的に婚姻増に結びつくとは思いません。
むしろショーケースから商品を選択するかのごとく条件検索をされるがゆえに、選ばれる者と選ばれない者との格差がより強烈に顕在化しています。
⚫︎自力で結婚する層は40年前から減っていない
マッチングアプリはお膳立てが必要な恋愛弱者層を救うわけではなく、そもそもお膳立てなど必要のない恋愛強者たちがより多くの恋愛相手を見つけるためのシステムであり、根本的に婚姻増に結びつくとは思いません。
まとめると、婚姻数減少の要因は、「初婚同士の婚姻の減少」「夫年上婚の減少」「職場やお見合いなどのお膳立て婚の減少」というもので占められていることになります。
逆にいえば、再婚や同い年婚、お膳立てに頼らず、自分の好きな相手と出会って恋愛して結婚する自力婚はほとんど減っていないということです。3割の恋愛強者は放っておいても勝手に恋愛し、結婚していくでしょう。
問題は、圧倒的多数の恋愛に受け身な7割のほうです。彼らを拾い上げてきたのがお膳立てシステムで、皆婚はこれによって実現されたといっても過言ではありません。
問題は、圧倒的多数の恋愛に受け身な7割のほうです。彼らを拾い上げてきたのがお膳立てシステムで、皆婚はこれによって実現されたといっても過言ではありません。
とはいえ、いまさら昭和の伝統的なお見合いが復活することは無理だし、推奨されるものではありません。
⚫︎既婚と独身の年収に114万円の差がある事実
そもそも全員が結婚するという皆婚が異常だったわけで、「結婚したくない」という選択が尊重されることは大切なことです、が、同時にそれは、お膳立てがなければ結婚できないという不本意未婚は放置されることになります。
自由恋愛、自由結婚ということは、「結婚しない自由」と同時に「結婚したくてもできない不自由」をもあわせて生み出すものなのでしょう。
最後に、婚姻減のもう一つの大事な要因である経済環境の問題についても触れておきます。
就業構造基本調査において25~34歳未婚男性の年収中央値は、1997年352万円に対して、2022年は345万円と、増えるどころか逆に減っています。
⚫︎既婚と独身の年収に114万円の差がある事実
そもそも全員が結婚するという皆婚が異常だったわけで、「結婚したくない」という選択が尊重されることは大切なことです、が、同時にそれは、お膳立てがなければ結婚できないという不本意未婚は放置されることになります。
自由恋愛、自由結婚ということは、「結婚しない自由」と同時に「結婚したくてもできない不自由」をもあわせて生み出すものなのでしょう。
最後に、婚姻減のもう一つの大事な要因である経済環境の問題についても触れておきます。
就業構造基本調査において25~34歳未婚男性の年収中央値は、1997年352万円に対して、2022年は345万円と、増えるどころか逆に減っています。
逆に、既婚男性の同中央値は1997年441万円から2022年は459万円と増えています。既婚男性の絶対数が減っている中で、既婚男性の年収中央値だけがあがっているということは、「金のある男性しか結婚できなくなっている」ことの表れでもあります。
事実、かつての皆婚を支えていた年収中間層の結婚だけが減少しています。自由恋愛による結婚とは、ある程度お金に余裕のある層だけに許された自由となっているのです。
事実、かつての皆婚を支えていた年収中間層の結婚だけが減少しています。自由恋愛による結婚とは、ある程度お金に余裕のある層だけに許された自由となっているのです。
▶︎荒川 和久(あらかわ・かずひさ) コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『 「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『 知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『 結婚滅亡』(あさ出版)、『 ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『 超ソロ社会』(PHP新書)、『 結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『 「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『 「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『 知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『 結婚滅亡』(あさ出版)、『 ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『 超ソロ社会』(PHP新書)、『 結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『 「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。