目で見たものを、その特徴から何かに準(なぞら)えて表現する…例えば「あだ名」や「ニックネーム」。人間生活上の潤滑油でしょうね。そういえば高校時代に「花王石鹸」というあだ名の先生がおられたことを思い出します。半世紀以上も経っているのに、先生の特徴ある横顔まで鮮明に思い出されます。
小豆島・千振島沖
「ダンプ」に驚きの声
何かに準える…で反射的に思い出すのが「ふとん着て寝たる姿や東山」の一句。ご存知、俳聖松尾芭蕉の弟子「服部嵐雪」が京都の街中から眺めた、東山連峰のなだらかな山並みを見事に表現したものです。なんでもない描写なのに、一度聞いたら一生忘れられないのは不思議です。
離島遠征大物釣り開拓の歴史に残る金字塔を築いた全関会員だった故森岡秀泰さんにミクロネシア連邦のクサイ島(現在はコスラエ島)にはスリーピング・レディーと呼ぶ山があるという話を聞きました。写真を見ると、乳房も露わな、美女の寝姿?に見えます。「ふとん着て…」より、遙かに艶っぽく感じました。おおらかで開放的な常夏の国ならではのニックネーム。
それからしばらくして西木正明さん(直木賞作家=一九四〇年生)がシマノ発行の月刊釣り雑誌「フィッシング・カフェ」に発表した「座談の名手ジム・リパイン」の中で「アラスカのフライフィッシングで有名なタラチュリトラ川はスリーピング・レディーの別名を持つシストナ山の西麓にある」、と書いているのが偶然だぼ鯊の目に止まりました。
南国と裏腹、極寒のアラスカの地のスリーピング・レディー、いったいどんな形の山か見たいのですが、残念ながら未だ写真にお目に掛かっていません。南洋の美女の寝姿と、どこがどう違うか、下世話な興味のだぼ鯊には気になる所ですが…。(後日談 実は先日、アラスカのスリーピングレディーにお目にかかりました。マグロが横たわっているような何の変哲もない山並みに、がっかりしたことだけが印象として残っています)
話が大きく逸れてしまいましたが、前に触れた「磯名集覧=イソダス」の資料を集めているとき、瀬戸内の磯に「ソワイ」という名があるのに関心を抱きいろいろ調べたところ、小豆島の千振島に「一のソワイ」「二のソワイ(中のソワイ)」を発見、そのすぐ近くにな、なんと「ダンプ」という名の磯がありました。資料提供者Oさんの写真で見ると、まさにダンプカーが、可動式荷台を撥ねあげているところとそっくりではありませんか。
海上保安部の資料によると「ソワイ」と言うのは瀬戸内海の浅瀬に特有の呼び名だそうです。浅瀬の呼び名は『瀬、石、岩、磯、ソワイ (ソワ)、出シ、 州、碆、礁、藻、ツガイ(番)、ソノ、アサリ、喰合』などあるそうですが、浅い瀬がソワイだと思えば、ダンプの付近も浅いはず。正式名は「(千振島)沖の白石」だそうです。浅そうな瀬だから、作業中のダンプが映える。
それにしても、この岩を見て直感的に「ダンプ」を連想した人の感受性はお見事としか言えませんね。だぼ鯊は初めてこの名を聞き、写真を見たとき、思わず驚きの声をあげました。
だぼ鯊が「イソダス資料集め」をライフワークにしたいと、ン十年前から思い続けているのは、こんな意表を衝く、思いがけない磯との出会いがあるからです。(イラストも・からくさ文庫主宰)
目で見たものを、その特徴から何かに準(なぞら)えて表現する…例えば「あだ名」や「ニックネーム」。人間生活上の潤滑油でしょうね。そういえば高校時代に「花王石鹸」というあだ名の先生がおられたことを思い出します。半世紀以上も経っているのに、先生の特徴ある横顔まで鮮明に思い出されます。
小豆島・千振島沖
「ダンプ」に驚きの声
何かに準える…で反射的に思い出すのが「ふとん着て寝たる姿や東山」の一句。ご存知、俳聖松尾芭蕉の弟子「服部嵐雪」が京都の街中から眺めた、東山連峰のなだらかな山並みを見事に表現したものです。なんでもない描写なのに、一度聞いたら一生忘れられないのは不思議です。
離島遠征大物釣り開拓の歴史に残る金字塔を築いた全関会員だった故森岡秀泰さんにミクロネシア連邦のクサイ島(現在はコスラエ島)にはスリーピング・レディーと呼ぶ山があるという話を聞きました。写真を見ると、乳房も露わな、美女の寝姿?に見えます。「ふとん着て…」より、遙かに艶っぽく感じました。おおらかで開放的な常夏の国ならではのニックネーム。
それからしばらくして西木正明さん(直木賞作家=一九四〇年生)がシマノ発行の月刊釣り雑誌「フィッシング・カフェ」に発表した「座談の名手ジム・リパイン」の中で「アラスカのフライフィッシングで有名なタラチュリトラ川はスリーピング・レディーの別名を持つシストナ山の西麓にある」、と書いているのが偶然だぼ鯊の目に止まりました。
南国と裏腹、極寒のアラスカの地のスリーピング・レディー、いったいどんな形の山か見たいのですが、残念ながら未だ写真にお目に掛かっていません。南洋の美女の寝姿と、どこがどう違うか、下世話な興味のだぼ鯊には気になる所ですが…。(後日談 実は先日、アラスカのスリーピングレディーにお目にかかりました。マグロが横たわっているような何の変哲もない山並みに、がっかりしたことだけが印象として残っています)
話が大きく逸れてしまいましたが、前に触れた「磯名集覧=イソダス」の資料を集めているとき、瀬戸内の磯に「ソワイ」という名があるのに関心を抱きいろいろ調べたところ、小豆島の千振島に「一のソワイ」「二のソワイ(中のソワイ)」を発見、そのすぐ近くにな、なんと「ダンプ」という名の磯がありました。資料提供者Oさんの写真で見ると、まさにダンプカーが、可動式荷台を撥ねあげているところとそっくりではありませんか。
海上保安部の資料によると「ソワイ」と言うのは瀬戸内海の浅瀬に特有の呼び名だそうです。浅瀬の呼び名は『瀬、石、岩、磯、ソワイ (ソワ)、出シ、 州、碆、礁、藻、ツガイ(番)、ソノ、アサリ、喰合』などあるそうですが、浅い瀬がソワイだと思えば、ダンプの付近も浅いはず。正式名は「(千振島)沖の白石」だそうです。浅そうな瀬だから、作業中のダンプが映える。
それにしても、この岩を見て直感的に「ダンプ」を連想した人の感受性はお見事としか言えませんね。だぼ鯊は初めてこの名を聞き、写真を見たとき、思わず驚きの声をあげました。
だぼ鯊が「イソダス資料集め」をライフワークにしたいと、ン十年前から思い続けているのは、こんな意表を衝く、思いがけない磯との出会いがあるからです。(イラストも・からくさ文庫主宰)
