- 5 定年と釣り
Episode1 ニュージーランド釣行
長年勤務していた会社を2000年10月で定年退職した。
そんなふっと一息ついた時、義弟から費用はすべて出すからニュージーランドに釣りに行かないかと誘われた。それは断るなんてありえなく二つ返事でOKである。義弟の獣医師仲間2人の計4人でその頃まだ殆ど釣り人が行かなかったニュージーランドに釣行した。
私の最大の目的はニュージーランドの磯でグレを釣ることである。そもそもグレがいるのかどうかも分からなかったからである。もし生息しているのなら会ってみたいという思いが強くあった。関空から一路クライストチャーチへ。休息したのちオークランドへ。そしてセスナ機でさらに北島のローカルな空港へと着いた。義弟の竿が長すぎてその機には乗せられず次の便を待ったりした。
長閑な牧場などの横の海岸を走ること約3時間、車はお洒落なロッジに着いた。途中磯は殆ど見えないしテトラポッドや堤防が全くない。ロッジではキャプテンやロッジのおばさんが歓迎してくれた。翌日、モーターボートのちょっと大型の船が渡船で磯には飛び乗りであった。ニュージーランドではグレ用の添加剤は許可されているがオキアミなどは持ち込むことはできない。そのため撒き餌はイワシやカツオの切り身に添加剤を入れて撒き餌をするという変則的な釣りであった。しかし撒き餌をして驚いた。一瞬にして撒き餌をした水面が赤く染まったのである。見るとそれは真鯛の群れが沸き上がってきたのである。何という光景か!自分はグレを釣りに来たのにこれは何ということか、素晴らしい光景かもしれないがこれはグレには遠いなあと直感した。義弟たちも間もなくヒラマサ釣りに切り替えた。まずヒラマサのエサとなるボラのような魚を釣るのである。その大きな生き餌に大きな風船をつけてヒラマサが回ってくるのを待つのである。暫くすると撒き餌に寄っていた魚が急にどこかに消えたかと思うと、まるで潜水艦のような影が近づくのである。その時がチャンスだが、もし喰いついたとしてもとても上げられるようには見えない。とにかくでかい!緊張感はマックスとなる。またその磯にはひん曲がった鉄柱が立っていた。それはキャプテンが魚との格闘の名残だという。しかし、何回かのチャンスはあったもののでかいヒラマサは去っていった。さて私のグレ釣はその磯で最後の最後に喰いついてきた。日本のグレとはちょっと違うがよく似た40cm位の魚であった。キャプテンはこんなものを狙っていたのかというので「そうだ」というとこれは河口にいけばいくらでもあるという。よく聞くとそれはまさに口太グレのように思った。大体大きいので60cmくらいだなあという話だった。残念だがそのグレには挑戦せずであった。しかし、その日の磯の上の弁当には驚かされた。釣っている磯の裏側でキャプテンが潜って沢山採ってきたイセエビとアワビが副菜でパンとコーヒーが主食である。調味料は醤油のみという何とも贅沢というか訳が分からないランチであった。
翌日も私は磯釣り義弟らは船からルアーでヒラマサ狙いである。いくら頑張っても真鯛とシマアジのオンパレード。途中で船に乗せてもらい私もヒラマサ狙いに変更。魚探を観れば物凄い魚群である。
大きなルアーをそろりと入れていくといきなりドーンくる当たり。凄い引き、うんうんと唸りながら上げたのは20kgオーバーの大きなヒラマサであった。60歳を迎えた自分には十二分の格闘であり、釣り人生の大きな勲章となった。