◆NHK総合テレビが7月2日(金) 午後10時から10時49分の間、「狙われた国債~ギリシャ発・世界への衝撃」というタイトルで、ギリシャの財政破綻問題を機に、一気に吹き出した「国債」の危機について取り上げ、この問題の本質をみごとに解明してくれていたのには、感動した。進行は、「その時歴史が動いた」で高名を馳せた松平定知キャスターが担当、「リーマンショック」で明らかにされた「強欲なマネー資本主義」に続き、現在進行中の事件でありながら、さながら壮大な歴史ドラマを見るようで圧巻だった。まずは、この番組の概要を引用しておこう。
「それはギリシャだけの問題でもヨーロッパだけの問題でもない。マネー資本主義に成長を委ねざるを得ない世界経済の根本が、今まさに問われている。2年前大手投資銀行リーマンブラザーズの破綻で始まった金融危機。奈落の底に落ちるのを防ぐため世界の国々は巨額の公的資金をつぎ込み、そのリスクを『国家のリスク』として引き受けた。しかしそれによって蘇ったマネーは今、あろうことかその『国家のリスク』を揺さぶり、巨額の利益を引き出し始めている。CDSと呼ばれる複雑な金融商品も操りながら行われる、国債へのマネーの攻撃。ギリシャだけでなくポルトガル、スペインといった同じユーロを通貨とし、深刻な財政赤字を抱える国々は危機感を募らせている。巨額の国債発行に財政を依存する日本もこの問題と無縁ではない。震源となったギリシャ、対策に奔走するドイツやEU各国、ニューヨーク・ウォール街のヘッジファンドなど現場を同時進行で追いながら、問題の本質と、我々が直面する危険な状況を明らかにしていく」
◆CDSとは、クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap) というのは、クレジットデリバティブの一種で、債権自体を移転することなく信用リスクのみを移転する取引である。最も取引が盛んなクレジットデリバティブのひとつ。銀行の自己資本比率を高める対策の一環として利用されるケースも多いという。番組では、ヘッジファンドがこのCDSが高騰するのを見越して低い価格のときに大量に買い込み、高値で売り逃げるばかりか、暴落を予想して「空売り」も浴びせつつ、巨利を得て、国債を紙くず同然にし、ギリシャなど国家を破滅に追い込むカラクリを丁寧に分析、解説していた。
◆ヘッジファンドは、かつて名うての投機家、ジョージ・ソロスがポンドを売り浴びせてイングランド銀行を倒産の危機に追い込んで有名になった。その後、タイ、インドネシア、フィリピン、香港、韓国などに通貨攻撃して、国家倒産の危機をもたらした。アジア通貨危機である。しかし、リーマンショックの際は、ゴールドマンサッククス社が「サブプライムローンが組み込まれた証券」を保有していながら、その大半が「空売りの権利付き証券」であったことから大儲けし、決算において史上最高利益を手にしたケースを例外に、大半のヘッジファンドが巨額の損失を出して存続の淵に立たされた。だが、ヘッジファンドは、ギリシャのような他国からの巨額の借金を抱えて赤字財政に苦しむ状況下、国債市場が「歪み」を起こしているところを見つけて、マネー攻撃を浴びせて、再び息を吹き返したのである。
ところで、こうした国家までも危機に陥れるヘッジファンドの横暴を許し、放置していてよいのかという大問題がある。自由主義経済体制の下で強欲なマネー資本主義が許されているとはいえ、国家を倒産に追い込む自由までは許されていないはずである。それは自由主義経済体制そのものを破壊させてしまう危険があるからである。このことは、先進国首脳会議(G8)などで議論され、相応の対策、たとえば、「空売り規制」などの措置が講じられるべきであった。だが、EUなどが規制に賛成しているのに対して、米国が猛烈に反対しなかなか実現できないでいる。
◆菅直人首相は、「ギリシャのようになっていけない。そのためには、消費税アップが必要だ」と声高に喧伝しているけれど、いくら消費税をアップしたところで、獰猛なヘッジファンドに睨まれたら、ひとたまりもない。その意味で、消費税アップを叫ぶよりも、むしろ米国に対して「空売り規制」などの措置を講じるよう強く要求することの方が、先決である。
「それはギリシャだけの問題でもヨーロッパだけの問題でもない。マネー資本主義に成長を委ねざるを得ない世界経済の根本が、今まさに問われている。2年前大手投資銀行リーマンブラザーズの破綻で始まった金融危機。奈落の底に落ちるのを防ぐため世界の国々は巨額の公的資金をつぎ込み、そのリスクを『国家のリスク』として引き受けた。しかしそれによって蘇ったマネーは今、あろうことかその『国家のリスク』を揺さぶり、巨額の利益を引き出し始めている。CDSと呼ばれる複雑な金融商品も操りながら行われる、国債へのマネーの攻撃。ギリシャだけでなくポルトガル、スペインといった同じユーロを通貨とし、深刻な財政赤字を抱える国々は危機感を募らせている。巨額の国債発行に財政を依存する日本もこの問題と無縁ではない。震源となったギリシャ、対策に奔走するドイツやEU各国、ニューヨーク・ウォール街のヘッジファンドなど現場を同時進行で追いながら、問題の本質と、我々が直面する危険な状況を明らかにしていく」
◆CDSとは、クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap) というのは、クレジットデリバティブの一種で、債権自体を移転することなく信用リスクのみを移転する取引である。最も取引が盛んなクレジットデリバティブのひとつ。銀行の自己資本比率を高める対策の一環として利用されるケースも多いという。番組では、ヘッジファンドがこのCDSが高騰するのを見越して低い価格のときに大量に買い込み、高値で売り逃げるばかりか、暴落を予想して「空売り」も浴びせつつ、巨利を得て、国債を紙くず同然にし、ギリシャなど国家を破滅に追い込むカラクリを丁寧に分析、解説していた。
◆ヘッジファンドは、かつて名うての投機家、ジョージ・ソロスがポンドを売り浴びせてイングランド銀行を倒産の危機に追い込んで有名になった。その後、タイ、インドネシア、フィリピン、香港、韓国などに通貨攻撃して、国家倒産の危機をもたらした。アジア通貨危機である。しかし、リーマンショックの際は、ゴールドマンサッククス社が「サブプライムローンが組み込まれた証券」を保有していながら、その大半が「空売りの権利付き証券」であったことから大儲けし、決算において史上最高利益を手にしたケースを例外に、大半のヘッジファンドが巨額の損失を出して存続の淵に立たされた。だが、ヘッジファンドは、ギリシャのような他国からの巨額の借金を抱えて赤字財政に苦しむ状況下、国債市場が「歪み」を起こしているところを見つけて、マネー攻撃を浴びせて、再び息を吹き返したのである。
ところで、こうした国家までも危機に陥れるヘッジファンドの横暴を許し、放置していてよいのかという大問題がある。自由主義経済体制の下で強欲なマネー資本主義が許されているとはいえ、国家を倒産に追い込む自由までは許されていないはずである。それは自由主義経済体制そのものを破壊させてしまう危険があるからである。このことは、先進国首脳会議(G8)などで議論され、相応の対策、たとえば、「空売り規制」などの措置が講じられるべきであった。だが、EUなどが規制に賛成しているのに対して、米国が猛烈に反対しなかなか実現できないでいる。
◆菅直人首相は、「ギリシャのようになっていけない。そのためには、消費税アップが必要だ」と声高に喧伝しているけれど、いくら消費税をアップしたところで、獰猛なヘッジファンドに睨まれたら、ひとたまりもない。その意味で、消費税アップを叫ぶよりも、むしろ米国に対して「空売り規制」などの措置を講じるよう強く要求することの方が、先決である。