岸信介元首相は「国家の興亡を己の任」とし「韓国、台湾の巻き添えになることは困る」と懸念していた

2010年07月08日 14時51分51秒 | 政治
◆外務省が7月7日、1960年の日米安全保障条約改定に関する外交文書などを公開した。このなかで、最も意外であり、感動的だったのは、岸元首相が「日本としては、米国と共に渦中に投ぜられることは覚悟しなければならないが、韓国、台湾の巻き添えになることは困る」と懸念を示していたという文書である。改定安保条約反対を叫ぶデモ隊が国会周辺に押しかけ、東大教養学部の学生だった樺美智子さんが、死亡するという惨事まで起きていた状況下で、当時の岸首相が、「米国の戦争に巻き込まれる」と叫んでいた学生たちと同じような気持ちを持っていたという証拠でもある。近年の歴代首相が、何かと「対米追従」の姿勢で日米外交を続けてきているのと比較すれば、格段の差がある。菅直人首相にしても、アメリカの顔色をうかがい、しかも、情けないことに、アメリカ最大の財閥であるデイビッド・ロックフェラーの強い求めに応じて、「消費税アップ」を国民に押し付けようとしているのである。
◆岸元首相は、「アメリカの傀儡「昭和の妖怪」などとさんざん悪口を言われてきたけれど、実は、財団法人協和協会が基本精神に掲げている岸元首相の書「以国家興亡為己任 置個人生死於度外」(国家の興亡を以って己の任と為し個人の生死を度外に置く)が如実に示しているように、岸元首相の国を思う心情が、外交文書にもあふれている。
岸信介元首相が設立した財団法人協和協会が主催している月例講話会に講師として招かれ、「民主党政変 政界大再編」というテーマでお話し、その際、岸元首相の偉大さを再認識していた矢先、外務省が外交文書などを公開した。これには個人的ながら、ある意味の因縁のようなものを感じさせられる。
◆というのは、岸元首相の長女洋子さんの夫・安倍晋太郎元外相(元官房長官、元通産相)は、毎日新聞社政治部出身で、最有力の首相候補者と目されて、竹下登と首相の座を争っていた。私は、安倍さんの官房長官番記者を担当し、安倍さんが通産相に就任していたときは、経済部から通産省虎ノ門クラブに配置された。当時の政治部長から「安倍さんは毎日新聞にとって大事な人だから、しっかり担当するように」と命じられていた。そのことを大臣室の安倍さんに打ち明けたところ、神妙な表情で聞いておられた。つい先日のことのように記憶している。
◆安倍さんはその後、外相に就任して、「全方位外交」を政策の機軸にして、精力的に海外出張していた。おそらくは、義父・岸元首相と同じような気概を持って外交を展開しようとされたに違いない。さらに安倍政権樹立に向けて、経済政策にも力を注ぎ、野村総研の協力を獲て「ニューグロウス」と題する「新経済成長戦略」まで準備していた。しかし、残念ながらリクルート疑獄事件に巻き込まれ、すい臓がんにも祟られて、志半ばにしてあえなく他界してしまった。その父の遺志を受け継いだのが、安倍晋三首相であった。ブッシュ米大統領に脅されて、神経質になり、もともと弱い胃腸がダメージを受けて、政権を途中で投げ出さざるを得なかった。これもまた残念なことであった。
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