和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

一挙2話掲載。

2009-04-26 23:37:26 | いつもの日記。
「祭の合図」1、2話一挙にアップしてみました。
これ、少なくとも2話目まで読まないと面白くないんじゃ・・・?
と不安になったので、急遽頑張ってみた次第。

タイトルは、結構悩んだんですが、京極夏彦「塗仏の宴~宴の支度/宴の始末」をイメージ。
いっぱいロアが出てくるので、「宴」→「祭」という意味と、ここが最終回へと続く
一連のお話のスタートなので、始まりを思わせる「合図」です。

キャラ設定とかその辺の細かい話は、また恒例の「あとがき」で。
ちょっとこれからまとまった時間が取れない可能性が高いので、次の更新がいつになるか
分かりませんが、乞うご期待ってことでひとつよろしく。
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祭の合図:2

2009-04-26 23:15:36 | 小説――「RUMOR」
――ガタン。

一度、音がして。
続いて、ガタガタ、ガタガタと、廊下側の窓ガラスが震えた。
「小麦」
「ん。任せて」
日も暮れかけた、オレンジの教室。
同じ色のコスプレをした少女は、口の端に笑みを浮かべ、機を待つ。

ガラリ、と窓が開き――セーラー服の袖が、窓から侵入して来た。

「く、ら、えッッ!」
右手に構えたリコーダーを、槍投げの要領で投擲。
それは、窓の向こうからタイミングよく顔を出したロアに見事的中した。
・・・マジかよ。ロンギヌスの槍みてーだな。
「さて、こんなもんじゃないでしょ?」
言って、小麦は軽快に走り出した。
ひょいとジャンプして、開いた窓から廊下へ飛び出す。
やっぱ、戦闘中の小麦はイキイキしてるなー。
――と。
「あれええええ!?」
僕が分かりやすく油断する中、廊下から素っ頓狂な声が聞こえた。
チッ、まずったかっ。
ロアは大抵、並じゃない能力を持っている。
あんな適当な遠距離攻撃ひとつでどうこうなるものではないのだ。
僕は急ぎ廊下へと飛び出す。
「小麦、大丈夫――か?」
そこには。
ぴくりともしないロアと、割れた仮面、そして不満そうにそれを見下ろす小麦がいた。
「コイツ、もう死んだっぽいよ?超弱いんですケドー」
・・・遠距離攻撃ひとつで、どうこうなるもの、だったな。
唇を尖らせ、ジト目で僕を見る。
「いや、僕に訴えられても。良いじゃないか、勝ったんだし」
「そうだけどー。つまんないー」
愚痴りながら、げしげしと朽ちる寸前のロアを蹴飛ばす。何てヤツだ。
そういえば、このロアの「顔」は――と。
僕は、(下半身を見ないように気をつけながら)その素顔を覗き込んだ。

――ん?
何だ、こいつ――。

「危ない、ハル君っ!」
どん、と真横からの衝撃。
僕は堪らず廊下の端へと倒れ込む。
小麦が、凄まじい勢いで体当たりしてきたのだった。
「な、何だよっ、小麦っ」
「・・・人体模型」
「は?」
「見慣れた人体模型が、猛ダッシュしてった・・・」
「見慣れた・・・って、あれか。部室の」
「うん、多分」
「マジっすか」
「マジっす」
それって、ロア、だよな。だって、足音しなかったし。有り得ねえだろ、色々と。
僕は、大きくため息を吐いた。
「おかしいと思ったんだよな。楽勝過ぎて」
一方、すぐさま体勢を立て直した幼馴染は、ニヤニヤ笑いながら言った。
「ふふん、あれくらいじゃ面白くもなんともないって思ってたところよ」
あー、そりゃまあ、オマエはそうだろうよ。
仕方ないな、と僕も立ち上がる。
「さてと――」
多分、と僕は予想する。
――多分、これにはまだ裏があるな。
そして。
僕の役目は、いつだってその更に一歩先にある。

人体模型が走り去ったと思われる方を睨み付ける小麦。
案の定、再度攻撃を仕掛けるべく、その方向からロアがやってくる。
・・・足早っ。
っていうか、人体模型でも律儀に仮面付けてるんだな。
小麦は、先ほどのリコーダーを拾い上げて、猛ダッシュで近づくロアを迎え撃つ。
「ほらほら、掛かってこいよォォ!」
という挑発に乗ったのかどうか。ロアは更に速度を上げる。
そして更に。
ロアが、分裂した、、、、
「げっ、増えた・・・そんなのアリ!?」
否、最初から2体だったのだ。1体は影に隠れていたに過ぎない。
さすがに不意を突かれ、慌てる小麦。
となると――。
僕は、周囲の様子を伺う。
「えーい、面倒臭い、2体まとめてやっつける!」
動揺したのも僅か一瞬、小麦は気を取り直した。その辺はさすがである。
僕なんか、ある程度予想していたのにちょっとびっくりしたからなー。
・・・さてと。
僕の役割の方については――びっくりするわけにもいかないな。

「小麦、そっちは任せた」
「ん?うん。トーゼン!」

そして僕は、くるりと後ろを向く、、、、、
「不意打ちは卑怯じゃねえ?久我さん、、、、

こちらも、案の定。
廊下の角からこちらを伺う久我さんが、姿を現した。

「あちゃ。バレてました?さすがっすね、語り部さん、、、、、
「・・・・・・にゃろう」

不覚にも、苦笑が漏れる。
『語り部さん』ときたか・・・こいつ、何か知ってやがるな。
僕は、最悪のケースを想定する。
・・・ちっ、面倒なことになりそうだ。

背中からは、小麦と人体模型×2が闘う音が聞こえる。
僕は、それを小麦に任せる、、、と言った。
だから――その存在は、一旦無視することにする。

「よく分かったっすね、しっかり隠れてたのに」
「ロア2連発はいくらなんでも怪しいだろ。となると、1体目の噂を持ってきた君が一番怪しい」
「えー、それ、殆どカンじゃないっすか」
「経験と言って欲しいね。で、久我さん。君の目的は、何だ?」
「んー・・・どこまで話して良いのかなぁ。ちょっと判断に迷うトコっす」
「僕らを、罠にハメたことは認めるな?」
「ああ、はい。そこはガチっす」
副会長は、明るく笑ってあっさりと肯定した。
その朗らかな態度は、逆に不気味に映る。
「一応、上半身オバケで油断させて、人体模型クンでトドメというコンボの予定でした」
「詰めが甘ぇよ」
「はい、反省してるっす。やっぱ、ヒトの言うことは聞くもんっすね」
・・・はて。ということは、つまり。
「組織立って動いてる、と判断して良いのかな?」
「あうあう、またバレちゃったっすか!?」
結構、アホの子なのかも知れない。
僕の中で、生徒会の地位がどんどん失墜していく。大丈夫か、この学校。
「はあ・・・気が進まないけど、しょうがないっすね」
「ん?」
「柊センパイ、ちょっと動きを止めさせてもらうっす」
・・・何だって?
僕は確かに直接戦闘向きではないが、女子生徒ひとりに取っ捕まるほど弱くもない。
「ええと、こんな噂、知ってます?」
実に唐突に、久我さんはその都市伝説フォークロアを語り始めた。

「この学校の1Fの水道――ちょうどセンパイから見て左にあるソレっす。
 その水道の鏡、見えるでしょ?
 夜にその鏡を覗き込むと、悪魔が映る、、、、、んっすよ」

・・・しまった、そういうことか!
気付いたが、既に遅かった。
僕は、反射的に左を――蛇口の上に備え付けられた大きな鏡を覗き込んでしまっていた。
そこには、当然、僕と。
仮面を付けた悪魔が、映っていた。
黒い肌、尖った耳、細く長い手足。
僕の左約2メートル・・・ちょうど小麦と僕の中間くらいに立ち、こちらへにじり寄る。
「見えましたか?そいつ、ボクの最新作にして自信作っす」
久我さんが、余裕たっぷりに言う。

名付けて、、、、忍び寄る悪魔カウントダウン

畜生、まるで誰かを連想させる言い回しじゃないか。
イライラする、イライラする、イライラする!
「そいつは、呪いの一種っす。発動トリガーは『特定の鏡を特定の時間に覗き込むこと』。
 そして、発動後は鏡に写っている間、悪魔と『だるまさんがころんだ』することになるっすよ」
「『だるまさんがころんだ』・・・?」
「そっす。鏡に写ってる間、悪魔は近寄ってくるっす。写らなければ、悪魔は動きません。
 じりじり忍び寄って、最終的にはセンパイの首を絞めて殺すんっすよ」
朗らかな声色のまま、恐ろしいことを宣言された。
故に、忍び寄る悪魔カウントダウンってか。
全くもって、趣味が悪いね。僕とは到底合いそうにない。
ともかく――この場にいるのはまずい。
にじり寄る悪魔から逃れるように、身を屈める。これで鏡には写らないはずだ。
「おお、素早い対処」
「お褒めにあずかり光栄の極み」
「でも、そのままじゃジリ貧っすよね。ボクは、今のうちに逃げさせてもらうっすよ」

「逃がすかバカ」
勇ましい声。
「――え」
驚愕する久我さん。

「おー、小麦、終わった?」
「楽勝!」
にひ、と武器リコーダーを片手に小麦が笑う。
その背後には、砂のように崩れ落ちる人体模型が2体。
「え?え――ま、マジっすか?そんな、マジでそんなに強いんすか?」
「ふふん。あたしを誰だと思ってるのよ。あんなロア、瞬殺なんだから」
「はへー・・・これは、マズいなぁ。マズいっすよ。うーん・・・」
困り顔で、しきりに首を捻る久我さん。
しかし、それは降参の意ではなく。
「じゃあ、しょうがないから奥の手、、、を出させてもらうっすね」
なっ、奥の手――だと!?
「これ以上、何かあるって言うのか?」
上半身だけの女子高生、走る人体模型、鏡に写る悪魔。
全て、久我さんが創作したロアだろう。
ひとつひとつの強度は大したことないものの、その数は驚愕に値する。
だというのに、まだこれ以上手駒を持っていると言うのか。
怯む僕に、久我さんは――改めて、誇らしげに名乗りを上げる。

「ボクの名前は、噂中毒ワーカホリック・久我描。息をする様に噂を作り出してみせるっす」
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祭の合図:1

2009-04-26 17:23:50 | 小説――「RUMOR」
僕と小麦は今、宵闇の学校の空き教室にいる。
隅の方で二人、ぴったりと身を寄せ合って座っている状態。

――別に、気が違って小麦といちゃついているわけではない。

息を殺し、物音を立てないように。
そして逆に、教室の外から聞こえる音を逃さないように。
緊張し、集中している。

「ってか、ハル君」
「ん?」

ヒソヒソと、外部に極力音が漏れないような小声で小麦が問いかけてきた。
うん、お兄さん、空気が読める子好きだな。
「何で逃げんのさ?そーゆーの、性に合わないんだけど」
「いやごめん。なんつーか、予想以上に・・・キモかったから?」
隣で、小麦がわざとらしく息を吐いて頭を抱える。
・・・うわー、コイツにそういうのやられると超ムカつくんですけどー。
畜生、バカのくせに。バカのくせに!
「じゃ、あたしが迎撃するのはOKってことね?」
「ああ、そうだな。小麦さえ問題なければ」
「あたぼーよー」
言って、彼女は満面の笑みを浮かべて立ち上がった。
ちなみに、本日の衣装コスプレはチアリーダーで、武器エモノはリコーダーだ。
そんな格好で勢い良く立つもんだから、短いスカートが舞い上がってぱんつが見えるじゃないか。
いや、そもそもあれってどうなんだ。テニスのアンダースコートみたいなもんか?
ぱんつじゃないから恥ずかしくない、とか言うつもりか?
あと何でリコーダーなのかというと、近くに武器っぽいものがそれしかなかっただけである。
チアリーダーにリコーダー。
非常に眩暈のする取り合わせだと思う。
しかし、本人的には動きやすくて気に入っているらしい。
いつになったら羞恥心を覚えてくれるのか、幼馴染のお兄さんとしては甚だ不安なものだ。

さて、僕も少しずつ落ち着きを取り戻せてきた気がする。
ここらで、頭の整理をするためにも少し時間を巻き戻そう。
頭脳労働者の僕が混乱してるようじゃ、お話にならないからな。
そう、あれは、2時間ほど前のことだった。

――放課後、我らが天文学部部室に珍しいお客様が舞い込んできた。
「紹介するまでもないでしょうけれど――久我くがえがくさんです」
「はじめましてー、久我っす」
委員長こと二条にじょう三咲みさきから紹介を受けた久我女史は、そう言ってペコリと頭を下げた。
僕と小麦は、どう対処して良いものか分からず、はぁそうですかと間の抜けた返答をした。
はじめましてと言われても、相手は多分全校生徒がもれなく知ってる生徒会副会長だ。
コッチとしては一方的に存じ上げておりますが、という感想しか持てない。
そもそも、こんな大物が一体こんなところに何の用だと言うのだろうか。
・・・生徒会副会長、久我描。逆から読んでもクガエガク。
いいトコのお嬢様で頭も良く、僕らのイッコ下(1年生)にして副会長という才女である。
但し、口調がやたら体育会系。
いや、そこがまた男子にも女子にもウケが良い理由だったり。
そういえば、生徒会長は委員長で副会長が久我さん・・・女性にシメられてるんだな、ウチ。
と、僕の頭をそんなどうでも良いことが過ぎった。

「ということで、彼女の話を聞いて頂けないでしょうか」
言って、委員長は久我さんに場を譲った。
何が「ということ」なのかサッパリ分からん。
分からないが――久我さんは許可が出たとばかりに語り始める。

最近新たに話題になっているという、都市伝説フォークロアを。

「放課後、少し帰りが遅くなったある生徒のお話っす。
 彼女は急いで帰り支度をして、教室を出ました。
 その時、既に誰もいなくなったはずの教室の窓が、カラカラ・・・と開いたんっす。
 何事かと振り向くと、開いた窓の向こうには誰もいない。
 ところが、よくよく見ると窓の溝の部分に・・・指が、掛かっているのデス。
 そして、その指でぐっと体を持ち上げて、一人の少女が窓から身を乗り出しました。
 それは、見たことのない少女で。
 少女はそのまま窓から廊下へと転がり落ちたのですが、何と」

「――足がなかった?」
僕は、割り込むようにそう言った。
久我さんはオチを取られて驚くような様子もなく、
「ええ、その通りっす」
と頷く。
「さすがにこの手のお話にはお詳しいっすね。尊敬するっす」
「いえ――まぁ、割とベタな都市伝説ですからね。
 『カシマレイコ』とか『テケテケ』とか、そういった類でしょう」
「なるほどー、そんな名前なんすね」
「もしくはその派生といったところでしょうか。断定はできませんが」
っていうか僕は何で後輩に向かって敬語で話してるんだろうね?
恐るべし、副会長マジック。

「じゃ、そいつやっつければ良いのね?」
それまで聞きに回っていた小麦が、元気いっぱいに叫んだ。
さすがにこちらには驚きつつ、久我さんは答える。
「はい・・・その話を聞いて、ボクのガラじゃないんすけど、怖くて怖くて」
「それで、私に相談してきたものですから、適任がいますよってコトで」
と補足する委員長。
・・・おおう、何という盥回し。
さては、今回のロアが少女だからやる気ないな、コイツ。
少年だったら絶対自分がヤる(性的な意味で)って言うくせに。

ともあれ、そのような理由で僕らはロア退治を引き受けることになった。
珍しく小麦の趣味だけでなく、世のため人のためになるロア退治である。
素晴らしいことじゃないか。
僕は、噂の1年生の教室で待機しながらそんなことを考えていた。
ちなみに、この隙に小麦はどこからか仕入れてきた衣装に着替えてリコーダーを装備した。
着替えるから後ろ向いちゃダメだよ、とか言うくらいなら違う場所で着替えろよ。
・・・と文句を言ったら、乙女心が分かってないとか言って背後から殴られた。
何でだよ。見られたくないんだろうに。理不尽すぎる。

そして、待つこと1時間と少し。
「・・・そういえば、今回のロアの出現条件って何だろうね?」
今更過ぎる疑問を投げかける小麦。
しかし、疑問そのものは割と適切だ。
「正直、ランダム要素が強いとしか思えないな」
僕は暗い気分で答えた。
「条件らしい条件なんか、時間と場所くらいのものだしさ」

――切断魔ジャック・ザ・リッパーなら、特定のタイミングで裏門を通ること。
――マキオなら、体育館でスクエアという降霊術を行うこと。
――そして例の黒巫女の場合は、特定の電話ボックスから自分の携帯に電話すること。

そんな風に、これまでのロアは具体的な手順が示されていることが多かった。
勿論そうじゃない場合も多々あるわけだが、そんな時はどうしても持久戦になる。
つまり、何度もトライしてみること。
要は面倒臭いのだ。
多分、今回のパターンだと10回か20回くらいはやってみないといけないだろう。
下手すると、向こう1ヶ月は放課後拘束されることになるわけだ。
・・・マジめんどくせぇー。
「仕方ないじゃない。出てくるまで、何度でもやるわよ!」
「はぁ、ま、そうだよな」
諦めて、僕らは教室を後にする。
帰るわけじゃない。これが、今回の唯一の「手順」だからだ。
どうやって帰るとか、帰る前に何をするとか、一切なし。
ただ、少し遅く帰るだけだ。
外は日も傾き始め、薄暗くなっている。良い頃合だろう。
教室のドアを閉め、背後の音に気を配りながら廊下を歩く。
こんなんで出てくるワケねぇよなー。

・・・というのは、当然大間違いだったわけで。

背後から控えめに、カラカラという音が聞こえて。
小麦は当然、喜び勇んで振り向いたね。
マジかよ。1回目で?
1万回に1回しか起こらないことは、最初の1回に起こるもんなのさ。
なんて誰かが言った台詞を思い出した。
ともかく、そんな呑気なことを考えてる暇もないな。
僕は、警戒しながら様子を伺う。

ずるり、と仮面を付けた黒髪の少女が窓から顔を出し。
そのまま、頭から廊下に落下。
上はクラシックなセーラー服で。
下半身は、無かった。
いや、無いのは分かってたのだけど。
ず、ず、ず・・・と肘で歩く様はかなりアレで。
歩いた後にしっかり血痕が残っていた辺りで、僕はもうダメだった。
「う、うおおお、キモッッッ!逃げんぞ、小麦っ!」
「え、え?えぇえええ?」
力の限り叫び、小麦の腕を掴んで半ば強引に逃げ出した。
そして、手頃な空き教室に身を潜めて。

――そのまま現在に至るのだった。
ええ、ヘタレですとも。
ヘタレですけどそれが何か?

いや、ダメなんだよ、あの手のグロさ。
だって、血ィ流れてんだよ?
アレ、セーラー服の下は絶対内臓とか骨とかむき出しだって。
小麦は何で大丈夫かな・・・。
「あんなの、どうってことないじゃない?」
「・・・へぇへぇ、さいですか」
バカだからかな。バカだから、想像力とか働かないのかな。
「繊細な僕としては、耐えられない光景だったね」
と情けなく愚痴りながらも。

「ふふん。仕方ないなぁ。ハル君は、あたしが守ってあげるからねっ」

今は、目の前のやる気に溢れた少女がとても頼もしく見えた。
・・・角度的にぱんつ丸見えなのは正直どうかと思ったけども。
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