和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2009-11-05 15:47:34 | いつもの日記。
そんなわけで、脊髄反射小説「鍵」と「ご都合主義」でしたー。

「鍵」はですね、公開しようか迷ったレベルなんですよ。
前作「僕はひとり」と同じくらいのデキかなぁ。と思って。
でもまぁ、こういうテイストは嫌いじゃないし、公開しちゃいました。
もう少しホラーにしたかったんですが、擬音むずいっすね。
実は、次書こうとしてるRUMORの続きのための習作だったりします。
擬音って、ほとんど使ったことがなかったので。
オノマトペってやつですか。
ひとつの分野として存在する以上、ある程度勉強しないといけないのかなぁ。

「ご都合主義」の方は、脊髄反射小説を名乗って良いものかどうか。
推敲はしてませんが、ちょいちょい戻って書き直したり書き足したりしました。
なんかですね、シリーズとして書けるだけのキャラにしたい!と思って。
キャラものでSSが書けたら、楽そうじゃないですか。
何という卑しい発想。
そんなわけで、孝明と結城シリーズ第1弾でした。
第2弾があるかどうかは、未定。
ダメじゃん。
ちなみに、脳内ボイスは孝明=石田彰、結城=沢城みゆき、だったり。
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【SS】ご都合主義

2009-11-05 15:25:07 | 小説。
「ご都合主義、ってよく言うじゃないか」
ウチでぐだぐだと本を読んでいる最中、結城が寝転んだままそんなことを言った。
適当にしか聞いていなかった僕は、何事かと聞き返す。
「何だって?」
「ご都合主義。漫画なんかで、偶然とか運命とか都合の良いことばかり起こるやつ」
・・・ああ、また独演会が始まった。
基本的に人畜無害な結城だが、時々こうやってわけの分からない議論を始めてしまう。
別にそれが嫌いだとか迷惑だとかいうことはないのだが。
特に、今日のように暇で暇ですることがないときなんかは、詮ない話も悪くない。

「俺は、このご都合主義っていうモノ自体は悪くないと思うんだ。
 むしろ、架空の話が架空足り得るのはご都合主義あってのことだと言って良いと思う。
 スーパーマンが空を飛ぶのに理屈は要らないし、悟空が突然超サイヤ人になるのも格好良い。
 ただなぁ・・・」
「ご都合主義自体が嫌いじゃないなら、何が気に食わないのさ?」
と、お約束の合いの手を入れてみる。
今日の話は割と面白そうな気がした。
ここで僕は、ある程度覚悟を決めて、読んでいた小説を閉じてテーブルに置いた。
結城は、まだ寝転んだまま漫画本へ目を向けている。
「俺が厭なのは、作者がそのご都合主義をどう使うか、という点さ。
 それはつまり、主張したいことや話の方向性を明確にするために使われるわけだろう?
 ――となると、これは一体どういうことだ」
言って、結城はようやく視線を僕に向けた。
同時に、今読んでいた漫画の表紙を僕に見せる。
可愛らしい女の子がきわどい格好で微笑んでいる、所謂萌え系ってヤツだ。
「あぁ、それか。昨日買ってきたばかりなんだよ」
僕は基本的に、漫画も小説もジャンル問わずで読んでいる。
だから、本棚には全く統一性がなく、初めて訪れた友人からは漏れなく失笑されるのだ。
幼馴染の結城は、その辺も理解しているはずなのだが――
「なあ、孝明。俺は別に他人の趣味に対して非難をするつもりは全くない。
 だからこれは非難ではなく純粋な疑問だと受け取ってくれ。
 ・・・孝明、これは一体どういうことだ」
再びの問いかけ。
どういうことだ、と言われても。
「どうも何も。面白いんじゃないのか?」
「面白い、面白くない以前の問題だよ」
結城は呆れたように溜息を吐いた。
「この漫画、何でやたらと妹がベタベタくっついてくるんだ」
「可愛いからいいんじゃね?」
「そう、そこだ。『妹がくっついてくること』がご都合主義ポイントだということだろう。
 つまり、作者は主人公と妹が接触することが目的、命題だと考えているのか?」
「そうだな。妹の着替えを偶然見てしまったとか、お風呂に間違えて妹が入ってきたとか」
「それの、何が楽しい」
うわぁ。
一刀両断だよコイツ。
「ええと、それは・・・なんつーか、説明しないとダメか?」
「是非、説明してもらえないか。でなければ俺はこの作品を楽しめそうにない」
うん。そういう場合は、楽しまなくても良いんじゃないかな。
と思ったが、それは胸の内にしまっておくとしよう。
「だから、だなぁ。こう・・・単純に見た目が可愛いじゃないか」
「妹は、そりゃあ可愛いだろう。だが、この漫画にあるように下着姿を見て興奮する・・・
 なんてことは有り得ないだろう?
 読者に対して、『妹の下着姿』を提供しても、需要はないんじゃないだろうか」
「いや、あるだろ」
「あるのか?」
いや、そこで僕がシスコンの変態であるかのような目で見るのはやめてくれ。
「・・・僕は、お前と違って実の妹なんかいないからな。色々憧れはあるわけだ」
「美沙は孝明にとっても妹みたいなもんだろう。美沙の下着姿、見て楽しいか?」
「・・・・・・」
ちょっと、何となく、結構、楽しいかもしれない。
・・・これも、胸の内にしまっておくことにする。
ちなみに、美沙ちゃんは今年で中学3年生になる。
お堅いばかりの結城とは違い、のんびりした雰囲気のいかにも守ってあげたくなるタイプ。
小柄で黒髪ロング、昔一緒にお風呂に入ったこともある。
「何故そこで黙る」
肉親の冷たい一言で回想という名の妄想は中断された。
ああっ。視線が痛いっ。
「と、とにかくだ。その漫画の女の子は可愛い顔をしているだろ。それが全てさ」
「むう。確かに、可愛らしい絵柄だと思う」
「となれば、その可愛い女の子と都合良くくっついたりしたいなってのが、
 素直な男の願望じゃないか」
「単純に男の欲求としてそうであることは分かる。しかし、俺が引っかかるのは――」
「妹ってとこ?」
うん、と結城は頷いた。
ええい、面倒臭いヤツだなぁ。

「世の中には、妹萌えってジャンルがあんだよ。
 実の妹だったり義理の妹だったりは様々だが、要は年下で可愛らしい女の子が良いんだな。
 男の欲求として、支配欲とか保護欲とかがあるだろう。
 妹萌えってのは、そういった部分を刺激するパターンだ。
 妹ならば年下、年下ならばか弱い、か弱いならば守りたい。そういう連想な。
 まぁ、これは一例というか、極端な例に過ぎないんだけど。
 ともあれ、ここでは血の繋がりってのはそこまで重視されない。
 血縁が問題になるレベルの接触はまずないからね。全年齢向けだし。
 となると、そこにあるのは『可愛い』とか『守ってあげたい』とかそういう気持ちだろ。
 だからこの漫画の妹キャラは、単純な、本能的なところを突いてきてるわけ。
 基本ツンツンしながらも、お兄ちゃんのことは大好きだし頼りにしてるよ、みたいな。
 そんな妹とのちょっとエロいハプニングは、だからまぁそういう層には需要があるわけだ」

これでどうだ、文句あるか。
そんな感じで言い切った。

「・・・・・・驚いた」
結城は、ぽつりと感想を漏らす。
「孝明がそこまで熱く語るのは、珍しくないか」
・・・しまった。墓穴った気がする。
「そうでもないだろ。あくまでも一般論さ?」
取り繕ってみる。
「いやー、何か、今のは・・・ちょっとした執念を感じたぞ」
ダメだった。
「まぁ、何だ。僕にもこう、そういったところがあるかなーって」
「シスコンか」
「うわぁ! 端的過ぎる!」
妹いないのにシスコン扱いされちゃった。
とはいえ、ある程度納得したのか、結城は再び漫画に視線を戻した。
「ううむ」
何か唸ってる。
まぁ、こうなったら議論もひと段落だ。放っておいて良いだろう。
そう思い、テーブルに置いた小説を再び手に取る。
「・・・そうか」
再び、結城。
「んー?」
「孝明は、こういう妹が欲しいんだな」
「まだ引っ張ってたのか、そのネタ」
「気になるじゃないか」
「気にするな。趣味に対して非難したりはしないんだろう?」
「非難はしないさ。ただ――」
「ただ?」
「孝明の好みは、美沙なのか、と」
「直球だ!」
衝撃のあまり小説を破るところだったぜ・・・。
そこは割とデリケートな問題だと思うんだけどなぁ。
でもまぁ、うん、別に間違ってるとは言わないよ?
「ふむ。参考にさせてもらう」
「どういうことだ」

「俺だって、孝明好みの女になりたいじゃないか」
「・・・そういうことは、まず女らしい振る舞いができるようになってからだろ」

「失礼だな。俺だって女らしいだろう?」
「一人称『俺』の女が言うな。あと、ミニスカートのまま寝転んで足バタバタするな」
「おお、すまんな。いつもの癖で」
「さっきから、がっつりパンツ見えてるからな?」
「そうなのか。・・・エロいハプニング?」
「嬉しくねえよ」
「つれないなー。ご都合主義な展開に興奮とかしてくれよ」
「別に都合良くねーもん」
「・・・孝明こそ、直球じゃないか」

そんな、妹以上に恋愛対象外な幼馴染――植田結城とのいつものやり取り。
何だかんだで、僕も結構、楽しんでいる。
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【SS】鍵

2009-11-05 13:38:09 | 小説。
鍵を拾った。
「・・・・・・」
くすんだ銀色。ギザギザ。ありふれた、普通の鍵。
多分、どこかの家の鍵。
キーホルダー等もついておらず、単品で道端に落ちていた。
「・・・警察」
拾得物は届けるべし。僕は条件反射的にそんなことを考える。
が、この辺の最寄の交番がどこなのか分からなかった。
電車で3駅ほど行ったところにあるのは知っているが、そこまで行くのもな。
時計を見ると、22時。
「明日でいいや」
深く考えないまま、鍵をポケットに放り込んで、そのまま家路を急いだ。

そして、自宅前。
疲れた僕は、溜息を吐きながら玄関の鍵を開ける。
ガチャリ。
そのまま扉を開けて中へ――ここで違和感。
手元を見ると、そこには家の鍵があった。
但し、それは、先ほど拾ったものだ。うちの鍵ではない。
・・・じゃあ、何で開く?
ルーチンワークのように扉を閉め、内側から鍵を掛ける。
そのまま慌てて靴を脱ぎ、リビングのテーブルの上にポケットの中身を広げる。
財布。携帯。コンビニのレシート。そして、自宅の鍵。
――ある。
似合わないキャラクターもののキーホルダーに繋いだ鍵が、確かにそこにあった。
拾った鍵と、並べる。
2つは、どう見てもそっくりで――実際に扉が開いたのだから同一なのだろうけれど。
じゃあ、どうしてそんなものが道端に落ちていたのだろう?
「合鍵?」
この部屋の管理人からは2本の鍵を貰ったが、もうひとつは机の奥底に眠っているはずだ。
それ以外に、自分で合鍵を作ったりした覚えはない。
机の引き出しを開けて確認する。やはりそこには予備である二本目の鍵があった。
これで、3つ目。
テーブルの上に、同一の鍵を3つ並べる。
「前の住人のもの?」
いや、そんなわけがない。
引越しの際には、鍵を交換するのだ。
つまり、前の住人の鍵だったとしても同一にはならない。
「・・・偶然?」
日本のセキュリティ意識からすると無理のある発想だった。
思考が行き詰まる。
どうでもいいや、で片付けるには・・・あまりに不可解。
そして、恐ろしい。
僕は想像する。
「もし、4本目が存在したら?」
有り得ないはずの3本目の鍵。
ならば、4本目があっても・・・不思議ではない、のか?
いや、いやいや。さすがに、それは。

ドン。

ドンドンドン。

心臓が破裂するかのような衝撃が走り、思わず立ち上がる。
ドンドンドンドン。
玄関を、叩く音。
激しく、激しく。
僕は、有り得ない現象を妄想し、急いで玄関へ向かう。
鍵の掛かった扉。うるさいノックは続いている。
焦る指で、素早くキーチェーンを掛ける。
――瞬間。
カチャ。
金属質な音が、して。
鍵が、開く。
多分、4本目の鍵で。
ギィ。
錆びた扉の軋む音。
そのまま、ゆっくりと、開いて――。
外側へ僅か開いた状態で、ガツン、と扉が動きを止める。
キーチェーンが、ギリギリで間に合った。
ふう、と小さく息を吐く。だが、到底安心などできやしない。
「だ、誰だ」
渇いた喉から声を絞り出す。
・・・相手は、無言。
「泥棒? 警察を呼ぶぞ」
無言。
無言無言無言。
・・・・・・。
「おい」
僕が再び声を掛けた刹那――
小さく開いた扉の隙間から、刃物が侵入してきた。
これは、包丁?
錆の浮いた、古い包丁のように見えた。
そのまま、ガチャガチャと激しくチェーンを切りつける。
まさか、壊そうとしているのか?
「や、やめろっ! 包丁なんかで切れるわけないだろ!」
ガチャガチャガチャッ。
一層激しく切りつけてくる。
しかし、やがて諦めたのか、包丁は動きを止めた。
そして、すっと外の闇へと消えていく。
今のうちに!
僕は力いっぱいノブを引っ張って、扉を閉めようとする。
が、異様な力で押さえられ、扉はびくともしない。
一体・・・何者?
僅かな隙間から、何とか相手の姿を探る。
しかし、向こうの身体の向きが悪いのか、そこからは何も見えなかった。
「手を・・・離せ・・・っ!」
更に力を加えていくと、少しずつ、扉が閉まっていくのを感じた。
もう少し、もう少しだ。
その時。
隙間から、ヌッと、細長い指が侵入してきた。
おそらく、右手の人差し指、中指、薬指、小指。
土気色の指には、長く伸びた汚い爪。
それが、ガリガリと扉の内側を引っ掻いて。
恐怖心は一層煽られ、僕は必死に扉を閉めようとする。
ミシミシと音を立て、老朽化を始めた扉が閉まる。
ついに、侵入した指を挟むまでになった。
「指・・・指を、引っ込めろっ!」
言いながら、指をギリギリと締め上げてやる。
が、相手はそれでも怯む様子がない。
「何とか、言えよっ!」
骨が折れても知るもんか。僕は力を抜くことなく叫んだ。
と、扉の向こうから、初めて声が聞こえた。

「残念だ」

低い声が短く聞こえた直後。
グチャリ、と厭な音がして。
4本の指が、切り落とされた。
急に抵抗がなくなり、扉は勢いよく閉まる。
扉は、どす黒い血に塗れて。
指は、更に黒く不気味な色に染まっていった。

次の日、警察と管理人に事情を話し、僕は急ぎ引越しの手続きを行った。
切り落とされた指は動かぬ証拠として警察が調査を行ったが、犯人は捕まっていない。
一時、僕の方が加害者として扱われもしたが、被害者不在のため有耶無耶になった。
一体、アレは何だったのか?
目的は?
そして、これからも同じようなことが起こり得るのか?
何も、分からないままだった。
新しく引っ越したこの部屋にも、もしかしたら――。
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