5/19の夜は,
4/23の記事 で紹介した,
情報通信政策フォーラム(ICPF) の第二回セミナーに参加した.前回につづき,今回も盛況で,活発な意見の交換があった.
話題は,テレビ放送のキー局と,
「録画ネット」 を題材にした,「ハードディスク録画サービスと著作権」である.
セミナーの内容は,近日中に,
ICPFの Web サイト に,議事録として公開されるはずなので,詳細はそちらを参照してほしい.
さて,今回のセミナーで,はっきり,わかったことは...
1) 日本のテレビのキー局は,内容の如何にかかわらず,テレビ(地上波)のコンテンツが,コンピュータやネットワークの世界で取り扱われることを恐れているらしいこと.
2) 日本のテレビのキー局(およびキー局が放送するコンテンツに著作権をもつ人たち)は,どのような形態であれ,自分たちのコンテンツを,キー局やその関連会社等以外のもとで,ビジネスに利用されることを,(有料であっても)許すつもりがなさそうであること.
3) 海外のイベント等の放送権の契約には,放送サービスの範囲に地域的な制約があるらしい.しかし,その契約は,視聴者である個人が,日本で受信した放送(コンテンツ)を自分のコンピュータをつかって,その地上波が届かない地域,例えば別の国にあるもう一つの自分のコンピュータにネットワーク経由(sshやVPNなどの暗号化された通信によってプライベート性は担保された状態)で送り,そこで放送を視聴する,というような現実の状況について想定していないということ.
これは,技術的には非常に簡単であって,すでに彼方此方で実際に行われている. 今回のテーマとなった
「録画ネット」 はそれを支援するために日本で客が買ったPCサーバーをあずかるサービスである.
アンテナやルータなどの設備を共用したら「私的複製」からはずれるというのであれば,すべて個人で買い取った設備としても大した金額ではない.また,一般には,PCサーバーの管理者権限のIDやパスワードを,PCをあずかってくれる人や会社に開示する必要もない.純粋にPCサーバーをあずかって,電源を供給してくれるだけで良いのだ.
よく考えてみると,もちろん,おなじ方法で,録画機能付きのPCをあずかってくれる友人などが米国にいれば,10万円ぐらいの初期投資と,月に50-60ドルぐらいの経費で,米国のテレビ番組を日本でも観ることができそうだ.これは,仕事や趣味の分野によっては,個人でも十分に検討に値する投資であろう.
つまり,オリンピック,サッカーのワールドカップ,F1などのイベントを,すべて個人のPCサーバーでまかなうのは(大元の放送地域が世界各地なので)簡単ではないが,特定の外国のテレビ番組を日本国内でいながらにして視聴するのは,その国に友人知人その他,自分のPC(テレビ録画機能付きのもの)をあずかってくれる人がいれば,良いだけということだ.
4) 1)~3) にかかわる議論に関して,日本のテレビのキー局の幹部は,広告主の製品を購入する可能性のある視聴者の利益や,間接的な広告主の不利益については,全く考慮していないように見えること.
5) テレビのキー局の幹部やキー局の顧問弁護士は,少しオタクの高校生や理工系の大学生でも理解しているレベルの,コンピュータとインターネットについての技術や,その技術によってすでに実現されているソリューションについて,技術的,社会的に理解していないらしいこと.
6) 放送と通信に関わる係争を担当する裁判官(判事)の大半も,上で述べたようなこ(技術と事実)とについて理解していないと思われる状況であること.
5/18の記事にも通じるが,官僚だけでなく,裁判官や,弁護士にも,早急に理工系出身者をふさなければ,日本では「科学的な正義が行われる」ことは,どんどん難しくなっているように思う.