水戸華之介ファン歴は長く、そして深い。もう27年もずっと飽きもせずに聞いているのだ。
しかし、この数年、ライブはおろか新作CDも聞くのをやめてしまった。世界がすれ違ってしまったというか、心にしっくり来ず、少しずつ過去の人になりつつあった。昔の音源ばかり聞いている。今回のライブも随分迷って、チケットも前日にようやく取った。
ちょっとした覚悟があった。もう15年も水戸さんに会っていない。
多分、水戸さんとは方向がずれてしまった。このライブがダメだったら、卒業ということにしようと。
「ウタノコリ外伝 at梅田シャングリラ」
1曲目、素晴らしい僕ら。むむむ。
2曲目、修羅へ。新作から、なかなか妙な音階で結構好きな曲だ。
3曲目、グライダー、虹へ。
もうこれは完敗。何とエレカマニアの曲。
誇張でなく涙が止まらなくなってしまって、恥ずかし気もなく何度も頬をぬぐった。
もうこれで参った。惨敗だった。
結局俺は水戸さんが、水戸さんの書く歌詞が、水戸さんの歌声が、水戸さんのパフォーマンスが、そしてあの、人を小馬鹿にしたあの突き放す感じが大好きなのだ。
ヴィヲロン、天井裏から愛を込めて、ロッカウェイビーチ(ラモーンズ超訳)、氷の世界(withオーケン)、命の重さ、パヤパヤ(レピッシュのカバー)、蠅の王様、31のブルース、釈迦(withオーケン)、ホテルカリフォルニア(超訳)、センチメンタルストリート。
とある情報も入っていたので、どうせ最後は「パンを一切れ」だろう。上等じゃねぇか、年甲斐もなくわんわん泣いて見せてやる。と思っていたら、「ラッキー」だった。
しんみりと、心ふるわせながら聞き入った。
きっと君は何もかも うまくやれるさ ラッキー
きっと君は何もかも うまくやれるさ ラッキー
やっぱり僕ら迷ってちゃ だめさ ラッキー
観客を見下して煽って、小馬鹿にして、愛する。
研ぎ澄まされた歌声と、何より、どうやたって俺は客を楽しませてやる、という気概がある。感動もあるけど、落語会よりよく笑える。
多分、アンジーの活動をやめて、紆余曲折あって、あらぬ方へ行ったり、アンジーを払拭しようとしたり。でも今は、どのバンドの時の曲だって好きな曲はやる、という潔さが気持ち良かった。
多分、何だってそうなんだろう。音楽だって、仕事だって、生活だって、家庭だって、友達だって、生きることだって、楽しませてなんぼだ。楽しんでなんぼだ。
「どうせこの世は落ちのない冗談さ」(水戸華之介&3-10Chain)