子どもの頃に受けたトラウマが、後年の心不全リスクを高める可能性のあることが明らかにされました。
とくに身体的虐待によるトラウマの場合に、それは顕著のようです。
10月5日、「Journal of the American Heart Association」に掲載された、イギリスのLiang, Y.Y.らによる研究です。
子ども時代のトラウマは、これまでの研究では、成人後の心血管疾患やその他の健康リスクとの関連は報告されてきました。
しかし心不全との関連は、ほとんど研究されてきませんでした。
今回の研究では、英国の成人15万3,287人を対象に、小児期の被虐体験の有無や心不全の遺伝的素因と、心不全リスクとの関連が検討されました。
約12年間の追跡で、2,352人が心不全を発症。小児期の身体的虐待、情緒的虐待、性的虐待、ネグレクトなどの被虐体験がある人の
心不全リスクは14%高く、3~5種類の虐待を受けた経験のある人は43%リスクが高いとの結果が出ました。
また、心不全の遺伝的リスクが低い人でも、小児期の被虐体験がある場合には、心不全のリスクの上昇が認められました。
この研究で示された心不全リスクの上昇を被虐体験のタイプ別に比較すると、身体的虐待が最も強い独立した関連があり(32%増)、
続いて情緒的虐待(26%増)、身体的ネグレクト(23%増)、性的虐待(15%増)、情緒的ネグレクト(12%増)の順でした。
ただし、因果関係は不明であること、小児期の被虐体験が小児期の記録でなく成人後の記憶で評価されていることは、忘れてはなりません。
原著論文
Liang, Y.Y., et al.,2022 Associations of Childhood Maltreatment and Genetic Risks With Incident Heart Failure in Later Life,
in Journal of the American Heart Association, vol.11, Issue 20, 18 October 2022 → https://doi.org/10.1161/JAHA.122.026536
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