1 震災と業務災害
労災補償・保険における業務災害とは、「労働者の業務上の負傷、疫病、傷害又は死亡」をいいます(労災7)。「業務上」といえるためには、「業務起因性」および「業務遂行性」の双方が必要とされます。具体的には「労働者が事業主の支配ないし管理下にある中で『労働者が労働契約に基づき事業主の支配化にあること』に伴う危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。
この点、地震、台風など天災地変によって被災した場合には、当該被災は、事業主の支配下にあることの危険性が現実化したのではなく、原則として「業務起因性」および「業務遂行性」は認められず、保険給付を受けられないことになります。
しかし、例えば、工場の構造等がそもそも耐震性を備えていないような場合には、まさに構造上の脆弱性が現実化したものとして保険給付を受けられると思われます。他のケースにおいても、業務起因性を広く解することで給付可能性が認められる可能性がありますので、労働省や労働基準局などの動向に注視すべきです。
2 保険料未納企業の場合
労災保険は、原則として労働者を使用する全事業を適用事業としており(労災3)、事業主は、事業開始日から10日以内に保険関係成立届を所轄労働基準監督署長に提出し(労徴収4の2)、以後保険料を納付しなければなりませんが、この届けをせず保険料を納めていない事業主のもとでの労働災害についても、保険給付はなされます。この場合、事業主は未払保険料等を追徴される可能性があります。
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