醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  796号  白井一道

2018-07-20 06:32:03 | 随筆・小説


  明治150年に思う⑦


句郎 戦前の日本と前後の日本、日本国の本質は変わったんだろうか。それとも日本国の本質は変わっていないんだろうか。
華女 日本は大きく変わったんじゃないのかしら。そうでしょ。私の実家は中規模程度の地主だったけれども農地改革があったでしょ。その結果、小作に出していた土地はすべて小作人の土地になったしまったのよ。
句郎 確かに農村は大きく変わったといえると思うな。しかし日本国の本質は変わらなかったんじゃないのかなと私は考えているんだけどね。
華女 どうしてそんなことが言えるの。戦後新しい憲法が制定され、戦争を放棄したんでしょ。
句郎 平和憲法が制定されて、日本は戦前のような侵略戦争をすることはなかった。新しい憲法は基本的人権を尊重もしているし、国民主権を詠っているからね。
華女 戦前に言われていた国体というものが戦後は国民主権というものに変わったんじゃないのかと私は思っていたんだけど、違うのかしら。
句郎 日本国憲法は国を、時の政府を縛ってきたという経過があるようには考えているんだ。しかし実際はそうではないような現実が多々あるようにも思っているんだ。
華女 そもそも主権とは、何なのかしら。
句郎 学校の授業のようなことを言うとね。主権という言葉は翻訳語なんだ。英語で言うとsovereignty。この語を辞書で引くと君主、主権という訳語が書いてある。だから国民主権とは、国民が君主だという意味だと思っている。
華女 天皇主権の戦前の国家と国民が主権者、君主である国では国体が大きく変わったといえるんじゃないの。
句郎 国民は不断の努力によって憲法を守ろうと努めないと大きな力を持っている政府は国民が君主であることを無視するような事態が生まれてくるんだ。
華女 政府といえども政府は憲法を護持するよう努めないといけないんじゃないのかしらね。
句郎 そうなんだけれども大きな力を持った外国の影響や国内の人々が国に働きかけ、国民主権をないがしろにするような事態が戦後日本にはたくさんあったように感じているんだ。
華女 どんな出来事があったのかしら。
句郎 例えば、戦後、極東軍事裁判で東条英機は戦争犯罪人として絞首刑になった。そうしたA級戦争犯罪人として訴追された人々の中に安倍総理の祖父、岸信介もいた。その岸信介が釈放された理由は何だったのかというとアメリカ占領政府が日本国を支配するに利用できる人材だと判断したからなんじゃないかと思っているんだ。
華女 岸にはどんな利用価値があるとアメリカ占領軍は考えたのかしら。
句郎 それは第二次世界大戦後、米ソの冷戦が厳しさを増していたからね。日本は戦後社会主義化するのではないかと欧米諸国の指導層の人々の中にはこのような考えを持つ人々がいたんだ。それには何としても日本の社会主義化を阻止しなくてはならない。なぜなら日本は米ソ冷戦の最前線基地だったからね。
華女 その仕事を岸にさせようとアメリカ占領軍は考えたということね。

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