うさぎとかえるの里

鳥獣戯画をこよなく愛する自分の日本文化や日常に関する想いをつづります。

史書と伝説と。

2013-06-05 10:05:09 | 読書


「建武中興の演出者」山本律郎著 を読みました。

私は、「太平記」の時代にとても興味があるので、すぐにタイトルに反応…。
ただでさえ、この時代を扱った書物が少ないのです…。

最近思うのですが、鎌倉幕府滅亡~南北朝時代は、天皇家が関わっているだけに、戦前くらいまで、この時代の研究は規制されていたのではないかと…。

脱線しましたが、この本の話に戻ります。

短編歴史随想みたいな形で、面白かったです。

「建武中興の演出者」は、その中の一編で、後醍醐天皇の動きはすべて文観僧正が誘導したというものです。
笠置山、隠岐島、船上山、都、そして吉野への移動。
それから、楠木正成との引き合わせ。

整理されて書かれているので、分かりやすく面白いです。

「太平記」関連では、「建武中興味をつぶした女二人」として、阿野廉子、勾頭内侍の二人。
阿野廉子は、我が子を天皇にしたいがために、足利尊氏と謀って後醍醐天皇をそそのかして、大塔宮を捕縛~暗殺にした人です。
文句なく悪女だと思います…。
私は、昔からキライでした(笑)

一方の勾頭内侍は、新田義貞が帝から下賜され、ベタぼれになってしまい、戦もそっちのけになってしまったという女性です。
この場合、勾頭内侍ではなく、ひとえに新田義貞がおバカだったと解釈できます。

それだけの女性だと思っていましたが、
義貞が越前で戦っているときも内侍はずっと待ち続け、義貞の戦死後は越前で菩提を弔い、京に戻ると義貞の晒し首に出会い、そのまま出家したそうで、なんだかとても受動的な悲劇の女性でした…。

それから、やはり「太平記」の中では、悲劇的な「楠木父子の散華」は、切なくなります。

他にも、物部守屋が死ななかったら…とか、興味深い内容たくさんで、面白く読みました。

著者の、正史は圧力によって書かされたものだが、伝説は民衆の合意によって伝承されたもの。伝説も価値ある史料という考えが、なんだか心に響きました。
コメント
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