日本がバブルという世紀末の醜態をさらしたとき、あぶく銭をつかんだ下品な爺が良すぎる環境に戸惑い、カネを使いまくった。
いわば楽しみの先取りが可能な社会を銀行が作り出し、政府各省は景気が良いと誤解しこぞって経済のしもべとなった。
人は、とくに貧乏人は、持つはずのないカネを持つととんでもない買い物をする。
(画像は本文とは関係ありません)
それがクルーザー。船は30年経とうとメンテがいいと、さほど問題ない。つまり買った瞬間から価値が下がる車に対し、きちんとメンテをし正しく動かしていると船の価格は上がりこそすれ下がることはない。
バブルのエロ爺はキャバクラのお姉ちゃんにカッコつけようと、あるいは病院の先生は看護婦との密会を楽しもうと、あるいは学校の先生は、…これは相変わらず貧乏で見込みなし。
ところが彼らは大きな計算ちがいをしていた。船を動かすにはカネは主たる要件ではない。ポイントは、時間とマメさ。あと少しの知識。クルマは故障すれば止まる。船は故障すれば死ぬ。
バブル終了とともに多くの船が売りに出た。頭の悪い爺には無理だったのだ。カネ儲けに忙しい医者には無理だったのだ。破格値の船を友達に紹介した。(1/10以下)カローラの値段で新車の最上級リンカーンが来た。
外から見るとこの不況に時期に…ということだろう。悔しかったら自分の思想を鍛えなければならない。
九州はシーズンとしてはもう終わりだ。暑い。
僕が帰港すると僕の紹介で買った知人の船が桟橋もろとも放火されていた。意外だが船はよく燃える。20ノット、30ノットの風にふかれているからカラカラだ。ガソリンも軽油もガスもある。水は届くほど近くにはない。
まあ、いいじゃないか。警察が(この場合は海上保安庁)絶対捜査しない人たちがやったんだ。あきらめるときは潔く。勝ち目ないから。と言ったが彼は、しばらく働いてもう一艇買うと言った。男だ。