K君は、埼玉県の群馬県との県境にある○×市という所で生まれ育ちました。
小さい頃は貧乏だったようで、母親はいつも内職をしていた記憶があります。
夏になると、お昼ごはんは1個何十円かの小玉西瓜でした。
蝉の声を聞きながら、内職をしている母親の隣で小玉西瓜をスプーンでいろんな形にしながら食べることが好きだったようです。
K君は西瓜も好きだったけれども、ハムカツも好きでした。その頃、10円だったようです。
ハムカツは、小学校への通学路の途中にある用水路に架けられている「あづま橋」という小さな橋の近くにある揚げ物屋で買っていました。
その頃のハムカツは、厚さが1mmほどで周囲が赤く着色された三角形のものでした。今食べたらけっして美味しいものではないはずです。
……………
ある日の夕方、父親が漕ぐ自転車の荷台に乗って銭湯に向かう途中、
その揚げ物屋で大好きなハムカツを買い、
荷台に乗ろうとしたとき、
買ったばかりの新聞紙にくるんだ温かいハムカツを、
父親が、突然手で叩き落としました。
ハムカツがゆっくりと地面に落ちていきます。
当時、K君は、何でハムカツを叩き落とされたのか判りませんでしたが、
今では、大して旨くもないペラペラのハムカツを、喜んで食べようとしている子供の姿に腹が立つとともに、自分の甲斐性のなさにも腹が立ったのだと思うようになりました。