冬を八重山で越そうと決めてからは、帰る気が全く起きなかった。
万が一という事も考えなくなっていた。
残り少なくなった預金は、食糧と、本と、キャンプ場代で消えていった。
キャンパーから教えてもらった、波照間島の農家に電話をした。
波照間にはハブがいないらしいし、日本最南端の島で働くという意外性が自分を惹きつけた。
断られたらどうしよう、とかは考えないようにした。
この人なら雇ってくれるかもしれないという、妙な予感があった。
そして・・・
OKが出た!
やった。これで何とかなるかもしれない。
まだ何もしていないのに、全てがうまく行くような錯覚すら起きそうだった。
K君やNT君他に報告した。
「お、良かったじゃん。まあ、ひと冬稼ごう。」
1996年がもうじき終わる。
「そうだ、年賀状を書こう。」
郵便局まで出かけて、年賀状を買った。
とりあえず、テントの中にある缶詰やら何やらを描く事にした。
全く干支に関係ない物を描いた。
自分が生きている事を報告できれば良いのだ。
出す相手はバラバラだから、同じ絵柄で十分なのだが、描く事を楽しみたかったので、1枚1枚違うイラストを描いている。
12月25日
誰が持ちかけたのは分からないが、皆でお金を出しあい、砂浜でパーティーをしようという事になった。
自分は流木を集めて、キャンプファイアの準備を手伝う。
料理の得意な人は、炊事場でケーキなどを作っていた。
夜になり、積まれた木に火が入った。
適当に仲の良い人としゃべりながら食べて飲んだ。
そのうち、酔いがまわったか、誰かがワーワーはしゃぎながら、近くにいるやつを無差別に捕まえて海に投げ込みだしだ。
驚嘆と、笑い声が半々。
オイオイ、こいつはやばいな。こっちはカメラを抱えている。
カメラごと投げ込まれたらたまった物ではない。
その後も何人かが次々に犠牲になっている。
女の子が投げ込まれて、ワンワン泣いている。
嫌がっているのに、そこまでしなくてもいいじゃないか・・・
それを見て自分は一気に冷めてしまった。
もういいやと思い、テントに帰り、真っ暗の中、一人でベートーベンの第九か何かのメロディを口ずさんでいた。
万が一という事も考えなくなっていた。
残り少なくなった預金は、食糧と、本と、キャンプ場代で消えていった。
キャンパーから教えてもらった、波照間島の農家に電話をした。
波照間にはハブがいないらしいし、日本最南端の島で働くという意外性が自分を惹きつけた。
断られたらどうしよう、とかは考えないようにした。
この人なら雇ってくれるかもしれないという、妙な予感があった。
そして・・・
OKが出た!
やった。これで何とかなるかもしれない。
まだ何もしていないのに、全てがうまく行くような錯覚すら起きそうだった。
K君やNT君他に報告した。
「お、良かったじゃん。まあ、ひと冬稼ごう。」
1996年がもうじき終わる。
「そうだ、年賀状を書こう。」
郵便局まで出かけて、年賀状を買った。
とりあえず、テントの中にある缶詰やら何やらを描く事にした。
全く干支に関係ない物を描いた。
自分が生きている事を報告できれば良いのだ。
出す相手はバラバラだから、同じ絵柄で十分なのだが、描く事を楽しみたかったので、1枚1枚違うイラストを描いている。
12月25日
誰が持ちかけたのは分からないが、皆でお金を出しあい、砂浜でパーティーをしようという事になった。
自分は流木を集めて、キャンプファイアの準備を手伝う。
料理の得意な人は、炊事場でケーキなどを作っていた。
夜になり、積まれた木に火が入った。
適当に仲の良い人としゃべりながら食べて飲んだ。
そのうち、酔いがまわったか、誰かがワーワーはしゃぎながら、近くにいるやつを無差別に捕まえて海に投げ込みだしだ。
驚嘆と、笑い声が半々。
オイオイ、こいつはやばいな。こっちはカメラを抱えている。
カメラごと投げ込まれたらたまった物ではない。
その後も何人かが次々に犠牲になっている。
女の子が投げ込まれて、ワンワン泣いている。
嫌がっているのに、そこまでしなくてもいいじゃないか・・・
それを見て自分は一気に冷めてしまった。
もういいやと思い、テントに帰り、真っ暗の中、一人でベートーベンの第九か何かのメロディを口ずさんでいた。