チェルノブイリ法が施行されて20年以上が経った今、その運用はどうなっているのか。
ソビエト連邦の崩壊ににより、ウクライナが全面的に補償することになりました。
ウクライナ政府は内戦の前から深刻な財政難に陥り、補償に充てる予算を
捻出できなくなっています。
現在、ウクライナで被災者に登録されている人は、213万2251人で人口の5%に当たります。
ウクライナの国家予算は1兆6000億円で、チェルノブイリ法で定められた補償を
全て実施すると、6600億円もかかります。これは国家予算の40%にのぼります。
しかし運用実態は大きくかけ離れ、2013年に実施されたのは、
国家予算の5%の900億円だった。
初代大統領レオニード・クラフチェクは、国防予算を削減した。
そして教育や科学よりも、チェルノブイリ法の被災者救済を優先させた。
しかし1990年代後半、世界的な経済危機がウクライナにも波及した。1990年のGDPを
100とすると、1999年には40まで落ち込み、当初の予定の3割しか支給できなくなっている。
チェルノブイリ法の実現をリードしたユーリ・シチェルバクは、初代環境大臣として
事態に直面した。
「(被災者のために)国が全ての土地を購入し、建物も作らなくてはいけないのです。
それは大変困難なことでした。1991~1996年までに、チェルノブイリの対策費に、
60億ドルを支出しました。これは国家予算の10%に相当します。
これは重い負担で、国の財政にとって困難なものだった」
スベロラーナ・ソバ副局長(チェルノブイリ問題担当局)は
「財政的に限界で、被災者はチェルノブイリ法で認められたものを受け取ることができず、
不満を抱いていた。しかし支払えないからといって、被災者の権利を縮小したり、
失くすことは出来ません。それは憲法違反になります」
経済危機の中、去年の暮れから始まったウクライナの反政府運動。2月には
首都キエフ中心部での銃撃戦に発展する。大統領は国外に逃亡した。。
2014年6月に就任したポロシェンコ大統領は、内戦の終結、経済の立て直しなど難題が
山積しているが、次のことをすると表明している。
これまで通りの補償をしていく。
被災者の予算を減らさないよう、あらゆる努力を行っていく。
憲法違反にならないよう、チェルノブイリ法の条文を守るようにしていく。
金がかかるからと言って、被災者を置き去りにはしない。
来年度予算の金額が減ることはない。
そして東部戦闘地域からの難民も、200家族受け入れている。
チェルノブイリ原発事故補償担当者は
「現在、わが国は戦争中です。多くの予算が戦費に取られています。
しかし混乱の中にあっても、被災者の支援を止めるわけにはいかない。
今後、支払いが遅れることが出てくるのではないかと心配している」
2011年ウクライナ政府報告書の中で、チェルノブイリ法の運用について検証している。
1996年に57%だった実施率が、2010年には14%にまで落ち込む。
人口の5%が被災者とされ、政府は補償と財政の板挟みになり、苦しみ続けている。
住民は補償金がわずかしか支給されなくなったため、汚染されていない食料を
買うことができなくなる。
「5~10年で(汚染が)少なくなるものもありますが、何百年も放射能を出し続ける物質からは
逃れられません。でも生きるためには(汚染された土地で作った物を)
食べるしかないのです」
「日々の給付金では何も買えません。それでも法律があるから、私たちは要求することが
できるのです。自分の権利を守るためには、やはりチェルノブイリ法だけなのです」
未曽有の事故から28年。政治や経済のはざまで、被災者の救済は揺り動かされて来た。
それでもチェルノブイリ法という法律が、国家による補償を繋ぎとめて来た。
その経験から、私たちは何を学ぶことができるのか。
ウラジーミル・ヤボリフスキー(チェルノブイリ委員会議長)
「原発の大きな事故で被災した人は、何らかの補償を受ける権利があると思います。
でも法律は考え抜かれたものでなくてはならず、国家の財源に立脚したものでなくては
ならないと私たちは学びました。実際に多くの資金が必要です。でも金がかかるからと
言って、被災者を置き去りにして何事もなかったというわけにはいきません。
今になってみると、この法律が理想的だとはいえません。でも当時は、被災者の
心理的な面だけでも、国の政治的な面でも必要なものでした。
ウクライナの社会に安心をもたらしたのは確かです」
一度事故が起きれば、補償が長期に及ぶことも強調された。
ビクトル・バリヤフテル博士(チェルノブイリ委員会委員)
「このような法律を作る場合には、人々と誠実に向き合い、人の一生を補償する覚悟で
作るべきなのだと思います。さらに実際に被災した第一世代のためだけではなく、
それに続く第二、第三世代を考慮して作るべきだ。この教訓を福島に活かして欲しい」
ユーリ・シチェルバク(ウクライナ環境大臣)
「一にも二にも重要なのは、被災地の住民を保護することです。
法律を作る際には、はっきりどこが被災地かという範囲、どこまでが被災者の権利か
ということを明記しなくてはいけません。それに付け加えて重要なことは、
被災者のための予算をどう捻出するか。
他の予算とは別に、被災者のための予算を確保することです。私たちが苦しみの末に
得たこの経験を日本の皆さんに活かして欲しいと、心から願っています」
事故を起こしたチェルノブイリの廃炉には、100年以上の時を要します。
そして被災した人々の補償も永く続きます。国家はどこまでその責任を果たせるのか。
ウクライナの歩みは、被災者と向き合う国の覚悟を問うている。
私の感想
この番組を観て、日本との違いを痛感した。
東電は、政府は、ウクライナのように被災者と向き合って来ただろうか。
その場しのぎの処理で終わっていないだろうか。
被災者の痛みを、将来を、真摯に考えて、これからの補償を考えて欲しい。
東電が、政治家が、産業界が、何の瑕疵もない住民のこれまでの生活の全てを奪ったのだから、
自らの事として、ありったけの誠意を見せて欲しい。
また、ウクライナにはこれだけの議事録が残っているのに、なぜ日本では議事録を録らないと
いうことが起こるのだろうか。
このような悲劇を二度と起こさないためにも、日本で起きたことを全て遺し、
世界に発信して欲しい。
私は歴史のことはよく解らないが、本来ソビエト連邦が支払うべき事故の補償金を、
ロシアではなく、ウクライナが補償しているということを考えれば、どうしてあのような
ウクライナ危機が起きるのだろうか。
チェルノブイリ法を懸命に守ろうとするウクライナが、ますます危機的な状況に
陥ってしまうのではないかと危惧している。
最後に、すでに取り組んでいるのかもしれないが、「チェルノブイリ法」を参考にして、
誰にでも分かる言葉で、志をもって、将来を見据えた「フクシマ法」のような
法律を作って欲しいと、切に願う。
*役職はすべて当時のものです。
この放送をブックマークに入れましたので、興味のある方はブログの一番右下の
「原発事故・・」をクリックして下さい。
追記1
福島第一原子力発電所のその後の事故処理にいついて、マスコミは殆ど報道していない。
箝口令が敷かれているのだろうか。
「小出裕章ジャーナル」で、今の汚染の実態が語られている。
放射線量が高すぎて全て遠隔操作で行っているが、ロボットアームの操作ミスなどがあり
想像を絶する汚染の可能性があるらしい。
(ストロンチウム90が1億4600ベクレルなどが漏れ出す)
ブックマークに入れましたので、興味のある方はご覧ください。
(2014年10月1日 記)
ソビエト連邦の崩壊ににより、ウクライナが全面的に補償することになりました。
ウクライナ政府は内戦の前から深刻な財政難に陥り、補償に充てる予算を
捻出できなくなっています。
現在、ウクライナで被災者に登録されている人は、213万2251人で人口の5%に当たります。
ウクライナの国家予算は1兆6000億円で、チェルノブイリ法で定められた補償を
全て実施すると、6600億円もかかります。これは国家予算の40%にのぼります。
しかし運用実態は大きくかけ離れ、2013年に実施されたのは、
国家予算の5%の900億円だった。
初代大統領レオニード・クラフチェクは、国防予算を削減した。
そして教育や科学よりも、チェルノブイリ法の被災者救済を優先させた。
しかし1990年代後半、世界的な経済危機がウクライナにも波及した。1990年のGDPを
100とすると、1999年には40まで落ち込み、当初の予定の3割しか支給できなくなっている。
チェルノブイリ法の実現をリードしたユーリ・シチェルバクは、初代環境大臣として
事態に直面した。
「(被災者のために)国が全ての土地を購入し、建物も作らなくてはいけないのです。
それは大変困難なことでした。1991~1996年までに、チェルノブイリの対策費に、
60億ドルを支出しました。これは国家予算の10%に相当します。
これは重い負担で、国の財政にとって困難なものだった」
スベロラーナ・ソバ副局長(チェルノブイリ問題担当局)は
「財政的に限界で、被災者はチェルノブイリ法で認められたものを受け取ることができず、
不満を抱いていた。しかし支払えないからといって、被災者の権利を縮小したり、
失くすことは出来ません。それは憲法違反になります」
経済危機の中、去年の暮れから始まったウクライナの反政府運動。2月には
首都キエフ中心部での銃撃戦に発展する。大統領は国外に逃亡した。。
2014年6月に就任したポロシェンコ大統領は、内戦の終結、経済の立て直しなど難題が
山積しているが、次のことをすると表明している。
これまで通りの補償をしていく。
被災者の予算を減らさないよう、あらゆる努力を行っていく。
憲法違反にならないよう、チェルノブイリ法の条文を守るようにしていく。
金がかかるからと言って、被災者を置き去りにはしない。
来年度予算の金額が減ることはない。
そして東部戦闘地域からの難民も、200家族受け入れている。
チェルノブイリ原発事故補償担当者は
「現在、わが国は戦争中です。多くの予算が戦費に取られています。
しかし混乱の中にあっても、被災者の支援を止めるわけにはいかない。
今後、支払いが遅れることが出てくるのではないかと心配している」
2011年ウクライナ政府報告書の中で、チェルノブイリ法の運用について検証している。
1996年に57%だった実施率が、2010年には14%にまで落ち込む。
人口の5%が被災者とされ、政府は補償と財政の板挟みになり、苦しみ続けている。
住民は補償金がわずかしか支給されなくなったため、汚染されていない食料を
買うことができなくなる。
「5~10年で(汚染が)少なくなるものもありますが、何百年も放射能を出し続ける物質からは
逃れられません。でも生きるためには(汚染された土地で作った物を)
食べるしかないのです」
「日々の給付金では何も買えません。それでも法律があるから、私たちは要求することが
できるのです。自分の権利を守るためには、やはりチェルノブイリ法だけなのです」
未曽有の事故から28年。政治や経済のはざまで、被災者の救済は揺り動かされて来た。
それでもチェルノブイリ法という法律が、国家による補償を繋ぎとめて来た。
その経験から、私たちは何を学ぶことができるのか。
ウラジーミル・ヤボリフスキー(チェルノブイリ委員会議長)
「原発の大きな事故で被災した人は、何らかの補償を受ける権利があると思います。
でも法律は考え抜かれたものでなくてはならず、国家の財源に立脚したものでなくては
ならないと私たちは学びました。実際に多くの資金が必要です。でも金がかかるからと
言って、被災者を置き去りにして何事もなかったというわけにはいきません。
今になってみると、この法律が理想的だとはいえません。でも当時は、被災者の
心理的な面だけでも、国の政治的な面でも必要なものでした。
ウクライナの社会に安心をもたらしたのは確かです」
一度事故が起きれば、補償が長期に及ぶことも強調された。
ビクトル・バリヤフテル博士(チェルノブイリ委員会委員)
「このような法律を作る場合には、人々と誠実に向き合い、人の一生を補償する覚悟で
作るべきなのだと思います。さらに実際に被災した第一世代のためだけではなく、
それに続く第二、第三世代を考慮して作るべきだ。この教訓を福島に活かして欲しい」
ユーリ・シチェルバク(ウクライナ環境大臣)
「一にも二にも重要なのは、被災地の住民を保護することです。
法律を作る際には、はっきりどこが被災地かという範囲、どこまでが被災者の権利か
ということを明記しなくてはいけません。それに付け加えて重要なことは、
被災者のための予算をどう捻出するか。
他の予算とは別に、被災者のための予算を確保することです。私たちが苦しみの末に
得たこの経験を日本の皆さんに活かして欲しいと、心から願っています」
事故を起こしたチェルノブイリの廃炉には、100年以上の時を要します。
そして被災した人々の補償も永く続きます。国家はどこまでその責任を果たせるのか。
ウクライナの歩みは、被災者と向き合う国の覚悟を問うている。
私の感想
この番組を観て、日本との違いを痛感した。
東電は、政府は、ウクライナのように被災者と向き合って来ただろうか。
その場しのぎの処理で終わっていないだろうか。
被災者の痛みを、将来を、真摯に考えて、これからの補償を考えて欲しい。
東電が、政治家が、産業界が、何の瑕疵もない住民のこれまでの生活の全てを奪ったのだから、
自らの事として、ありったけの誠意を見せて欲しい。
また、ウクライナにはこれだけの議事録が残っているのに、なぜ日本では議事録を録らないと
いうことが起こるのだろうか。
このような悲劇を二度と起こさないためにも、日本で起きたことを全て遺し、
世界に発信して欲しい。
私は歴史のことはよく解らないが、本来ソビエト連邦が支払うべき事故の補償金を、
ロシアではなく、ウクライナが補償しているということを考えれば、どうしてあのような
ウクライナ危機が起きるのだろうか。
チェルノブイリ法を懸命に守ろうとするウクライナが、ますます危機的な状況に
陥ってしまうのではないかと危惧している。
最後に、すでに取り組んでいるのかもしれないが、「チェルノブイリ法」を参考にして、
誰にでも分かる言葉で、志をもって、将来を見据えた「フクシマ法」のような
法律を作って欲しいと、切に願う。
*役職はすべて当時のものです。
この放送をブックマークに入れましたので、興味のある方はブログの一番右下の
「原発事故・・」をクリックして下さい。
追記1
福島第一原子力発電所のその後の事故処理にいついて、マスコミは殆ど報道していない。
箝口令が敷かれているのだろうか。
「小出裕章ジャーナル」で、今の汚染の実態が語られている。
放射線量が高すぎて全て遠隔操作で行っているが、ロボットアームの操作ミスなどがあり
想像を絶する汚染の可能性があるらしい。
(ストロンチウム90が1億4600ベクレルなどが漏れ出す)
ブックマークに入れましたので、興味のある方はご覧ください。
(2014年10月1日 記)