今日のうた

思いつくままに書いています

短歌のまとめ Ⅲ

2021-02-06 09:44:10 | ⑯第一歌集 『ふたりご』・その他
(5)朝日歌壇

①2005年11月14日 高野公彦選
ひゅるひゅると気管支の鳴る秋の夜は母の胸にて泣きたきものを

②2007年3月5日 高野公彦選
雪に顔を埋(うづ)めて草を食(は)みてゐる
 寒立馬(かんだちめ)の背(せな)湯気立ちのぼる

③2010年2月15日 永田和宏選 佐佐木幸綱選
小沢氏を囲む鋭き四つの眼みぎにひだりに水平移動す

永田和宏 評
記者のインタビューを受けることの多い小沢氏を詠うが、イデオロギーが
先立つのではなく、画面の中での思わぬ発見が新鮮だ。
佐佐木幸綱 評
資金管理団体をめぐる事件で連日テレビニュースに登場した小沢一郎幹事長。
警備の人の目の動きを表現した下句が独特。

④2011年1月24日 永田和宏選
映らねば上をたたきし日のありきテレビは家族のまん中に居た

(6)朝日新聞千葉版 歌壇 藤田武 推薦
藤田さんは「潮音」と「環」に所属していました。私が所属していた「塔」とは
歌風が違います。「塔」では採ってもらえない歌も、採ってくださいました。
いろいろと冒険ができて楽しかったです。
2014年にお亡くなりになっていたことを知りました。

①2006年10月11日 
うつむきて待ちゐるわれの視界へとひらひら君の手が現れき

②2006年11月22日
うす紅の絞りのやうなあかまんま二十歳(はたち)の恋を秘めて生き来し

③2017年1月17日
身のおくか熱の生(あ)れきて耳たぶのふるへ始むる新月の夜

④2007年1月31日
愛しさの風化するまであとすこしメタセコイアの針の葉を踏む

⑤2007年2月15日
昨夜(よべ)ゆめに顕(た)ちて口づけ迫りたる男が電車の向かひに坐る

⑥2007年12月5日
ふくらみに沿ひてうぶ毛のひかりゐる電車に眠る少女の胸は

藤田武 評
電車のなかで無心に眠る少女の胸のふくらみに沿ってのうぶ毛の
ひかるさまに、作者は掛け替えのない生命の尊さを、美しさを見出したので
あろう。あるいはそこに母の眼が重ねられていたのかもしれない。
作者の眼もまた純一である。

⑦2007年12月19日
マスカラをつけゐる人の眼球は哀しみをもつ石となりゆく

⑧2008年1月9日
絵の隅にくれなゐのすぢ過(よぎ)りゐるムンクのあら血を塗りこめたるか

⑨2008年1月23日
柚子の香の残るわが腕撫でをれば子のわれになきごとくさびしき

⑩2008年3月12日
ヒマラヤの岩塩ふふむわが舌に太古の海のまろきしほあぢ

⑪2008年3月26日
酒々井(しすい)とふ淋しきひびきのふるさとよ父はお酒を愛し憎みき

⑫2008年5月21日
白髪のなびくがごとく風にのり吉野の谷にさくら散りゆく

⑬2008年6月4日
原つぱの土管の中にまどろめり遠くにわれを呼ぶこゑがして

⑭2008月8月6日
わが胸に風ゆく道のあるらしも淋しき時はひゆうひゆうと響(な)る

⑮2008月10月1日
ウォーキングをしたる日の夜(よ)の体(からだ)から
 獣がにほふ鏡のまへは

⑯2008年10月15日
曼殊沙華(まんじゆしやげ)のまつ赤な花が咲いてゐた
 おもひですくなきはたちの恋は

(7)千葉市民芸術祭
藤田さんからのお誘いで出詠しました。

①2007年3月11日 藤田武選 2位
蠟梅(らふばい)の香を封じおく小瓶欲し夜具にしのばせ君を待たむと

②2007年10月21日 日高堯子(ひたかたかこ)選 9位
夕畑に紋白蝶のあまた飛び草ひくわれの肌に触れゆく

③2008月3月9日 千葉市教育委員会教育長賞
久々湊盈子選 1位、久我田鶴子選 2位、藤田武選 10位
葱坊主のうす皮ごしに花の見ゆ はちきれさうな少女のふともも

④2008年10月19日 藤田武選 4位、久我田鶴子選 10位
畑なかの支柱は白き軍手はめ「プレーボール」と夏空に告ぐ

(8)朝日川柳
①2012年7月10日
反原発 万のクラゲが加勢する

※2012年7月9日、大飯原発3号機がフル稼働の状態になったが、
 8日からクラゲが大量発生し、出力が低下する事態が起きた。
 クラゲ、ありがとう!

②2013年11月12日
川柳で逮捕者のでる近未来

③2014年1月9日
★ 重箱にごまめの歯ぎしり残りけり

(敬称略 多少変更しているものもあります)


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