今日のうた

思いつくままに書いています

ライオンのおやつ

2021-04-22 10:28:01 | ③好きな歌と句と詩とことばと
小川糸著『ライオンのおやつ』を読む。本を開くと字が薄い。
もしかして視力が落ちたのでは、と慌てて別の本を開くと
いつもの濃さだった。
読み終わって作者の趣旨がわかった。

33歳で余命宣告を受けた女性が、瀬戸内海にあるホスピス
「ライオンの家」に移り住む。
暗い内容を想像しがちだが、小説全体がやわらかい光をまとっている
ようで、それでいて押しつけがましさはなく、満たされた気分になる。

毎日、目の前に人参をぶら下げて、それを楽しみに生きる。
主人公は朝に出るお粥や、日曜日に出るおやつを楽しみにしている。
「レモン島」というだけあって、島全体にレモンの香りがするようだ。
新型コロナで気持ちが萎えている今、読みながら心が少し軽くなった。

追記
午前中に上の文章を書いてから、何か違和感があった。
この小説は「死が怖くなくなる物語」だと言う。
新型コロナは未知の病だが、死も未知のものだ。
未知のものへの恐怖は計り知れないものがある。私は死が怖い。

この小説は全てが解りやす過ぎるのだ。
まるでハウツーもののように、死を扱っていると言えなくもない。
私がへそ曲がりなのかもしれないが、この小説には毒がない
食べやすくやわらかい、やさしい味だけで出来ている。
小豆を煮る時に塩をひとつまみ加えるように、もうひと味欲しいと思った。

コメント
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