今日のうた

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自転しながら公転する

2022-07-11 05:05:50 | ③好きな歌と句と詩とことばと
山本文緒著『自転しながら公転する』を読む。
山本文緒氏の作品を読んだのは、2021年に彼女が亡くなってからだ。
アメリカのロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のギタリスト、エドワード・
ヴァン・ヘイレンを知ったのも、2020年に彼が亡くなってからだ。
亡くなって素晴らしさに気づくのは、何ともやるせない。

この小説を読んで一番に感じたのは、気負いがないということだ。
登場人物は誰もが憧れるような容姿や職業ではなく、住まいは茨城県にある。
窓からは牛久大仏が見え、主人公の母はおめかしして友人と
牛久シャトーと思われるレストランでワインを楽しむ。
そこでの主人公や周りの人たちとの日常が淡々と描かれている。
細部をリアルに描くことで、読者はどっぷりその世界に浸ることができる。
そしてまるで主人公が自分の知り合いのように心配したり、「そこは
ダメ!」と忠告したりしたくなる。

小説はいつの間にか主人公が入れ替わっていたりするので気が抜けない
そして読み終わって初めて、小説の全体の骨格が分かる。
プロローグの結婚式は、エピローグの結婚式で見事に裏切られる。
自分にとって大切なものは何なのか、人を好きになるのはこんなにも
つらいものなのか・・・と泣けた。

心に響いた言葉を2つ引用させて頂きます。
日本は20年もの間賃金が上がらず、手取りはむしろ減っている。
その上1200兆円もの借金大国・日本で、若者はこれからどうやって
生きていくのだろう。
先が見えている私たちとは違って、これから何十年も生きていかな
ければならない若者に、「日本になどこだわることはない。どこに
行っても生きていけるスキルを身につけて!」と言いたい。
それにしても、2040年を見据えた作者の慧眼に、さもありなんと思った。

①でもそれよりも、静かに枯れて色を失くしていくこの国にいるより、
 天に向かう竜巻のような国へ飛び込みたい、という気持ちが一番大きい
 かもしれなかった。
 二年後の二〇四〇年、ベトナムの人口はとうとう日本を上回った。
 私が四歳のときには日本の三人にひとりが六十五歳以上の超高齢化社会
 となった。その後、地滑りを起こすように地方自治体の多くが破綻し、
 老人ホームも病院も足りなくなって、世界的に見ても福祉の悪化が問題
 となった。ニュースは過疎化、地方の荒廃、人手不足というワードを
 繰り返した。
 私の世代は学校を出たら海外で働くつもりの人がクラスの半分以上だった。
 中国やインドで働くことが生きていく手段として妥当だと考える人は多い。
 私もベトナム料理に出会うまでは、なんとなくどちらかの国に働きに
 行こうと思っていた。日本はエリート以外はろくな職がなかった。
 賃金は安く社会保険料は高く、それこそ子供など夢のまた夢のような
 生活しか送れない。

②「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって
  思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。
  思い通りにはならないものよ」         (引用ここまで)

追記
この小説がドラマ化され、3話完結で読売テレビで放送されます。
私が期待している藤原季節が出演するのが楽しみです。

放送日時は
2023年12月14日(木)11:59(PM)~
    12月21日(木)11:59(PM)~
    12月28日(木)11:59(PM)~

舞台は茨城県です。
私は茨城県に近い千葉県に住んでいます。
そのせいか「ちばらぎ県」とも呼ばれています。
「牛久大仏」も「牛久シャトー」も身近にあるし、
地震速報も千葉県のではなく、茨城県北西部を見る方が確かです。

腑に落ちないのは、以前は「いばらぎけん」と呼んでいたのに
いつの間にか「いばらきけん」と呼ばれるようになったことです。
以前はいばらぎ=茨城、いばらき=茨木だったのに、
今はいばらきでも茨城と変換されるようになったことです。
濁音はダサいとでも思っているのでしょうか。
茨城県に筑波学園都市が出来たからでしょうか。
私の中では、いばらぎ=茨城、いばらき=茨木のままです。
(2023年12月9日 記)
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