長尾和宏著『安楽死特区』を読む。
現在、大西氏の命の選別発言が問題になっているので、興味深く読んだ。
この小説は2020東京オリンピックが終わった後の、荒廃した
日本を描いている。あの人とおぼしき政治家が出てきたりして、
「さもありなん」とやけにリアルで、ぞっとする。
この小説が出版されたのは2019年12月、新型コロナウィルス感染前
なので、現実の日本の悲惨さはこれを上回ることになるかもしれない。
心に残った言葉を引用させて頂きます。
東京オリンピック以降、日本は本当に貧しくなった。
とうとう国会は、75歳以上の透析(とうせき)治療を一律に保険適応
から外すことを決議した。・・・
そんななかで末期がん患者のための光免疫療法が保険適応になったら、
透析患者はもっと怒るだろう。病気によって差別があってはならないと。
しかし、光免疫療法はそんなに効果があるのだろうか。今までもそんな
夢みたいなことを謳(うた)ってにわかに患者を期待させ、気がつけば
世間から忘れられている治療法はいくらでもあった。
平成が終わって早5年、世界的に医療技術は発展している。最近は中国や
インドからも瞠目(どうもく)するような研究発表が続いている。
そのせいか、中国人の日本への医療ツーリズムも最近は影を潜めつつある。
特にオリンピックの後、日本人の健康格差は中国を嗤(わら)えない状況に
ある。国民皆保険はかろうじて続いているが、企業年金制度はほぼ破綻状態、
若い世代において保険料未払いは増える一方である。新しい薬の開発が進ん
でも、なかなか保険適応にならないから市民の手には届かない。
先日の大手新聞社のアンケートでは、この国に希望を感じないと答える
20代が8割、百歳まで生きたくないと答えた70代以上も8割に上った
という。生涯未婚率も上がる一方であり、5年前は年間4万人といわれていた
孤独死は、今や10万人超と言われている。
副編集長の話
「まだここだけの話ということで〈安楽死特区〉構想についてざっくり
説明しますね。国家は、安楽死法案を通そうと目論んでいますよ。なぜなら、
社会保障費で国が潰れそうだからです。しかし国民皆保険はどうしても
維持したい。それならば、長生きしたくない人に早く死んでもらった
ほうがいい、そう考えています。
だから本格的に法制化を議論する前に、今現在、病気に苦しむ、もう
これ以上生きていたくないという人を若干名募集し、実験的に都内に
〈安楽死特区〉を作ろうと。
来年早々、特区構想は実現化します。そうでもしなきゃ、東京オリンピック
の財政的な失敗を未だ国も都も尻拭い出来ずにいる今、日本は社会保障費で
崩壊しかねない。これ以上は消費税も上げられないですし、だからといって
法人税を上げる気は、与党には毛頭ないですからね。国民皆保険制度撤廃
では選挙に勝てない。だから、あ・ん・ら・く・し。これが社会保障費
削減の本丸になったんですよ」 2につづく
現在、大西氏の命の選別発言が問題になっているので、興味深く読んだ。
この小説は2020東京オリンピックが終わった後の、荒廃した
日本を描いている。あの人とおぼしき政治家が出てきたりして、
「さもありなん」とやけにリアルで、ぞっとする。
この小説が出版されたのは2019年12月、新型コロナウィルス感染前
なので、現実の日本の悲惨さはこれを上回ることになるかもしれない。
心に残った言葉を引用させて頂きます。
東京オリンピック以降、日本は本当に貧しくなった。
とうとう国会は、75歳以上の透析(とうせき)治療を一律に保険適応
から外すことを決議した。・・・
そんななかで末期がん患者のための光免疫療法が保険適応になったら、
透析患者はもっと怒るだろう。病気によって差別があってはならないと。
しかし、光免疫療法はそんなに効果があるのだろうか。今までもそんな
夢みたいなことを謳(うた)ってにわかに患者を期待させ、気がつけば
世間から忘れられている治療法はいくらでもあった。
平成が終わって早5年、世界的に医療技術は発展している。最近は中国や
インドからも瞠目(どうもく)するような研究発表が続いている。
そのせいか、中国人の日本への医療ツーリズムも最近は影を潜めつつある。
特にオリンピックの後、日本人の健康格差は中国を嗤(わら)えない状況に
ある。国民皆保険はかろうじて続いているが、企業年金制度はほぼ破綻状態、
若い世代において保険料未払いは増える一方である。新しい薬の開発が進ん
でも、なかなか保険適応にならないから市民の手には届かない。
先日の大手新聞社のアンケートでは、この国に希望を感じないと答える
20代が8割、百歳まで生きたくないと答えた70代以上も8割に上った
という。生涯未婚率も上がる一方であり、5年前は年間4万人といわれていた
孤独死は、今や10万人超と言われている。
副編集長の話
「まだここだけの話ということで〈安楽死特区〉構想についてざっくり
説明しますね。国家は、安楽死法案を通そうと目論んでいますよ。なぜなら、
社会保障費で国が潰れそうだからです。しかし国民皆保険はどうしても
維持したい。それならば、長生きしたくない人に早く死んでもらった
ほうがいい、そう考えています。
だから本格的に法制化を議論する前に、今現在、病気に苦しむ、もう
これ以上生きていたくないという人を若干名募集し、実験的に都内に
〈安楽死特区〉を作ろうと。
来年早々、特区構想は実現化します。そうでもしなきゃ、東京オリンピック
の財政的な失敗を未だ国も都も尻拭い出来ずにいる今、日本は社会保障費で
崩壊しかねない。これ以上は消費税も上げられないですし、だからといって
法人税を上げる気は、与党には毛頭ないですからね。国民皆保険制度撤廃
では選挙に勝てない。だから、あ・ん・ら・く・し。これが社会保障費
削減の本丸になったんですよ」 2につづく