収録作品は「SSとバネ人間」「コントラバス物語」「草原の歌」「楽しいサーカス」「フルヴィーネクのサーカス」「情熱」の6作品。例によって記憶を頼りに書いているので、タイトルは微妙に違っているかもしれません。
この第三巻には、トルンカお馴染みの人形アニメの他に、セルを使った初期作品や切り絵アニメが収められており、また作品の数も6つと多めなので、最もバラエティに富んだ巻になっています。
「SS」はナチスをおちょくったようなモノクロのセルアニメ。バネを足に取り付けた煙突掃除夫がぴょんぴょん跳ねながらナチス(タイトルに「SS」が入っているからナチス親衛隊か)を翻弄し、彼らに逮捕された人々(や小鳥)を解放します。注目は人物の動き。どこか「べディ・ブープ」を思わせる粘着性の非常に伸びのある動作に驚かされます。トルンカはセルでもけっこういけるではないか。
「コントラバス物語」はチェーホフの小説が原作だそうですが、覚えがありませんでした。で、たった今読んでみました(全集を持っているのです)。小説とアニメとでは、大体の筋は同じ。当然と言えば当然ですが。しかし、小説の方がおもしろいですね。好みの問題かもしれませんが、しかしチェーホフの小説の方がテンポがあって、場面の切り替えもスピーディ。ユーモアもたっぷりあります。ところがアニメはいささかスローテンポで、そもそもストーリーが掴みにくいのです。一切の台詞を排していることがこのような分かりにくさを生じてさせていることは明白で、重要な箇所には台詞を挿入してもよかったのではないかと思います。そうでなければ人物にもっと極端な芝居をさせるとか(服を盗まれたと知ったコントラバス奏者は、大袈裟に服を探す仕草をするべきでは?)。
「草原の歌」は西部劇もので、この作品集の中では最もエンターテインメント性の強い作品。お決まりのキャラにお決まりのストーリーで、お決まりの結末。馬車に乗っていた美女が盗賊の一味に襲われて、そこをカウボーイが助け、盗賊のボスと一騎打ち。これに勝利して、最後はめでたしめでたし。歌で愛情表現するのはおもしろいですね。オペラみたいで。この作品は世界初の「人形アニメによるスピード表現」を成功させたものとして称賛されるべきであるようです。ぼくとしては、御者の隣に座っていた男が投げ捨てた空き瓶の横を馬車が通り過ぎてゆくシーンがツボでした。空き瓶を小道具にして疾走感を演出している(おまけに抒情性すら感じました)。あれはいい。それと、盗賊のボスとの戦いも、ひねりが効いていてけっこうよかったです。あの自滅っぷりがね。
「楽しいサーカス」は切り絵アニメ。だと思います。これはサーカスを単にアニメーション化しただけ。
「フルヴィーネクのサーカス」は有名な作品ですよね。フルヴィーネクというのは「人形劇の父」と呼ばれるヨセフ・スクーパが創造したキャラクターで、ポヤールの作品にも出演しています(「探偵シュペイブル」)。怪我をしたフルヴィーネク少年が夢の中でサーカスの舞台に立って様々な演目をこなしてゆく…。ポヤールの作品よりはこっちの方がぼくは好きです。
「情熱」は、走るものに拘りを見せる赤ん坊が少年、青年と大きくなってゆく、その過程を描いた作品。彼は特にスピードに関心があり、そのせいで大怪我をします。たしかスピード狂の自転車乗りを描いた短編アニメーションが他にもあったはずですが、名前を失念。ちなみにポヤールの「飲みすぎた一杯」もスピード狂の悲劇を描いた作品。これはほとんど「禁酒キャンペーン」の一環みたいなアニメですが、そのスピード表現はポヤールの面目躍如たるものがあります。
さて、これでⅠ~Ⅲ巻まで鑑賞が終了。ちょっとした充実感。もうすぐメディア芸術祭も始まるので、2月の上旬まではアニメ祭りが続きそうです。
この第三巻には、トルンカお馴染みの人形アニメの他に、セルを使った初期作品や切り絵アニメが収められており、また作品の数も6つと多めなので、最もバラエティに富んだ巻になっています。
「SS」はナチスをおちょくったようなモノクロのセルアニメ。バネを足に取り付けた煙突掃除夫がぴょんぴょん跳ねながらナチス(タイトルに「SS」が入っているからナチス親衛隊か)を翻弄し、彼らに逮捕された人々(や小鳥)を解放します。注目は人物の動き。どこか「べディ・ブープ」を思わせる粘着性の非常に伸びのある動作に驚かされます。トルンカはセルでもけっこういけるではないか。
「コントラバス物語」はチェーホフの小説が原作だそうですが、覚えがありませんでした。で、たった今読んでみました(全集を持っているのです)。小説とアニメとでは、大体の筋は同じ。当然と言えば当然ですが。しかし、小説の方がおもしろいですね。好みの問題かもしれませんが、しかしチェーホフの小説の方がテンポがあって、場面の切り替えもスピーディ。ユーモアもたっぷりあります。ところがアニメはいささかスローテンポで、そもそもストーリーが掴みにくいのです。一切の台詞を排していることがこのような分かりにくさを生じてさせていることは明白で、重要な箇所には台詞を挿入してもよかったのではないかと思います。そうでなければ人物にもっと極端な芝居をさせるとか(服を盗まれたと知ったコントラバス奏者は、大袈裟に服を探す仕草をするべきでは?)。
「草原の歌」は西部劇もので、この作品集の中では最もエンターテインメント性の強い作品。お決まりのキャラにお決まりのストーリーで、お決まりの結末。馬車に乗っていた美女が盗賊の一味に襲われて、そこをカウボーイが助け、盗賊のボスと一騎打ち。これに勝利して、最後はめでたしめでたし。歌で愛情表現するのはおもしろいですね。オペラみたいで。この作品は世界初の「人形アニメによるスピード表現」を成功させたものとして称賛されるべきであるようです。ぼくとしては、御者の隣に座っていた男が投げ捨てた空き瓶の横を馬車が通り過ぎてゆくシーンがツボでした。空き瓶を小道具にして疾走感を演出している(おまけに抒情性すら感じました)。あれはいい。それと、盗賊のボスとの戦いも、ひねりが効いていてけっこうよかったです。あの自滅っぷりがね。
「楽しいサーカス」は切り絵アニメ。だと思います。これはサーカスを単にアニメーション化しただけ。
「フルヴィーネクのサーカス」は有名な作品ですよね。フルヴィーネクというのは「人形劇の父」と呼ばれるヨセフ・スクーパが創造したキャラクターで、ポヤールの作品にも出演しています(「探偵シュペイブル」)。怪我をしたフルヴィーネク少年が夢の中でサーカスの舞台に立って様々な演目をこなしてゆく…。ポヤールの作品よりはこっちの方がぼくは好きです。
「情熱」は、走るものに拘りを見せる赤ん坊が少年、青年と大きくなってゆく、その過程を描いた作品。彼は特にスピードに関心があり、そのせいで大怪我をします。たしかスピード狂の自転車乗りを描いた短編アニメーションが他にもあったはずですが、名前を失念。ちなみにポヤールの「飲みすぎた一杯」もスピード狂の悲劇を描いた作品。これはほとんど「禁酒キャンペーン」の一環みたいなアニメですが、そのスピード表現はポヤールの面目躍如たるものがあります。
さて、これでⅠ~Ⅲ巻まで鑑賞が終了。ちょっとした充実感。もうすぐメディア芸術祭も始まるので、2月の上旬まではアニメ祭りが続きそうです。