Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

図書館でもらった本のこととか

2009-07-05 01:10:32 | 文学
図書館に行ってリサイクル図書を頂いてきました。もらったのは、

網野善彦『日本中世の民衆像』
石井美樹子『中世劇の世界 よみがえるイギリス民衆文化』
ジュヌヴィエーヴ・セロー『ヌゥヴォ・テアトルの歴史』
アレクサンドル・ゲルシコヴィチ『リュビーモフのタガンカ劇場』

という4冊。
別に狙ったわけではないのに、「中世」と「演劇」がキーワードの本になってしまいました。セローという人の本は、ベケットやイヨネスコ、アダモフらの解説が載っていたので頂きました。この本の著者のことは全く知らないのですが、まあとりあえず。でもちょっと記述が古いかな?

タガンカ劇場というのはロシアでは有名で、日本では一風変わったチェーホフ劇を上演したことでも知られています。タガンカ劇場の芝居について、一つ一つ劇評を紹介したり著者の感想を書いたりしている本のようです。役に立つかどうか分かりませんが、やっぱりまあとりあえず。

中世劇に興味があるわけではありませんが、ハルムスが民衆演劇に影響を受けているんじゃないか、という指摘があるので、もらっておきました。もっとも、この本に書かれているのはイギリスで、ハルムスはロシア人ですけど。たしかボガトゥイリョフがチェコの民主演劇だか人形劇だかについて書いている本は昔読んだんですけどね(中味は忘れましたが)。そっちの方がむしろ参考になるかもしれません。ロシアの民衆演劇の本?さあ、そんな本あるのかどうかすら知りません。探そうと思ったこともないという体たらく。もし翻訳が出てたら誰か教えてください。ロシア語で読めよ、という声がどこかから…

有名な網野善彦の本は、いつか読んでみたいと思っていました。中世の職人のあり方についての考察は、当時画期的なものだったらしいですね。たしか。ただ、基本的に関心の薄い(知識もない)分野ですので、退屈せずに読みとおせるかどうか。3年後くらいに読むかも?もちろん、生きてたらね。

閑話休題。
朝日新聞に月いち連載している池澤夏樹のエッセー、おもしろいです。特に先月のが出色の出来栄えでした。以前に連載していた小説『静かな大地』がよかったので、注目している現代作家ではあったのですが、2、3年前にあるアニメーション映画について述べた文章に反発してしまって、インテリぶってんのかなあ、などと彼のことをしばらく悪く思っていたのですが、このエッセーで再び注目するようになりました。文章がうまい、とかではなく(それは無論そうではあるのですが)、独自の視点からなされる文化論が興味深かったのです。先月のはその地域特有の言葉、特に動詞から、その地域の習俗を推測できる、という内容で、アイヌなどが使っていた奇妙な動詞を列挙していましたが、ぼくは感心してしまいました。言葉と世界との結び付きという観点自体はそう目新しいものではないばかりか、いささか古びてさえいるのですが、このように具体例を出し、また自らの思考でそのことを語っている点に好感を持ったのです。これほど優れた論考にはそうお目にかかれるものではないので、驚きました。

それに引き換え、先日の文芸時評だかなんだかはひどかったです。最近の小説からは定まった構造を抽出できて、しかもそれらは男性目線で書かれている、というような内容だったのですが、だから何?と思ってしまって。構造主義とフェミニズム批評の悪い例みたいな感じで、小説が読めていないわけですね。結局のところ村上春樹を貶したいだけか、と邪推したくなるほど。このコーナーも池澤夏樹に交代して欲しいくらいです。

最近、記事が長いのです。今日も長くなりました。明日からは減らす努力を。