母の貧乏性
今日も朝から、大したことでもないことで母と口げんかをしなければなりませんでした。
「母さん、このブラウスまた手洗いしたの。これはドライクリーニングしなければならないと何回も言ったじゃないの。」
「手洗いしたって同じなのに、何もお金を出して人に頼まなくても。」
顔さえ見れば、あれこれともめる私たち母娘が、一緒に暮らす理由は幼い娘のためです。母は共稼ぎの私たち夫婦の代わりに娘の世話をしてくれています。考えてみると、争いの始まりはすべて母の貧乏性にあると言えます。新しい下着を買ってあげても、古くなって捨てたものを拾って着ます。食卓に座ってもそうです。魚を出すと魚の身に見向きもせずに骨だけを取り出しチュウチュウしゃぶったりしますから。娘は祖母がどうしてそうなのか気になるようです。
「おばあちゃん、おばあちゃんはなぜ魚の骨だけを食べるの。」
「うん、ばあちゃんは、これが一番好きだから。」
母はいつも同じことで私と喧嘩しても、変わる事を知りません。夫が出張に行った日の夜にもそうでした。
その夜のお釜の中には、母と娘の食べる量のご飯しかありませんでした。冷蔵庫に冷たいご飯が一膳ありましたが、電子レンジが故障していました。だからと言って新しくご飯を炊くのも嫌だったので、仕方なく冷たいご飯に水をかけて食べようとテーブルの上においたら、よりによってその時電話がかかってきました。ですが、話をしている間に母が先手を取っているではありませんか。母は私が食べようと置いておいた冷たいご飯に水をかけてもぐもぐ食べていました。それを見た私はカッとして、ご飯茶碗を取り上げ、声を上げました。
「母さんのご飯はここにあるじゃないの。何で私のご飯を食べるの。」
これに負けずに母はご飯茶碗を取り返して言いました。
「私も自分の娘に暖かいご飯を食べさせたいのだよ。お前は私の娘だから。」
私は母の一言が胸にぐっときて鼻先がうずきました。
「母さん、、、、」
母の貧乏性のせいで一日に何回もあれやこれやと言い争うけれど、それは私にひとつでもおいしいものを食べさせたい、着せたいという「母の気持ち」だからでした。母から受けた愛を大事に思って、これからは少しずつ返さなければならないと思います。