母とズボン
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「あなた、ズボンに小銭入れておいたの。どうか、その癖を直してよ、、、。」
毎朝、妻に言われる小言です。今日も、私のズボンから出てきた小銭のせいで、洗濯機がだめになったと怒ります。良くない習慣であることはわかっていても、直すことができないのは、母の思い出のせいです。
7年前、父が亡くなった後、母はとても辛い時間を送っていました。
「どうしよう。どうしよう。ううう、、、。」
当時、私は軍服務中だったので、2人の姉と妹が悲しみに沈んだ母を世話してくれました。そして妹は、田舎に住む母をソウルに連れて行くと言いました。
「お兄ちゃん、お母さんをソウルに連れてきて私が一緒に暮らすから、心配しないで。」
母を気楽に連れてくるという妹でした。ですが母と暮らしながら楽になったのは、むしろ妹の方でした。母が家のことを全部やってくれるので、何にもしないで過ごしたのでした。
私が除隊してからは、母の仕事は倍に増えました。
「何で、洗濯機があるのに手で洗濯をするの。」
私は小言を言いました。苦労する母を見ながら心は痛かったのですが、実際は言葉だけでした。うわべは母のためを思っている振りをしながら、心の内では、当然、母がしなければならないという風にです。
長い間、父の看病をしながらも平気な人だったのに、、、、。母は子供の世話をする日々に老いていきました。
私は、勉強だとか何かをいい訳にして、忙しい振り、大変な振りをして、母と食卓に座っても、仲良く話をすることもありませんでした。
そんなある日、母が久しぶりに早く帰った私のためにモヤシのスープを作ってくれました。
「洗濯をしようとしたら、お前のズボンから小銭が1000ウォンでできたよ。あぶく銭ができて気分が良かったからモヤシをたっぷり買ったのさ。」
たかが1000ウォンぐらいで久しぶりに明るく笑っていた母、、、そんな姿を何回も見たいという気持ちで、その時からわざとポケットに小銭を入れて置くようになり、その癖が今まで続いていて、妻を悩ましていたのです。
「ん、、500ウォンだね。今日は豆腐にしないと。」
小銭を見つけるたびに、少女のように明るく笑っていた母。わずかの小銭が、母にとっては疲れる日常を支えるささやかな幸福だったのです。
妻の小言を聞きながらも、私がポケットに小銭を入れてしまう理由。愛する母に対する胸がキュンとする思い出のせいです。