![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/08/6d68321bca0557a6d283d59e0aaf1dba.jpg)
より明るく深い目
「若くい奥さん、かわいそうでどうしよう」
眠った夫の蒲団を整え保護者の椅子に座ると、
横に座っているおばあさんが言葉をかけた。
きれいに育って家のことだけをして生きてきたのにどうしたものか、
私は言葉もなく微笑んで夫を見つめた。
そうです。おばあさんの目に映った姿が夫の現実でした。
目の見えない夫のかわいい妻。
夫は家族旅行に行った後、体の具合が悪いと2日間横になっていました。
悪いところを聞いても何も言わないので不安でした。
ふと、旅行先で物がよく見えないと言っていた夫の姿が思い浮かびました。
「視力がどんどん悪くなっているせいだろうか」
老眼だろうと思って一緒に近くの病院に行きました。
ですが、医者の言葉に胸が凍りつきました。
「今すぐ大きな病院に行って下さい。両目ともに失明の危機です。」
夫の状態は手をつけられないほど深刻でした。
糸くずのような希望で数回の手術をしました。
夜毎に苦痛の中で眠っている夫を見ていると胸が痛みました。
1ヶ月ほど入院生活を続けているうちに、私たち夫婦は少しずつ適応していきました。
腕を組んだまま一日中くっついて歩いていると恋愛していた頃のように切なくなりました。
目のよく見えない夫のために些細なことまで説明してあげる癖も生じました。
「あなた、雲が綿菓子をむしって置いたように長くつながっているわ。
日が暮れたみたい。少し赤くもあり、黄色くもある光が混じっていて空の色がきれい。」
以前のように一緒に眺めることはできないけれど
心で感じて共感すれば、より多くのものを一緒に見ることだと思った。
たとえ夫の片方の目は完全に失明したとしても
互いに向かう目と、世の中に対する目は前よりも明るく深くなった。
私は今日も彼の暗い片方の目の中で世の中を生きていく。
今日もがんばってみました
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_ase2.gif)
(2023/7月25日画像サイズ変更)