久しぶりの演習林サポーター講座で、秩父に行った。
正丸峠のトンネルを抜けると、RedArrowの窓に横殴りの雨。秋雨前線が台風11号に刺激されているようだ。西武秩父駅に着いたときには、雨は止んでいたが、演習林の方面は雲が垂れ込めていて山影が見えない。
秩父駅から歩いて5分ほどの演習林事務所で資料をもらい、本日の予定の説明を受けてから、いつもの「東京大学」バスに乗り、大血川作業所に入る。今回のテーマは「森林生態系の管理と利用」。それと、森林の分解者としての土壌生物と水棲昆虫の採取と観察の実習が予定されていた。土壌生物採取(ツルグレン法)は土が雨で濡れているので中止。
渓流は増水していなかったので水棲昆虫を採取し顕微鏡で観察した。 水中の岩を起こし下流に置いた網の中で小石・砂を受けるように掬う、ムカシトンボの幼虫、カゲロウ目、カワゲラ目、トビケラ目、ハエ目の幼虫が結構入った。それらを、どんな種類か、どのような構造になっているかを顕微鏡で観察する。顕微鏡を覗いたのは何十年ぶりだろう。これらの水棲昆虫は渓流の生態系の分解者。渓流の水の中の生態系ピラミッドの頂点に居るのはイワナ。だjからイワナがいる渓流は健全で、イワナは豊かな渓流のシンボルなのだ。
掬うの手偏を取って草冠をつけると「きく」という字に、手偏の代わりに革や毛をつけると「まり」という字になる。右の部分は丸い球体を表す意味。だから「キクさん」は丸くなくちゃいけない。
午後は、大血川沿いの道に行き止まりまでバスで行き、そこから歩いて、二次林、天然林
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の遷移、森林管理や生態系を観察しながら下山。
間伐した樹齢90年のケヤキの二次林。鹿が幼樹を食べてしまうので次の世代が育たない。 右隣の写真は樹齢95年のスギ。密生した人工のスギ林と違って、ここは余裕の空間。これが本来の自然のスギの姿。雪国育ちの日本独特のスギは特に春先に水気を好む。
イワタバコ。てんぷらで美味しいらしい。野草ブームもあって、心無い人が盗掘。日本中の山野から激減している。
この大血川地区は、かつて炭焼きが盛んだったそうで、山の奥のほうまで二次林が広がっている。萌芽更新のサイクルに合わせて移動しながら炭を焼く。これが持続する生態系の伝統的な利用と管理方法。
炭焼き窯には、白炭窯と黒炭窯それと木酢液を採る蒸留窯がある。白と黒の違いは、木をどこまで焼いて、セルロース・セミセルロース・リグニンを分解するかの違いらしい。黒炭は600-800度程度で火を消すので、リグニンは分解されないが、白炭は1200度まで上げるのでリグニンも分解される。黒炭の場合は窯を密閉して4日程放置、酸欠にして火を消すが、白炭はまっ赤になっている炭を外に出して消し粉で酸欠状態にして火を消す。だから黒炭は密閉度が必要で、粘土で隙間を埋める窯を使う。白炭はしまっていて、叩けばキンキンする。備長炭である。白炭は持ちが良い。ウバメガシだけが適しているわけではない、焼き方で白炭ができるのだ。
プログラムの一部が雨で中止になったので、講座はいつもより一時間ほど早く終わった。
道中、秩父神社の近くに住んでいる方とお話ししていて、「秩父の夜祭り」の秩父神社に行ってみたくなったので、ちょっと足を伸ばした。
鬼門を護る青龍、左甚五郎の「つなぎの龍」というのが本殿の東面に彫ってある。
これを鬼門に奉祀すれば、家内の安全と子孫の繁栄。そんな説明を目にしてしまうと、すぐに欲しくなる。お札とお守りはいくらあってもいいそうなので、早速、つなぎの龍の絵馬を買った。お守りの類は、直感でピンと来たものは、悩まずに買うことにしている。絵馬のヒノキの香りが鼻から脳に抜ける。いつの間にか雨は上がっていた。西の空を見上げれば、うっすらと太陽が見え出し、空が明るくなっている。
少しだけ好い気分になって、帰りの電車で地酒をグビッっ。
「自分の人生は自分で創造する。」 今日も充実した一日だ。