3日間仕事を完全に離れ、土日を入れて5日間の連続休暇にした。家で仕事のメールは一切見ない、気にもしない、忘れることに決めた。
初日は秩父の東大演習林に向かい、「森林の安全管理」という講習を受講した。お弁当と暖かいお茶を持って、ラッシュの流れに逆行し、7時30分発西武秩父行きレッドアローに乗り込んだ。受講者は僅か5名。午前中は座学で、午後は秩父消防署に行って3時間の「救命講習」を受ける日程になっていた。阪神大震災の後に、赤十字の救命講習を受けたことがあるが、その時はAEDは一般には使用が許されていなかったので、今回が初めて。最後に形だけの実技試験が終わると、2年間有効の「普通救命講習修了証-AED Ⅰ」という認定書が授与された。同時に、この日の演習林の講習をもって正規の「秩父演習林サポーター」になった。期せずして二つの認定書を貰って、小さな達成感が沸き、なんとなく嬉しくなった。既に陽は武甲山の向こうに隠れ、秩父盆地に闇が下り始めて急激に冷え始めていたが、明日も休みと思うと気分が明るくなって、歩きたくなった。それで横瀬駅まで歩くことにした。秩父の温泉で温まり、熱燗を飲んで、認定書のお祝いと小さな休日気分を味わうのだ。
西武秩父駅から「武甲乃湯」までは、羊山公園を抜けて3km弱。陽が沈むと、山に囲まれた盆地の底はあっという間に漆黒の闇になった。田んぼを横切り、始めて歩く夜道を40分程行くと、暗闇に看板が浮かび上がって見えてきた。結構大きな日帰り温泉だ。隣接して旅館とキャンプ場があるらしい。玄関を入ると大きな音響で口上が聞こえる。大広間の舞台で旅芸人の時代劇を上演していた。だからか、入湯料ではなく入場料が700円。お風呂から上がったら劇は終わっていて、舞台ではお客さんがカラオケを歌っていた。温泉場を娯楽場とした懐かしいレトロな雰囲気。池袋行き直行電車は一時間に一本。暫しゆっくりできるので、カップ酒を暖めてもらい、大広間に陣取った。
駅に向かう前に、もう一本熱めの熱燗を頼んだら、親切なおばさんがレンジで暖めてくれるという ので、勧められるままに秩父の地酒を二種類お願いしてしまった。一本は家に持って帰るつもりだったが、お弁当の残りのおにぎりとおつまみのお蔭で、所沢に到着するまでには二本とも空になっていた。
池袋の帰宅ラッシュに遭遇するのを避けて、秋津で武蔵野線に乗り換えることにした。新秋津駅前には「サラリー マン」という大衆居酒屋があって、西武線沿線のハイキング帰りに度々利用したことがある。中を覗いたら、入り口近くの席が空いていた。既にカップ酒三杯空けていたのに、休日の開放感に誘われてふらりと立ち寄ってしまった。結局、この日は熱燗を4合飲んだ。外で一人酒、こんなに飲んだのは始めてだと思う。自分の中で何かが変わりつつあるような気がする。