森の時間 SINCE 2002

Le Temps Du Bois

武甲乃湯

2007年11月28日 | 随想・雑文

3日間仕事を完全に離れ、土日を入れて5日間の連続休暇にした。家で仕事のメールは一切見ない、気にもしない、忘れることに決めた。

初日は秩父の東大演習林に向かい、「森林の安全管理」という講習を受講した。お弁当と暖かいお茶を持って、ラッシュの流れに逆行し、7時30分発西武秩父行きレッドアローに乗り込んだ。受講者は僅か5名。午前中は座学で、午後は秩父消防署に行って3時間の「救命講習」を受ける日程になっていた。阪神大震災の後に、赤十字の救命講習を受けたことがあるが、その時はAEDは一般には使用が許されていなかったので、今回が初めて。最後に形だけの実技試験が終わると、2年間有効の「普通救命講習修了証-AED Ⅰ」という認定書が授与された。同時に、この日の演習林の講習をもって正規の「秩父演習林サポーター」になった。期せずして二つの認定書を貰って、小さな達成感が沸き、なんとなく嬉しくなった。既に陽は武甲山の向こうに隠れ、秩父盆地に闇が下り始めて急激に冷え始めていたが、明日も休みと思うと気分が明るくなって、歩きたくなった。それで横瀬駅まで歩くことにP1090158した。秩父の温泉で温まり、熱燗を飲んで、認定書のお祝いと小さな休日気分を味わうのだ。

西武秩父駅から「武甲乃湯」までは、羊山公園を抜けて3km弱。陽が沈むと、山に囲まれた盆地の底はあっという間に漆黒の闇になった。田んぼを横切り、始めて歩く夜道を40分程行くと、暗闇に看板が浮かび上がって見えてきた。結構大きな日帰り温泉だ。隣接して旅館とキャンプ場があるらしい。玄関を入ると大きな音響で口上が聞こえる。大広間の舞台で旅芸人の時代劇を上演していた。だからP1090161か、入湯料ではなく入場料が700円。お風呂から上がったら劇は終わっていて、舞台ではお客さんがカラオケを歌っていた。温泉場を娯楽場とした懐かしいレトロな雰囲気。池袋行き直行電車は一時間に一本。暫しゆっくりできるので、カップ酒を暖めてもらい、大広間に陣取った。 P1090182

駅に向かう前に、もう一本熱めの熱燗を頼んだら、親切なおばさんがレンジで暖めてくれるという ので、勧められるままに秩父の地酒を二種類お願いしてしまった。一本は家に持って帰るつもりだったが、お弁当の残りのおにぎりとおつまみのお蔭で、所沢に到着するまでには二本とも空になっていた。

池袋の帰宅ラッシュに遭遇するのを避けて、秋津で武蔵野線に乗り換えることにした。新秋津駅前には「サラリーP1090186 マン」という大衆居酒屋があって、西武線沿線のハイキング帰りに度々利用したことがある。中を覗いたら、入り口近くの席が空いていた。既にカップ酒三杯空けていたのに、休日の開放感に誘われてふらりと立ち寄ってしまった。結局、この日は熱燗を4合飲んだ。外で一人酒、こんなに飲んだのは始めてだと思う。自分の中で何かが変わりつつあるような気がする。

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マユミ

2007年11月24日 | 随想・雑文

三連休。前々から「森の時間」に行く予定だったが、少し躊躇いがあった。特定できる理由はないが、二週間前の週末は仕事で丸潰れ、先週末は家の用事諸々で動き回っていたので、今週は家でゆっくりすべき週末、父のお墓参りすべき週末、Sといっしょ過ごすべき週末なのかもしれない等と思い始め、結局行くのを止めた。行かないと決心した後は、気分がすっきり。「森の時間」に最後に行ったのは、友人二人と焚き火しながら一夜を過ごした11月3-4日。そのとき既に夜露が凍りついていた。氷点下が連続する前にバイオトイレの水を抜くなど、冬支度をせねばならないので近日中に必ず行きたい。仕事の重要度を下げることにしたので来週3日程仕事を休んで、その時に行く予定にした。

三連休初日は、お墓参りをして実家で母と過ごした。その帰り道、車中のラヂオが「明日は小春日和。絶好の秋の行楽日になる。」と言うのを聞いて、思い立ってSを連れて紅葉を見に行く気になった。最近は出不精になり、時間あれば韓ドラを見ているS。紅葉ハイキングに誘ったら、意外にも前向きな返事。そして、前夜から洗濯を始めたり、翌朝も早めに起きてオニギリ弁当を作ってくれたり、行く気満々。結婚前後、我々は関東周辺、栃木、長野の山々を歩き回っていたのだ。

選んだ場所は、「高尾山」。四季折々の植生が豊富で、東京周辺では森林インストラクターのフィールド活動の登竜門。学ぶためにも何度となく行ったし、陣場山方面へ抜ける縦走のときにも度々通った。京王線で行けば超安上がりの軽く汗かきハイキングが楽しめる。最近はミシュランのガイドブックに載っている意外な場所だとか、紅葉のスポットとしてTVでも盛んに取り上げられているので、初詣の混雑を覚悟して向かった。

紅葉、富士山。そして、登山口にあるお蕎麦屋さんも目的のひとつ。下山後は混むから、登山前に行こうと考えてP1090099 いたが、高尾駅で乗りきれないほどのJRから乗り換えてくる人の数を見て、諦めた。案の定、高尾山口駅では、先ず改札口から出るのに一苦労。改札を出た後もケーブルカーに向かう右方向の道は人の渋滞で進まないので、左から遠回りして向かった。昼食の時間にはまだ早いのに、参道にあるお蕎麦屋さんは、どこも長蛇の列。ケーブルカーも2時間待ち。人ごみを潜り抜け、沢沿いの6号路にたどり着く。何度も渋滞状態になりながら、一時間半ほどで山頂下の巻き道に到着。最後の階段がSには結構きつかったようで、紅葉の木漏れ日があたるベンチで一休み。厚着をしてきたせいか、軽い運動でも背中が汗で濡れている。P1090139人混みの山頂には行かず、巻き道でもみじ平から一丁平方面に向かった。もみじ平のトイレでSが行列している間、富士山方向に開けた斜面の二人がけベンチが空いたので、陣取った。穏やかな陽があたる、絶好の場所。そこでオニギリとお茶だけの素朴なお弁当を食べることにした。P1090129富士山は雲に霞んで姿が確認できない。紅葉もあまり鮮明な赤色にはなっていないような気がした。でも、風の当たらない南向き斜面はポカポカしてすごく幸せな気分。一丁平に行くのは止めて、その幸せな空間で暫し佇んだ。P1090106

その場所から登山路をはさんだ反対側に、葉を落した小枝に赤い実が鈴なりになっていた。ガマズ ミだろう。やや高所に生育しているからミヤマガマズミかもしれない。実は食べられる。少し離れたところに裂けた四角の実から4つ赤い種皮が顔を出しているのがある。どの房にも4つづつ赤く輝く実が見事に並んでいる。「マユミ」だ。遠目には区別付かなかったが、傍によると輝きが違う。材は白くて強靭なのP1090114で、昔、弓を作ったことから、この名前になったそうだ。ガマズミはスイカズラ科だがマユミはニシキギ科だ。マユミに近づいたSが、赤い実を手にとって不思議そうに見つめている。P1090133

せっかく来たのだから、やはり高尾山山頂にも寄ってから帰ることにした。案の定、とんでもない大混雑。人波、ざわめき。新宿の雑踏と変わらない。紅葉の下、埃の中で車座になって食事する人々。外人家族も散見される。それは初詣以上の混雑。 高尾山には年間250万人が訪れるそうだ。上高地が200万人、尾瀬が40万人、富士山が20万人。だから、高尾の未来が危ない。ひょっとしたら、下山後ならばピークを過ぎていてお蕎麦屋さんに入れるかも、という淡い期待を持ったが、どのお店も行列は朝より長かった。少し未練が残ったので、帰りの電車の中で飲むつもりで駅の売店でぬるいカップ酒を買った。座れる電車を待って席は確保できたものの、通勤電車並みの混んだ電車でお酒の匂いプンプンはまずい。隣のSが、電車の中でお酒なんか飲まないでとダメ押しする。せっかく買った暖かいお酒も飲めず。しょうがないから持ってきた本、「農的生活」を広げたが、心地よい疲労感に1ページも進まぬ内に眠りに落ちた。目が覚めたら新宿、都会の雑踏の中に居た。

P1090128P1090119陽が入ると鮮やかに映える、オオモミジ、イロハモミジ、イタヤカエデ、ヌルデ、ヤマウルシ、サクラ等の紅葉・黄葉。

私には、Sが手に取った「マユミ」ばかりが心に残る秋の一日だった。

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週末の贅沢

2007年11月18日 | 随想・雑文

ひと月振りの週末在宅。元気そうな母の電話の声と小春日和。それにMzoneと携帯で移動インターネットがスムーズに接続したので、気分が明るくなり、久しぶりに荒川の土手に出かけた。

川口神社の祭壇の前は七五三を祝う家族に占領されていた。帰りに参拝することにして、土手Dsc00023 に向かった。久しぶりのジョッギングなので念入りに準備運動。土手の枯れ草の上で柔軟体操して、腹筋して、腕立て伏せを百回して気分を盛り上げ、軽くジョッギングを始める。ひと月振りなので体が重い。ゆっくり30分程走り、農業公園に寄り道し、畑をぶらりと回る。土手に戻り川に目をやると、船着場に釣船がDsc00026 目に入った。大抵この時間は東京湾に出ている。近くまで行き、キラキラ輝く川面に揺れる小船をボーっと眺める。背伸びをしたら、何だか元気がでたので、再び体操と腕立て伏せをした。何だか腕立て伏せがいくらでも出来る日だ。走るのは止めて、ゴルフ場脇の川縁の道をゆっくりと歩いて帰る。夫婦らしき中高年ゴルファーが何組も楽しそうにプレーしている。遠目にジーっと他人の持ち物の品定めをする。妻と旅にでも行くか・・・。

仕事のことを少し考えながら歩く。明日の経営会議用の資料の纏め方、提示方法の案を練る。広い場所で、遠くを見ながら考えると、滅入っていた原因、モヤモヤが晴れる。数週間鬱積していたものが消え去り、元気が戻ってきた気がした。今年の夏は新しい仕事に邁進してしまい、私のライフプランが停滞した。軌道修正せねば。

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