秋空。空気が澄んできた。内山峠の荒船山は朝日を浴びて鮮明に浮かび、佐久平の浅間山も稲穂の彼方にくっきりと横たわる。
殆ど鹿に食べられてしまった小さな畑の夏野菜を整理し、土を返して石灰を
鋤き込んだ。
冬が来る前に、第二小屋の前にデッキを作りたい。散らばっていた古枕木を集めて土台の位置を決めた。
一人の夜。客人が残してくれた八千穂の地酒「井筒長」を熱燗に。酒菜は漆黒の闇と満点の星。
前日の深夜に出発した息子が友人達と夜を過ごし、自分達で料理していた。佐久平の大型ホームセンターで材木などデッキ用資材を買ってから向った。この日は息子達と時間を過ごしたので作業
する 時間が限られたが、畑に堆肥を鋤き込んで、種を蒔いた。堆肥を馴染ませるために1-2週間寝かしたほうが良いらしいが、翌週に来れるか分からないので、一気にやってしまった。
三連休の前半は3名の訪問者があった。「のらくら農場」にお願いしてい た朝採り野菜と農場自慢の麹の利いた味噌で、野菜・きのこ鍋、アメ横で調達した紅鮭のチャンチャン焼き、それと
鮎等の炭焼。お酒は、いつもの八 千穂の酒蔵「黒澤酒造」の「井筒長」。熱燗でチビチビと味わうつもりでいたが、一升瓶があっという間に空になった。冷える屋外で飲むには口当たりが良すぎて、飲み足りない。外気温が下がり、どうしても暖かい飲み物が欲しい。小屋に
保管していた高級らしい職場にあった貰い物の「紹興酒」を暖めた。温度が下がるにつれて、暖かい飲み物が一層美味しくなる。紹興酒の大瓶も瞬く間に空になった。雲がない夜、昼間大地に蓄積された太陽熱が宇宙の闇に吸い取られていく。抜けるように冷 える夜に「のらくら農場」のHさんにも来て頂けたので、炎を強くした焚き火を囲んだ。
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翌朝はゆっくり起きて、食事を作り、太陽の下でうたた寝をしたり、ペンキ塗り等、自由に過ごす。皆が帰って一人になってから、
デッキ作りを始めた。賑やかに過ごした後の一人 は、やけに寂しく、心細い。西の空の明かるさが消えると、森が黒く押し寄せ、あたりは漆黒の闇に包まれる。前夜はヒトの力が闇
を押し留めていたが、一人では抗しきれない。早々と小屋に逃げ込み、灯りが漏れないように扉を堅く閉じて朝日を待った。
追加デッキ材と土嚢入り砂・砂利を佐久平に買出しに行く。S代が助っ人に
来てくれたので、お昼の食事や飲物が温かい。間引きしたホウ
レンソウ、コマツナだけで美味しい味噌汁が出来る。秋の色が濃くなり、夕闇の迫るのが早い。翌日はW大学ホームカミングデイに行く予定なので、早めに家路につく。