三月中旬の暖かさだ。陽光に誘われて荒川土手に向った。全力疾走で激倒し骨折して以来のお散歩土手行き。だから2ヶ月ぶりになる。20分ほど軽く走った。
四肢の骨折はほぼ全治した、と思うが、昨年4月に患った椎間板軟骨が完全に戻っていないので腰の辺りが時たま重くなる。歩いている時は殆ど違和感はないが、30分以上立ち続けると腰に鈍痛が始まる。だから、川口から川崎への通勤では、立ち続けるのは東京までが限界。東京駅で混雑の京浜東北線から吐き出され、東海道線下り列車の空席にたどり着き、ホッと座り込む。まだそんな体調だから、無理はできない。
適度に汗をかいて、土手のポカポカ斜面に横たわる。暖たまった大地。枯れ草と土の匂い。南側の斜面には早くも春の芽吹き。ふと横を見ると、ポカポカ陽気に早咲きしてしまった弱弱しいホトケノザ(シソ科)が自信なさそうに冷たい風に揺れている。「春の七草」のひとつにホトケノザがあるが、それはコオニタビラコ(キク科)のことで、これではない。「田平子」というのは春耕前の田んぼの表面にへばりつくように葉を広げる姿を形容したもの。それが台座となって、その上に輪のような花をつけるところから「仏の座」とよばれるようになったそうだ。鬼田平子より小さいので小鬼田平子。この土手に咲くシソ科のホトケノザも食べられる。茎が角ばっているのは大抵食べられるような気がする。食べられる野草といっても、おなか一杯に食べるものではない。薬膳のように自然の恵み頂くという気持ちで食べる。
スイバ。漢字では「酸葉」。茎が少し酸っぱい。小学校でウサギの飼育係りをした人は知っている。フランスでは野菜として栽培されている。仏語で『Oseille』、英語では『Sorrel』という。冬の間は葉が赤っぽくなって地面に張り付いている。春先の若葉や茎が食用になるが、冬越しの葉も美味らしい。冬越しの赤い葉が新春の陽光を受け、徐々に緑に変わり、立ち上がり始めている。スイバと同じ科に属する「ギシギシ(羊蹄)」というのがいる。両者の区別は、葉の形。スイバは矢じり型で先が丸い。ギシギシは縁が波打ち葉先がとんがっている。スイバは日当たり良い空き地・土手などの乾いた場所、ギシギシは川辺などの湿った場所で群生する。写真の葉はギシギシのように波打っているが、丸い葉だし、乾燥した土手にいるので、スイバだと思う。
コナラの冬芽はパンパンに膨れ、間もなく銀毛に包まれた幼葉が顔を出すだろう。梅は既に咲き乱れ、寒桜も4分咲き。今年は春が早く来そうだ。人は喜ぶ。が、自然界の生き物達には甚大な影響を与え、種の数が減少してゆく。地球に生物が誕生してから、二度の生物滅亡期があったそうだ。人類の活動が生命の滅亡を早めている。打ち寄せる人の欲望は制御できない。