独り立ちして暮らす子供らがアラスカや横浜から家族を連れてやってくる。年一度の家族の時間、年末年始。手分けして買物に行き、ご馳走を調理をして、一同がテーブルについて賑やかな晩餐が始まる。久しぶりに会した子供らの見慣れた振舞いで、夫婦2人生活で持て余していた家の空間が家族の温もりで満たされる。家族皆が無事に一年乗り切れた安堵と家族と過ごす幸福感に包まれる大晦日。
かつて我が家にあったこの家族の時空がずっと続けばと思うが、子供らには自分で選んで歩き始めた夫々の道があり、この家の温もりには留まらず、自分の人生と家族を自力で守らねばならないのだから、数日後にはまた飛び立って行く。その時は一抹の寂しさをこらえ、泰然と見送る。そして、閑寂とした家で夫婦2人の一年がまた始まる。
セミリタイヤして17年目。それまでは、商社仕事が絶対的中心に生活が回っていて、懐の深い仕事に遣り甲斐を感じ、楽しみながらも人生をただ流していた気がする。その後も宮使いらしきを12年程は努めたが、魅力はさほど感じない遣り甲斐にはならない軽い拘束の仕事を選び、好奇心と個人的達成感を満足させることに時間をかけるようにしていた。ここ5年は、ITの恩恵をフル活用し在宅や出先どこからでも対応できる仕事にしていたので、気分もほぼ完全リタイヤになれて、一層増えた自由時間に好奇心をフル回転させている。
「森の時間」の建物群の建設はひと段落したので、これからはゆっくり時間をかけて敷地の7割ほどを占める未使用の斜面が活用できるように整地しようと思う。山小屋の野山遊びはスローダウンさせて、暫し中断していたスケッチと、全く縁遠かった事を始めようと思いAlto Saxophoneを始めた。往年の趣味であったスケッチは、線描きスケッチを自分のスタイルにしてみようと思い、4月から関本紀美子先生の「カラフルスケッチ」の手法を学んでいる。本来の透明絵具の水彩スタイルが好きだが、挑戦なので納得行くまでこのスタイルでスケッチ続けるつもりだ。
冒頭の人物スケッチは、F4サイズの初めての肖像画。40年近くお世話になった神楽坂「舟藏」のマスター。元プロボクサーの強健な人物だったが、闘病の末力尽きて亡くなられた。本当にお世話になった。人生の浮き沈みで叱られ、励まされ、何度男泣きしたことだろう。私の人生の応援団長でした。マスターの息子さんが新橋で「舟藏」を継ぐというので、マスターお気に入りの写真を肖像画にして寄贈した。素人の初めての肖像画で人前に晒せる出来ではないが、大変喜んでいただけたし、マスターを偲び気持を込めて描いたので、その想いが映されていればと思う。