to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

ラビット・ホール

2014-05-05 20:48:48 | the cinema (ラ・ワ行)

原題 RABBIT HOLE
製作年度 2010年
上映時間 92分
監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演 ニコール・キッドマン/アーロン・エッカート/ダイアン・ウィースト/タミー・ブランチャード/マイルズ・テラー/サンドラ・オーパトリシア・カレンバー
郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、愛する息子を交通事故で失った悲しみから立ち直れず、夫婦の関係もぎこちなくなっていた。そんなある日、ベッカは息子の命を奪ったティーンエイジャーの少年と遭遇し、たびたび会うようになる。

なんとなく私たちは思っている。子供は親より先に死なないものだと。
しかし、その順狂わせが自分の家庭に起きてしまったら、、、想像できない。したくない。
それはきっと、感情が死んでしまうような恐怖かも知れない。

物語は、4歳の息子を喪くした夫婦が立ち直れずにいたある日、隣人がディナーを誘いに来るところから
既にボディブローが始まっていて、、隣人に踏みつぶされた花の苗…。何気ない、悪気のない過失さえも
取り返せない事故へと及ぶ危険を暗示させて幕を開け、
妻が妹の妊娠を知るところから加速をつけて動き出す、絶望的な日常。。。

子供を突然失うという喪失感も、立ち直ろうと向かう方法も、妻と夫では違う。
夫には仕事という避難所があり、仕事から解放されて息子を偲びたい。忘れたくない。
だけど、一日中家にいる妻は、毎日帰る事のない息子の想い出に囲まれてもがいていた。

当然友人、隣人、実家との関係も上手くいかず、とりわけキツイのが、
妻が妹の妊娠を知って実家に4歳の息子の服を持って行った時の上からな態度に、
私も息子を同じように失ったと言う母親に対して放った「同列にしないで!」
だらしない妹や、薬中の兄の死と、自分の息子は違う!
夫の勧める会のメンバーたちも「違う」!息子を奪った神なんか持ち出さないで!

しかし、彼女はバスで通学している加害少年を見かけた時から目が離せなくなり――


バスの車窓の少年の横顔に、ベッカは自分と同じ喪失感と諦めに似た何かを感じたのだろうか。
普通に考えれば顔をみたくない筈の少年に引き寄せられるベッカ。。
言葉を交わすきっかけになったのは彼が図書館に返却した「並行宇宙」の本。
その理論を基に彼の本はまだ制作中なのだけれど、ベッカの心を掴んだ。
今、この現実は「悲劇バージョン」かも知れないけどどこかで「幸せバージョン」が展開されているのかも?

私的に心にキタのは、ベッカの母の言う、悲しみは「忘れることなどできない」けれど
時間が経つにつれ次第に重さが軽くなる。やがてポケットの中の小石ほどになり、
ソレがある事を忘れそうになるけど、ポケットに手を入れるとそこにある―というセリフ。
悲しみは軽くなって欲しいけど、、すっかり忘れてしまいたいわけじゃない・・。

余りに深い衝撃を受けて自分を見失いそうな時、孤独なベッカは慰めや励ましよりも
思いがけない相手と接したことで知ったパラレルワールドに光を感じたのだろうか.....。
ある夫婦の悲劇からの再生を描いた、脚本も素晴らしいけれど、
ニコールの演技に引き寄せられた作品でした

TOKYO MXTV、シアター092、時々凄くいい作品を放送してくれる
コメント (2)
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