買い物から戻って来た時の事。
家の前の歩道で、落とした荷物を拾い上げた男性が、もうひとつ落とし物があるのに気づかない様子だったので、拾って手渡した。
何か話したそうだったが、急いでいた私が車に戻ると男性が追って来て、「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度も言う。
そして、「こんなくだらない人間の自分に、優しくしてくれて本当にありがとうございます」と言うではないか。
見ず知らずの方ではあったが、自分を卑下するその男性に、思わず言わないではいられなかった。
「くだらないなんて…誰もが皆一生懸命生きているんですもの、そんな風に思わないで下さい」
男性は何度もお礼を言い、頭を下げて去って行った…。
世の中、皆がみんな器用に生きられる訳ではない。私自身もかつて自信が持てない時があった。娘たちにもそんな時期があった。
遠い過去を思い出して、少し胸が痛かった。