2024年12月8日は、シリアにとって歴史的な日になりました。
長く続いたシリア内戦は、一応の終結を見ました。
シリア人権団体の推計では計約46・5万人が犠牲になりました。
また500万人以上の人々が内戦を逃れて国外に避難民として脱出しました。
こんな状況が、いつまでも続いて良いはずがありません。
と言うわけで主だった勢力が話し合いを持ち、新政府の樹立の運びとなりました。
その話し合いの部分は、外部には秘匿されていたのでいきなり反政府勢力が政府軍を破ったように見えますが、実際には政府軍もほとんど戦っていません。政府軍は、反政府勢力の進撃に合わせて戦闘せず撤退するだけでした。
当然、話し合いにはシリア政府も参加しています。アサド大統領が、どの程度関与していたかは不明です。
反政府勢力の中心と思われるアル・シャームの部隊がダマスカス市市内に進駐して、市内を掌握したところで一応内戦に区切りがつきました。
日記ではロイターの「ヨタ記事」を引用して、アサド死亡説を書きましたが、アサド大統領はロシアに亡命して無事が確認されました。
アサド大統領がダマスカスを出たのは、7日の夜だと思います。
イランの大使館員や革命防衛隊の隊員、ヒズボラの戦闘員は、7日のうちにレバノンに退避しています。
(南の国境付近にいた一部は、イラクに退避したようです)
また7日の時点でアル・シャームのメンバーがラジオ放送局とテレビ局を占拠しています。
つまり、7日に時点で全部終わっていたと言うことです。
8日は、アル・シャームの部隊がダマスカス近郊と市内に進駐し、治安維持を引き継いで全てが終わりました。
早速、イラン大使館が襲撃されていました。かなり、イランは憎まれているようです。
停戦に向けた話し合いはトルコが主導したのだろうと思います。トルコから水面下で周辺のアラブ諸国には根回しがあったと思います。ロシアとイランに通告されたのは、かなり後だと思います。多分、6日でしょうね。ロシアは、もう少し早いかもしれません。
停戦合意に反対するに決まっているイランとロシアは、梯子を外されました。
7日夜のアサド大統領がシリアを出国した時点で、全てが終わっていたというわけです。
記事
ロイター 2024年12月9日
『中東の転換点に、反体制派が首都掌握 アサド氏はロシアに亡命』
BBC 2024年12月9日
『シリア脱出のアサド大統領、家族とモスクワに到着 当局がロシアに亡命許可』
(詳しい記事)
2024年12月8日
『シリア反政府勢力の代表、首都で演説 大統領は逃亡』
https://www.bbc.com/japanese/articles/cp833759120o
激しい戦闘は避けて話し合いで権力の移行が決まったのは、後のためにも良かったと思います。
外国の反応は歓迎する見解が多いです。
これだけ長く内戦が続いて特に周辺諸国は、迷惑この上なかったと思います。
地域の不安定要因が一つなくなることは喜ばしいことです。
ロシア外務省
産経新聞 2024・12・09
『アサド氏が内戦当事者らと交渉し辞任を決断と声明 ロシア外務省 動きを注視』
イランのアラグチ外相(やや、愚痴っています)
2024・12・09
『イランのアラグチ外相、シリア軍を批判「やる気なし」 アサド大統領は「軍の状況に動揺」』
このコメントを見るとイランは、完全に「蚊帳の外」でしたね。
イスラエルは、ヒズボラと政府軍を大分前から、せっせと空爆してヒズボラ叩きをやっています。
読売新聞 2024・12・09
『イスラエル軍、ダマスカスのシリア空軍基地を空爆・・・ネタニヤフ首相「歴史的な日だ」』
(ゴラン高原の防備を固めて、半信半疑です)
権力の空白を突いてISが蠢動しようとしています。
アメリカは、「思いっきり!」の空爆でIS叩きをやっています。
ISも周辺を攻撃しています。
産経新聞 2024・12・9
『バイデン氏、アサド政権崩壊は「歴史的好機」 過激派実権を警戒 75超のIS拠点空爆』
などなど色々ありますが、新政権の枠組みが決まり、スタートするのはこれからです。
ベースとしてはイラク方式が考えられますが、成否のポイントは議会制度を採用することと、将来の自由選挙の採用だと思います。これで、アル・シャームが独裁すれば、また同じことの繰り返しになります。
※一つになる点は、今姿が見えるのはアル・シャームの代表者のジャウラーニ氏だけです。
もう一人は、シリア首相のジャラリ氏です。
これだけでは、旧シリア政府の主権者がアサド大統領から、ジャウラーニ氏に代わるだけです。
反政府勢力には、①トルコ系勢力、②クルド人系勢力、③自由シリア軍などがあります。
新政権に①②③が参加しなければ、旧シリア政府の代表が変わっただけになります。
新政権がシリアを代表する政権になるには、①②③の参加が不可欠です。
まだ、アル・シャームが首都ダマスカスを掌握しただけですので、その後どうなるか現時点では不明です。
権力の空白を突いてISが蠢動しています。
アメリカが抑えていますが、いつまでもは出来ないでしょう。
まだ、新生シリアは始まったばかりです。
※何が本当かは分かりません。トルコの関与についてのロイターの記事
2024年12月9日
『焦点:シリア政権崩壊、反体制派の電撃作戦を可能にした「完璧な条件」』