BBC 2024年12月19日
『「シリアは世界の脅威ではない」暫定政権の指導者、BBC単独インタビューで語る』
https://www.bbc.com/japanese/articles/cqx8z0gv755o
シリアの新指導者は、シャーム解放機構の「アフメド・アル・シャラア」氏です。
通称は「アブ・モハメド・アル・ジョラニ」
インタビューは短い動画です。
関係者や法律家が憲法を作成すると発言しています。
誰もが憲法(法律)に従うと発言しています。
短い動画の中で分かることは、これだけです。
個々の事柄は、自分ではなくみんなが相談して決めると言っています。
一番、外の人間が心配しているのは、アフガンのような古い国家になることでしょう。
しかしアフガンは部族社会の国であり、シリアは違うと言っています。
今後、シリア新政府がどのような憲法や法律を制定し、実際にどのような政治を行うのかを見なければ、シリア新政府の性質は分かりません。
時々、シャラア氏は「革命」と言う言葉を使います。
実際、今回の政変は「革命」です。
しかしシャーム解放機構は、全部を破壊することはしませんでした。
まず、自由シリア軍との協力関係を築きました。政府軍と戦いましたが、旧政府の政権幹部とは事前に話し合いが持たれていたようで、旧政権は政治権力を反政府勢力に平和的に引き渡しました。
こうなった理由は、長い内戦で多くの人々が犠牲になり国土が破壊されました。そして大きく5グループに勢力が集約されました。敵も味方もシリア人全員が考えたのだろうと思います。
誰が悪いのか❓どうして、こうなったのか❓
シリアは、フランスから独立後安定した政府は、これまで成立していません。
独立後の混乱の中でやがてバース党が政権を握ります。
更にその中で権力闘争が繰り広げられ、そこで権力を握ったのが初代アサドです。
シリア国内で約10%しかいないアラウイ派の部族の出身者であったために権力を確立し守るために独裁制を取りました。
これがシリア旧政府の原型であり二代目アサドが追放されるまで続きました。独裁制は、恐怖の弾圧政治に変化しました。
外交を見ると初代アサドは、イスラエルとの戦争にのめり込み、それが二代目アサドを追放するまで続きました。
イスラエルとの戦争の過程で外国勢力がシリアに入り込みました。ロシアとイランです。
大飢饉に端を発して、最初は各地で抗議活動が行われました。これをアサド政権が弾圧したために抗議活動が内戦に発展しました。反政府勢力の側には、欧米やトルコが介入しました。
内戦を終結し、再度統一政府を作るには、どうするべきか考えた結果が、今回の政変であろうと思います。
シリアにとって幸運だったのは、内戦の中で革命を指導できる人間が生まれてきたことでした。
それが、シャーム解放機構の指導者です。
シャーム解放機構の根拠地であるイドリブ県は、革命政府が行政を行っています。
政治と軍の分離が、行われています。首相に相当する役職があり、首相がイドリブ県の行政を行ってきました。
このイドリブ県の行政を、新政府に移行したために新政府の骨格は、出来上がっています。これを可能にしたのは、長く続いた内戦でした。この内戦の期間があったから、新政府の骨格が形成されたと言えます。
アサド独裁に対抗する政治組織が形成されるには、これだけの期間が必要だったと言うことです。
革命の指導者である「シャラア」氏とその支持者が考えていることは、シリアが再統一され平和を取り戻し、シリアをシリア人の手に取り戻すことが最大の目的であろうと思います。
外国の関与を出来るだけ排除した、他国の戦争に関与せずシリアの再建のための政治を目指しているのだろうと思います。
シリア内戦が、余りにもハチャメチャであったために、旧勢力と同じように革命政府を見ていると思います。
しかし内戦を繰り返すために革命を起こしたわけではありません。シリアを統一して平和を取り戻し、シリアを再建するために革命を起こしたことは、見て取れます。
だから、シリア新政府は今後、その方向で政治を行い、その方向で物事が進んでいくと思います。
そもそも国連の支援なしでは100万人の単位の餓死者が出るでしょう。トルコだけで300万人を超える国外避難民がいます。
それを考えても旧アサド政府のような独裁政治をやったり、内戦を再現しようという関係者は、ごく少ないと思います。そのような人間や集団は、和平派に排除されていくと思います。
中々、こんな指導者が生まれてくることは少ないと思います。結局のところ、組織や国が革命的に大きく変化するには優れた指導者が必要です。
毀誉褒貶・功罪は、ありますが中国共産党革命は毛沢東がいたから可能だったと思います。毛沢東の元に多くの中国人がまとまったから蒋介石の国民党政権との内戦に勝利し、中国統一を成し遂げました。毛沢東が出現していなければ、中国では軍閥が割拠し腐敗した私利私欲に満ちた政権抗争または内戦が、今でも続いていたかもしれません。
全く正反対の意見が多いですが、旧ソ連が崩壊した後のロシアは経済的に困窮し秩序が失われ混乱の極みにありました。その中で頭角を現しロシアに秩序と社会と政治の安定をもたらしたのが、プーチン氏です。その後、20年かけてロシアは最悪の時に比較すると随分、復興しました。もちろん独裁的な要素は強いです。しかしロシアを再建するには、強権的な手法が必要だったと言うことです。民主主義では、到底不可能なことです。
プーチン氏を批判するのは、ほぼ西側です。
どうして❓
弱体化して混乱しきっているロシアが、西側には好都合だからです。
大分、復活してきた今のロシアが「非常に不都合」だからプーチン政権の崩壊を目論むのです。
プーチン氏を西側から見ると、ロシアを復活させた「極悪人」です。
ロシア人の目から見ると、ロシアを復活させた「英雄」です。
見える姿が、正反対なのが分かりますか❓
プーチン極悪キャンペーンを、いくらやろうとロシア人には敵のプロパガンダにしか聞こえません。
ロシア人には、民主化勢力など国をアメリカに売り渡す「売国奴」にしか見えないでしょう。
欧米の「正義」は、ロシアに行くと「極悪」になります。
いい加減に、このギャップを理解するべきでしょうね❓
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