新政府が誕生しましたから、さっそく活動を始めるのかと思いましたが、その後音沙汰なしです。
その理由を考えてみると資金の手当てが付かないのだろうと思います。新政府の暫定首相が旧政府の金庫を調べてみたらカラだったのはコメントがありました。その時は、ローンの残高を調べているところだと言っていました。ロシアは、新規の穀物輸送船を止めています。支払いが出来るかどうか分からないからです。
では、アサド政権は、どのようにして資金を調達していたのかを推測してみます。
(あ)支配エリアからの税金
(い)ロシアの租借地の賃料
(う)多分、ロシアとイランからの支援金
(え)東部油田から石油を密売(これはISもやっていました)
(お)麻薬密売(推定3000億円から経費を差し引いた残り)
これくらいしか思いつきません。このうち、(あ)と(い)は一応、引き継げます。
(う)(え)(お)は、新政府には無くなります。
新政府の公務員の給料すら払えないでしょうね。
【どうしますか❓】
つまり新政府は欧米や周辺のアラブ諸国が資金援助しなければ、政府を運営することは不可能だと思います。
こうなると新政府は政府の運営や方針を(仮称)シリア復興会議に示して、同意を得て支援を仰がなくてはならに事になります。
今、その交渉の前段階だろうと思います。
シリアの復興支援に関しては、ヨルダンが音頭を取ってアラブ諸国や欧米が参加して会議を開催する準備をしているような記事がありました。
どっちにしても新政府の内容や施政方針、特に欧米が求めている少数グループや宗教への平等な取り扱いは最低限の条件です。他にもアメリカの国務長官が条件を出しています。
アメリカは、この条件が守られれば新政府を支持し承認すると言っていますから、支援が得られる可能性は十分あると思います。イスラム原理主義的な主張は政策に盛り込まず、普通の国の普通の政策と政治制度で新政府に参加している勢力が合意できるかどうかが、焦点になります。
と言うような調子で、まだ欧米やアラブ諸国の支持を取り付ける前の段階なのでは、ないかと思います。
もし、支持の取り付けに失敗するとどうなるか❓
大雑把にアサド政権崩壊時の各勢力の支配エリアを、各勢力のエリアにして分割統治をするしかないでしょうね。
(A)大雑把に言うと西部(ダマスカス、アレッポ、ラタキアなど)と南部の西半分が、旧政府+シャーム解放機構+自由シリア軍 ⇒自由シリア軍はアメリカが支援
(B)北部の東の方 トルコ系勢力 ⇒トルコが支援
(C)東部一帯 クルド系勢力 ⇒アメリカが支援
大体、こんなエリア分けになると思います。これまでの支援関係では、アメリカは(A)と(C)を支援することが可能です。だからシャーム解放機構が、ほどほどの統治政策を打ち出せば、アメリカの支援が得られる可能性はあります。これが最大のポイントかもしれません。そうなれば、(A)と(C)の連立は可能だと思います。クルド人の自治を認めれば、クルド勢力はシリア政府にとどまるのではないかと思います。むしろ離脱しそうなのは、(B)のトルコ系でしょうね。
以上は、どちらかと言うと上手くいった場合です。(A)は既に3グループの寄り合い所帯ですから、ここがばらけると最大5グループに分かれます。このどこかに(多分ラタキア県)にイスラム過激派が入り込むと、再び内戦再発もあり得ます。
やはり新政府の統治の原則、統治方針、統治の具体的な方法が決まらないと動きたくても動きようがないのも事実です。
どうなるのか分かりませんが、再び内戦だけは止めて欲しいと思います。