アサド前大統領を追放(逃亡)して、反政府勢力の主力のシャーム解放機構が首都ダマスカスを掌握して政治の主権者が変わったことは、分かります。しかし、欧米のメデイアも各国政府も、一体この政治的変化が何なのか❓と言うことは言いません。日本のマスコミは、そもそも能力が低いから論外です。
その理由を考えてみるとシャーム解放機構は自分たちへの外部からの疑惑を認識して政変の本質を「ボカしている」からだろうと思います。どちらかと言うと平和的な旧アサド政府から新政府への政権移行が見えるように演出していると言えます。理由はシャーム解放機構の前身がアルカイダから派生したヌララ戦線であり、テロ組織の一種と認識されているからでしょう。テロ組織であれば、外部の認知も支援も得られません。
どんな経過を辿ったかは、ニュースで見える範囲で過去日記に書きましたので、それを読んでください。映像を見る限りでは、シリアの人々は、「シリアの自由」を喜んでいるように見えます。10万人以上が虐殺されたという政治犯刑務所からの収容者の開放もあります。そして拷問死した遺体が発見され、逮捕され行方不明になっている親族を探す人々の様子もありました。レバノン国境からは、矢も楯もたまらず帰国を急ぐ人々の姿もありました。その一方で出国を急ぐ人々の姿もあります。
これらの様子を見ているとシャーム解放機構が中心となった今回の政変は、「シリア革命」と言うべき性質があります。ただしシリア内戦で複数の反政府勢力が生まれて、その勢力は分かれています。だから簡単にシリア全土を新政府が掌握できるわけでは、ありません。
新政府にしてもシャーム解放機構が中心であるのは分かります。ここに連合関係にある自由シリア軍が参加しているところまでは、見えます。クルド系反政府組織とトルコ系反政府組織は、まだ参加していないようです。トルコ系とクルド系は、部分的な戦闘が起きています。
一方でクルド系は政府軍が撤退した後、東部の原油地帯を占拠しました。これは最近、新政府に引き渡されました。だから新政府とクルド系は、とりあえず戦わないと思います。住み分けて今後、どうするか交渉するのでしょうね。問題はトルコ系でここはトルコの意思が強く反映されると思います。そして一番烏合の衆的な要素が濃いと思います。最後、統合で問題になるのは、この組織でしょうね。それは先の話です。
現在分かっているのは、旧政府・シャー無解放機構・自由シリア軍は新政府に参加しているようです。一応、ここは暫定新首相に任命されたムハンマド・バシル氏が首相に就任しました。あくまで平和的な政権移行を強調しています。
しかし、一連の流れを見るならば武力による旧政府の追放であり新政府の樹立ですから、本質はシリア革命と見るべきです。暫定新首相のバシル氏は、シャーム解放機構の根拠地の首相ですからシャーム解放機構の地方の統治機構を、とりあえずダマスカスに、ほぼそのまま移動させたと言えます。期間は予定は来年3月までであり、その間に各勢力で話し合い、それから本格的な政府のメンバーを決める予定のようです。テクノラートを中心とする政府を作りたい・との発言があります。
その後を見ていると、多少のゴタゴタはあるようですが、再び内戦が始まる気配は今のところありません。旧政府軍の兵士の多くは、逃亡しているようです。報復を恐れたのでしょうね。
これに対し、指導者のジャウラニ氏は、「徴募された兵士の免責と安全の保証」を発表しています。悪いことをしていない者は家に帰って大人しくしていろ・と言うことでしょうね。
シリア国内には、イスラム国(IS)の勢力がいます。その他アサド政権下でアサド政府に協力していた各国から来ていたイスラム過激派の民兵組織がありました。これは、まだシリア国内に潜伏していると思います。ここに旧政府軍の兵士が逃げ込んで、犯罪行為や反乱を起こすのを防止しなければなりません。
徐々に外国政府との折衝も始まっているようです。ヨルダンが主催したシリア復興会議も終わりました。トルコは大使館を再開したようです。15日には、ベデルセン担当特使がダマスカスを訪問して、ジャウラニ代表と会談しました。同じ記事では15日から学校も再開されたようです。学校が再開されると言うことは、都市部では治安が保たれているという様子が見えます。
要は、外国の政府や国際機関も新政府を正当なシリアの政府と認めつつあると言うことだろうと思います。
国連の担当特使は「制裁は早期に解除されるのが望ましい。シリアの復興を経済面から支援するべきだ」と述べたとのことです。国連の支援なしでは餓死する人が100万人の単位でいますから、国連が支援活動を再開できるのは良いことです。
米NBCテレビ
『クルド人についてジャウラニ氏が「共に生きていく」』と述べたとのことです。クルド人とは、自治権又は平等な政治参加で話し合う余地は十分あると思います。
ここまで来ると、トルコ系以外の勢力が全部シリア新政府に参加することになり、シリアのほとんどの地域が新政府の支配化に入ります。何とか新政府もメドが立ちつつあるようです。
そして国内の治安を回復するには、シリア全土にある武器を回収しなければなりません。特に地方や農村部では、ほとんどの地域が武装して自衛組織を持っていると思います。
何とかなりそうな気配が見えつつあるようです。
産経新聞
2024・12・16
『国連特使が「制裁の早期解除が望ましい 旧反体制派はイスラエルの攻撃非難』
2024・12・16
『武装勢力は「解散」の意向、シリア反体制派の指導者ジャウラニ氏 家屋再建が優先課題』
2024・12・15
『シリア・アサド政権崩壊から1週間、国民融和、諸外国との協調・・・課題が山積』
2024・12・15
『米欧と中東諸国がシリア新体制構築の支援表明 「安全で平和な未来を築けるように」』