「シリア大干ばつ」
これについて記事を探しても、今はヒットする記事がほとんど見当たりません。
ロイターの過去記事にやや近い記事がありました。
ロイター
2015年12月2日
『コラム:シリアなど破綻国家に共通する要因、宗教にあらず』
https://www.reuters.com/article/opinion/-idUSKBN0TL08X/
この記事に2006年から2009年にかけて起きた、シリア近代史上最悪の干ばつについて書いています。
特にシリア北東部の農村の被害が激しく、「全農家のうち75%がすべての収穫を失い家畜の80%が死亡した」
「約150万人の農民が職と食料を求めて都市に移住し、パレスチナ、イラクからの難民数百万人と合流した」
一部の識者はこれがシリア内戦の大きな原因だと主張しています。
何でも「アラブの春」と結び付けたい人間は、すぐ民主化要求のデモが発端だと言います。
最初は、これらの国内難民がパンを求めてデモを行いました。
ところがアサド政権は、これを無慈悲に弾圧しました。
これが繰り返されて、その後様々な抗議活動が起きました。
主義主張で起きたのではなく、最初は食べ物を要求したのです。
国外からの難民を仮に200万人とするとシリア農民150万にを加えると350万人です。
これだけの人々が食に飢えた末に、デモが起きました。
民主化要求とは、相当違うでしょう❓
後から加えた記述は、アラブの春に影響された民主化要求が原因だとします。
しかし、私は違うと思います。
何故、シリア全土に内乱が拡大したかと言うと、シリア全土に飢えた人々が沢山いたからだと思います。
だから当時、アサド政権が何とかして飢えた人々に食料を与えれば、このような悲惨極まる内戦は、起きなかったと思います。
少なくともシリア全土に一気に拡大するようなことは避けられたと思います。
ここにイスラム過激派が参入してしまったため、誰にも手の付けられない事態になりました。
こうして支離滅裂の内戦が始まり、その後長く続くことになりました。
そのハチャメチャな状況を書いた記事。
時事通信
(日付がないですが、2014年1月ごろの記事だと思います)
『シリアに迫る飢餓の足音~封鎖都市の苦悩~』
https://www.jiji.com/jc/v4?id=syria2024040001
この当時は反政府組織と呼べるものはありません。
せいぜい盗賊集団と言うべき正体不明の組織が乱立していました。
全部、一応イスラム武装勢力になっていますが主な集団だけで29あると言うことです。
中小まで入れれば、数など知れません。
シリア政府の支配地以外は、ほぼ無法地帯と化していたわけです。
残虐無比のアサド政府を支えるしかなかったのは、このような事情によります。
そこから成長した最大の勢力が、イスラム国です。
当時は、どうにもならなかった理由が分かると思います。
アルカイダのシリア支部としてヌララ戦線が設立され、存在が公表されたのが2011年11月です。
その後、経緯があり2017年から他の組織と合併して、シャーム解放機構が創設されました。
政府軍と最も苛烈に戦闘を繰り広げたのは、アルカイダから派生したヌララ戦線であり、その後継組織のシャーム解放機構です。
生い立ちが、こうであるから他の国はテロ組織として扱ってきました。
皮肉にもシリア内戦の主力は、民主化もどき勢力ではなく、イスラム原理主義勢力であったわけです。
これを、「アラブの春」とは笑えるでしょう❓
もっとも私は、現在のシャーム解放機構を否定したり批判しているわけではありません。
やっぱりイスラム原理主義のままなのか❓
それとも国民政党に成長したのか❓
これは、シャーム解放機構を母体とするシリア新政府の政治を見ないと分かりません。
私の言いたいことは分かったと思います。
シリア内戦の原因は、「アラブの春」でも民主化要求でもありません。
2006年から2009年にかけて起きた未曽有のシリア大飢饉が、その大きな原因の一つです。
(2)シリア難民
2020年の国連のデータです。
国外難民673・5万人
受入国(千人以下切り捨て)
トルコ357万人(54・19%)
レバノン88万人(13・40%)
ヨルダン65万人(9・97%)
イラク24万人(3・72%)
エジプト13万人(1・97%)
5か国合計549万人(83・26%)
ヨーロッパ
合計94万人(14・26%)
他に国内避難民がいます。
UNHCRのデータで、637万人以上。
シリアの人口2023年 2323万人
つまり、難民でないシリア人は1000万人程度しかいないことになります。