久しぶりに本を一気に読んだ。百田尚樹氏のデビュー作との事だった。昨年の本屋大賞を取られた氏の作品で2009年の初版だったらしい。日ごろ忙しく新聞も数日遅れで読んでいるくらいだったが、3日ほどで読みきった。
太平洋戦争中の零戦の話から展開していく物語は引き込まれていって夢中になって読んでしまった。主人公の宮部久蔵という零戦のパイロットの話だが、最後は特攻で戦死するのだが、そこに至るまでの人間像を孫にあたる姉弟の調査がその人間像を明らかにしていく物語だった。最後にはどんでん返しと思われる、驚きの事実が用意されているのだが、百田氏の筆技には脱帽であった。その資料の調査力や構成力には本当に感心をした。
この物語は小説ではあるが、今の世の中に通じる政治情勢や普遍的な愛に関する、本来人間が持つ感情を鋭く観察している。主人公は零戦のパイロットであるが絶対に帰ってくるという哲学を持っている。空戦になっても戦うがすぐに安全な空域に待機する。それゆえに誤解され意気地なしとか卑怯者とか部隊では陰口を叩かれる。しかしそこには愛する家族の下には絶対生きて帰るという、彼の戦争哲学がある。
真珠湾攻撃からラバウル、ガダルカナル、レイテ、マリアナ、そして本土の鹿屋基地から出撃に至るまで歴戦を戦ってきても一度も落とされなかったパイロットが、教官として教えた特攻要員の学生たちが行くのに自分が行かないという矛盾からか、海軍または日本政府に反旗を翻す意味か絶対に家族の下に帰るという信念を捨て片道切符で敵空母に突っ込む、ここで終わりではないのだが、、、、このあたりからは涙を流しながら読み終わるという今まで読んだ中でも最高の本でした。
国会が始まり日本を左右する重要な法案が審議されているが、70年前の戦争前夜のような統制が始まろうとしているのはどんなことしても阻止しなければならない。自民党にこのまま突っ走られたらいずれ言論統制や徴兵制など戦前の繰り返しになるに決まっている。TPP、外交、国内経済しかり何事も上手くいっていない状況なのに企業や役人だけが潤って国民の大多数にはなんの恩恵がもたらされない状況はまさにいつか来た道のようだ。
『永遠の零』のなかで語られる言葉の中に大本営は現場を知らない、参謀総長は現場を知らない、軍令部長も現場を知らない、つまり本土の安全なところに居る上層部は殆どが海軍兵学校出の頭の良い人ばかりで現場を知らない連中ばかりで机上の演習で戦争をやっていたのだった。
今の行政府、立法府、司法府三権分立は建前だけでぜんぜん分立していないのではないか?最高裁判所が先の選挙でも憲法違反という判決が出ているにもかかわらず、何の手も打たず今の政権が本当に正当な政権なのかなんら喚起をしない。居眠りしていても年間1億円以上の報酬があるという。定数削減を早急に行い正常に戻すべきだし、この財政赤字の元になった公共事業も根本から考え直さなければならない。
政治家も経営者もある程度理科系の数字や自然科学を理解した現場主義の人がリーダーシップを取った方が理詰め仕事ができるかもしれない。そのためにも政治家は(特に国会議員)ある程度どんな仕事でも現場を5年以上味わったような要件を満たすべきではなかろうか。ここのところ現場を知らないトップが起こす事件事故が頻発しているから、ぜひ新しい資格や条件を作るべきではないだろうか。
是非、『永遠の零』 百田尚樹著 お勧めする次第です。