今年も残り一月になりました。師走の風が一段と身に沁みるこの頃ですが鎌倉は相変わらず平日でもすごい人出で込み合っていますが、景気はさらに冷え込んでいるそうです。小町通の喧騒の割には潤っていないようです。
ここにきてこのブログに何度も書いてきた鎌倉で一番古いバー『トノヤマ』が閉店することになりました。現在49年目になるのですが、ママが高齢で残念ながら12月13日(金)にお別れ会をやることになり、ここに閉店を決意したそうです。鎌倉文士の多くがここに集い川端康成をはじめ立原正秋など多くの文化人、芸術家、雑誌編集者、写真家など鎌倉らしい人たちの談論の場が今月には無くなります。残念ですが高齢化の進む日本、特に鎌倉などはその顕著なところにあるといえます。残るは『マイクス』が最古参になります。ここもマスタ一人の良いバーです。
以前にも書きましたが、『トノヤマ』は俳優の殿山泰司氏の義妹のママが49年前に女手ひとつで築き上げた店です。最初御成町の奥のほうでおでん屋を殿山泰司の奥さんが始め、その後独立してバー『トノヤマ』として小町の通称三婆通りに開店しました。松竹関係者や編集者、作家などレベルの高い芸術論を戦わせたのもママのご主人戸田重昌氏の関係で多くの人たちが夜毎集っていました。まだ無名だった立原正秋などは飲み代も払えないくらいであったが、ママが良く面倒見たそうです。
企業でも永遠に続くものは無いので、一定期間の役目を終えれば退場するのは仕方ありませんが、人生と同じで終わり方、今はやりの言葉で言えば『終活』というのは本当に難しいものと思っています。ただ、ここのカウンターは50年経った今でもびくともしない頑丈さで風格を保っています。第1回日本アカデミー賞の美術監督賞を取られた戸田さんの設計で宮大工が作ったと云われています。今後新しい人が営業するかもしれませんが文化財的価値のあるこのカウンターは是非残してもらいたいものだと思っています。
今の鎌倉は観光地化して昔のものとは違っているというのは感傷かもしれませんが、どうしてこんな街づくりになってしまったのか慙愧に堪えません。横須賀線の遠距離化による遠方からの集客には成功したものの商店街経済はある意味破綻しているようです。いわゆる鎌倉に住む人の商店ではなく地域外資本による店舗展開で利益はそちらに吸い上げられてしまい、商店街は貸し店舗ばかりになってしまい本当の鎌倉らしさとは?という大きな問題の議論をしなければいけないところに来ているようです。自分の首を絞めていることに気がついていないのは行政の怠慢でもある気がします。
葉山においても人事ではなく同じような高齢化と商店街の衰退は深刻で、首長の若さだけで乗り超えらるべくは無く(鎌倉、逗子、葉山、横須賀全て若い首長だが)この際彼らに『終活』 をどう考えるかを問うてみたい。始めるのは簡単でも終わり方は難しいことをたかがバー一軒が閉店することでも如何に難しいかを知らされた。人間生きた証をどこかに残したいのだが、結構難しい問題が今の世の中にはありすぎる。改めて終わり方の勉強をした次第です。