国の来年度予算編成の過程が表向きにされようとしています。先の政権選択選挙で、財源論が様々に交わされた後だけに、平成21年度予算と比較して、これを上回る90兆円台の予算編成になるらしいことが、報道機関で取り上げられています。
これはこれで良いのではないかと思います。これまでの国家予算の編成過程は、官僚が従前の予算執行をベースに編成し、関係省庁の大臣が「追認」するというものであったせいか、編成過程でこれほどまで話題になることはなかったからです。
この90兆円超の予算編成過程をどのように評価するか、様々な意見が沸き起こっていますが、この中から特別会計にどの程度予算が回されるかはあまり知らされていません。今後この特別会計への支出金(数10兆円)などが精査されると、90兆円越えの予算がかなり絞られてくるのではないかと期待されます。
この新年度予算の中には、前政権のつけ、つまり国債費(借金の償還費用)が20兆円程度含まれる予定ですし、扶助費と言いますが、社会保障費には平成20年度では、約22兆円が含まれています。
とくに、景気悪化の影響から失業者が増加し、なおかつ生活保護所帯の増加(100万所帯を超えた)によるものが重くのしかかっていることを見逃してはならないと思います。つまり、前政権の“国家戦略”なき政権運営がもたらした「負の遺産」を含め、当面これを引き継がざるを得ないことを考慮しなければなりません。
国家戦略と言えば、国土交通相の前原誠司さんに高い評価が出始めています。ダム問題や航空行政、道路行政などについて、次々と改革を実施しようとしている姿勢に注目が集まっています。その訳は、これも従来の政権では決して明るみに出る事がなかった、例えばダム建設についての問題点が、ここまで国民にその真相が明らかにされようとしているからです。
それもそのはず、八ツ場ダムは、57年間「持続的」に建設工事が実施されてきて、未だに本体工事にかかっていないのは何故なのかわかりません。長年工事が実施されてきて本体工事にかかっていないダム建設現場が、日本には48個もあるそうです。
その上、この狭い日本に98ヵ所もの飛行場が建設されています。現在、99空港目が関東圏内に建設されており、近く開港するそうです。これも、前原国土交通大臣が、羽田空港をハブ空港化することに言及したことで、マスコミが空港行政について大きく取り上げるに至り、知る人ぞ知るところになった訳です。
一つひとつの例示を挙げれば到底紙面が足りませんが、こういうところに旧自民党(政・官・業癒着)長期政権の秘密が隠されているのではないかと考えられますし、文字通り「国家戦略なき陳情行政」の限界があるのではないかと思います。その意味では、政権交代の意義もここにあると言えると思います。政府一体の民主党がどのような仕組みを作るかにかかっているのではないでしょうか。