20センチの巨人(4)

2016-07-14 21:07:12 | 童話
『ありがとう。これから返すね、ほれっ。』

だけれど、巨人さんは黄色いぼうしのヒモをランドセルに結ばないで、ランドセルの上に置いて投げたので、ランドセルは届いたのですが、軽いぼうしは僕の所へ飛んで来ませんでした。
そして、巨人さんがぼうしを何度投げても、僕の所には飛んで来ませんでした。
『困ったね。』
『うん、困ったね。』
『僕がお母さんに頼んでみるよ。』
『ああ、そうしておくれ。それまで黄色いぼうしは大切に持っているからね。』
『うん。』

『お母さん、僕の黄色いぼうしが絵本の中に入ってしまって取れないんだ。お母さん取ってみて。』
『あらっ、本当に絵本の中に入って、巨人が持っているわね。』
『巨人が投げても外まで届かないんだ。』
『それでは、物干しさおを巨人に渡しましょ。
そして、物干しさおの先に黄色いぼうしを載せて高く上げてもらうのよ。』
『物干しさおを僕が巨人さんに渡してあげるよ。』
と言って、お母さんに長いさおの後を持ってもらって、トンと本の上に置きました。
すると長いさおは本の中に入って行き、巨人さんに届きました。
『ありがとう、届いたよ。これから黄色いぼうしをさおの上に載せて持ち上げるよ。』

そして、巨人さんがさおを持ち上げましたが、高い所は風が吹いていて、黄色いぼうしが飛ばされました。
『だめだね、うまくいかないね。』
『そうだね、うまくいかないね。よしっ、わしが持って上がって行くよ。』

そう言って、巨人さんが黄色いぼうしをかぶって、両手で物干しさおを掴んで僕の所まで持って来てくれました。
『ほいっ、黄色いぼうしだよ。わしはもう帰るからね。』
『巨人さん、ありがとう。』
『ああ、良かったね。』